第三者
ノヴァとやり取りを再開して数週間が経った。彼は公園のポストに行った。ポストの中を確認したがノヴァからの返事はなかった。
「流石に今日は返事はないか。」
ボールが飛んできた。彼はそのボールを子供達に投げた。
トーマスは帰宅した。
「嬉しい報告があるんだ。」
ノアが笑顔でトーマスのところにやって来た。リアも後からやって来た。
「どうしたんだ?」
「私、妊娠したのよ。」
「おめでとう!」
「リア、嬉しいよ。」
「私もよ。」
ノアとリアは抱きしめあった。
「ここだと子供育てにくいから別の場所に引っ越しをしようと思うんだ。」
「そうなると新しいルームメイトを探さないといけないな。」
「これから楽しみで仕方ないな。」
「私の子供なら男の子でも女の子でもどっちでも良いわ。無事に産まれてくれたらそれで嬉しいから。」
トーマスは新しいルームメイトを探そうとした。
「中々つてがないな。」
「新しいルームメイト探してるのか。それなら良い奴ら知ってるから教えようか?」
「本当か?頼む。」
「少しそいつと連絡取ってみるよ。」
次の日もポストの所に行った。
「まだ返信がないか。」
その次の日もポストの所に行った。
「まだないか。」
それから1週間が経っても返信がなかった。鳥の巣箱を開けてみると辞書にメッセージがはさまっていた。それを家に持ち帰ってメッセージを呼んだ。
「トーマス、メッセージに気がついてくれた?どうやら何者かに私達のやり取り邪魔されていたみたいなの。もしかしてこの前トーマスが言ってた人かな。それとも別の人かな。どちらにしてもこっちでやり取りしたほうが良いよね。私が追加で送ったメッセージもやっぱりなくなってた。」
メッセージを読んでローガンのことを思い出す。ノヴァには話せない秘密だった。さらにメッセージを読む。
「最近は天気が良いね。天気が良いからよく散歩をすることが多いの。散歩をすると色んな虫や鳥を見るわ。花も生き生きと咲いてて毎日心地良い日々を過ごしてるよ。いつか会う時に一緒に散歩とかをしたい。どこか遠くへ旅行するのも好き。トーマスと一緒ならどこへでも行けると思うの。私の行きたい場所もトーマスの行きたい場所もどっちも行ってみたい。もし返事を見たら、その返事も鳥の巣箱に入れて欲しい。」
彼女のメッセージを読み終わった。
「あの15枚のうちの一つはローガンじゃない誰かが持ってるのか?それともローガンがどっかに隠したのか?」
まだノヴァに宛てた15枚のメッセージのうちの一枚が見つかっていない。ローガンの部屋を探したが何もなかった。
「どこにも無い。」
あきらめて彼はノヴァへの返事を書いた。
「ノヴァ、返事を読んだよ。やっぱりまた誰かに邪魔されたのかもしれない。でもこの前邪魔した人とは違う人かもしれないんだ。そいつにまた問い詰めたが特に何も無かったし、辞書も盗まれていなかった。だから犯人は違う人間。俺達の仲を何らかの理由で引き裂きたいやつに違いないと思う。だから僕に作戦があるんだ。俺がノヴァと連絡を邪魔されて連絡を取れなくなったフリをあのポストでする。犯人と文章でやり取りする。安心して。犯人に惚れることは絶対にないから。僕はノヴァだけが好きだから。」
さらにメッセージを書いた。
「最近は僕のルームメイトの彼女が妊娠したんだ。とてもめでたい話を聞いた。彼は新たな道に進む。彼女と別の場所に引っ越すみたいなんだ。僕達もいつか彼らみたいに良い未来を進みたいよ。そんなことを考えるとますますノヴァと会えることが楽しになって来るよ。」
彼はノヴァへのメッセージを書き終わった。さらにノヴァとのメッセージを邪魔する相手にもメッセージを書いた。
「ノヴァとのメッセージを邪魔しないでください。邪魔させても彼女への気持ちは変わりません。このメッセージを最後まで読んだなら僕とノヴァのメッセージを邪魔しないと文章で誓ってください。もしそれが嘘の誓いなら愛する彼女と一緒にあなたを特定します。」
彼はメッセージを書き終わった。
「お前何かイライラしてないか?」
ノアが聞いた。
「そう見える?」
「毎日見てれば分かる。また彼女と上手くいってないのか?」
「また俺達のメッセージを邪魔する奴がいたんだ。ローガンは死んだから違うやつに違いない。」
「ローガンのやつの幽霊かもしれないな。」
「ノア、そう言う冗談は面白くないぞ。」
「どうするつもりなんだ?」
「鳥の巣箱でやり取りするんだ。それならバレることはない。それとその犯人とも連絡取るつもりだ。」
「お前少し強くなったな。前は少しビビりなところあったけど。」
「多分ノヴァが俺を強くしてくれたのかもしれないな。そう言えばどこに引っ越すつもりなんだ?」
「まだ話途中だ。」
「そうか。順調にいくと良いな。」
ノアはリアも気遣いながら優しく抱きしめた。
数日すると普段やり取りしていたポストにはメッセージが入っていた。彼はそれをカバンに入れて家に持ち帰った。そのメッセージを声に出しながら読んだ。
「私はヘーゼルよ。もちろん名前の通り女よ。トーマス、あなたとそんな誓いは出来ないわ。だってあなたが好きだから。それなのにあの女が邪魔なのよ。あなたはノヴァと言う女を愛せない。会ったこともないのに一生愛し続ける自信とかあるのかしら?少なくともノヴァと言う女より私のほうがあなたのことをよく知っている。あなたのことは毎日よく見ているから。あなたがノヴァと別れる日を私は待ってる。」
トーマスはいつの間にかヘーゼルと言う女性にストーカーをされていた。しかし彼には何も心当たりがなかったので胸騒ぎがした。
「ノア、今暇か?」
「うん。何だ?」
「俺、今ストーカーされているみたいなんだ。だけど全然心当たりがないんだ。何か知っているか?」
「お前をストーカーするとか物好きだな。」
「ちゃんと聞いてくれ。」
「今のは冗談だ。ノヴァと言う女性とやり取りしてお前が魅力的に見えたようだな。だけど俺も何も知らないな。もしかして仕事で来る婆さんがストーカーなんじゃないのか?」
「そんなこと考えたらますます鳥肌が立つだろ。」
「もしくは最近だとローガンの母親に惚れられてるとかあるんじゃないのか?」
「流石にアイツの母親がそんな暇なことしないだろ。」
ノアに聞いても何も答えが見当たらなかった。分かることは名前がヘーゼルと言う女性と言うことくらいだった。さらにメッセージを書いた。
「あなたがどこで何をしてる人か知りませんがあなたに言われてノヴァと別れるつもりなんてありません。彼女はとても大切でかけがえのない存在だから。どうか邪魔しないでくれ。あんたが邪魔するせいで彼女とのメッセージが出来ない。」
彼はメッセージを書き終わった。
あれから数週間鳥の巣箱でやり取りをしてるのでヘーゼルと言う女に邪魔されることはなかった。彼は自分の部屋でメッセージを書いた。
「ノヴァ、今日もやり取りが出来て嬉しいよ。僕のルームメイトは来月彼女と一緒に引っ越すみたいだ。その代わり新しく3人ルームメイトが出来る。来月は生活にすごい変化が出る。それにしてもあと1週間で君と会えるなんて楽しみで仕方ないよ。だからこのやり取りを大切にしたいと思う。」
彼はメッセージを書き終わった。辞書をいつものように鳥の巣箱に入れた。鍵を持ってない限りヘーゼルと言う女に開けられることはほぼない。
「ここに住んでるトーマスだ。仕事は鍵師をしてるんだ。君達が新しいルームメイトだね。」
「俺はノアの知り合いのジョンだ。」
「私はジョンの彼女のヘザーよ。」
「私はヘザーの友達のカロリーナよ。」
「よろしく。まずは部屋を案内するよ。」
彼は部屋を案内した。
「ここがリビングだ。」
さらに書斎の方を案内した。
「少しここのハウスルールだがここの書斎で何しても良いが貴重な本が多いから本を大切に扱ってくれ。」
「分かったよ。」
「次に2階を案内する。こっちの部屋がジョンとヘザーの部屋だ。」
「良い部屋だな。」
元々ノアとリアが使っていた部屋だった。
「ここがカロリーナの部屋だ。」
「この部屋何もない部屋ね。」
「好きなように使って良い。」
「私の好きに変えるわ。」
カロリーナが使う部屋は元々ローガンが使っていた部屋だ。ローガンが元々持っているものは全部ローガンの死体が埋まっている地下の部屋に入れた。
「少し古い家だけどそんな悪い家じゃないぞ。慣れればこの家も楽しいからな。そうだ。明日君達のために朝ごはんを作ってやる。」
カロリーナがトーマスに近づく。
「そうだ。あんた彼女とかいるの?私は今彼氏とかいないのよね。独身なの。トーマス、あんた何だか優しそうね。」
「残念ながら俺には彼女がいるんだ。とても大切な人なんだ。」
「どんな人なの?」
「まだ会ったことない人だけどとても優しくて頭が良くて、色んなことに興味を持つ素晴らしい女性なんだ。彼女の名前はノヴァと言うんだ。来週やっと会うことになるからすごい楽しみなんだ。」
「会ったことないのにそんなこと分かるわけ?トーマス、あんたちょっと変わってるわね。」
カロリーナが話を聞いて笑った。
「何となく僕には分かるんだ。彼女以外良い女性は他にはいないと思うんだ。」
「そうなのね。」
カロリーナが数秒間トーマスを見つめた。そして彼女はローガンが使っていた部屋で荷解きをした。
電話が鳴りだした。ローガンの母親ではないか彼はドキドキした。そして彼は電話に出る。
「もしもし、トーマス。」
「ノアか。新しい住居はどうだ?」
「前住んでた所よりずっと良い場所だよ。前の所は古いからな。」
「それは良かったな。」
「新しいルームメイトはどうだ?」
「結構面白そうな人達だな。」
「ルームメイトに女が2人もいるから目移りするなよ。」
「ノア、そんな馬鹿なこと言うな。俺はそんな馬鹿げたことなんてしないぞ。」
「来週辞書の彼女と会うんだよな。頑張れよ。」
「ありがとう。」
彼は電話を切った。彼は外に出て自転車に乗った。いつものように公園を散歩した。そして鳥の巣箱を確認した。中には辞書が入っていた。そしてそれを家に持ち帰ってメッセージを確認した。
「ずっとメッセージ出来る時を待ってた。これで私のこと邪魔出来ないよね。」
ヘーゼルからのメッセージで、鳥の巣箱の場所が特定されてしまった。




