対処
階段の一番下にはトーマスが突き飛ばしたローガンが倒れてた。さらにナイフがさらに彼の背中に突き刺さっていた。それを見てリアが叫ぶ。
「トーマス、これはどういうことなの。」
リアは泣きながら聞く。
「頼む!警察とかは呼ばないでくれ。」
「人が一人倒れているんだぞ。」
「これには理由があるんだよ。俺は何もやってないから。正当防衛なんだ。お願いだから警察なんて呼ばないでくれ。」
「どうしてそんなことをしたんだ。」
ノアがトーマスに聞く。すると彼は説明をする。
「ローガンの部屋に入ったのがはじまりだった。そしたらあいつが俺とノヴァのやり取りしてたメッセージを持ってんだんだ。それを問い詰めたら俺のことが好きだから邪魔するしかなかったとか言ってきたんだ。」
「それで突き飛ばしたんだな。」
「そんなことで突き飛ばすわけないだろ。」
「それじゃあ何で?簡潔に話してくれる?」
「俺はちゃんと説明してる。良いから聞いてくれ。」
死体を目の前に説明を続ける。
「そしたらローガンがナイフを出してきて俺を脅そうとしたんだ。あいつのものになればナイフで刺さないとか理由のわからないことを言い出したから逃げたんだよ。だけど力強く抑えつえられて抵抗も出来ずに彼の提案を受け入れるふりをした。そのすきを狙ってアイツを階段から突き落とすつもりだった。だけどたまたまナイフも一緒に落ちてあいつの背中に刺さったんだ。過失致死で捕まりたくない。正当防衛だったんだ。」
「だけどこの状況どうするつもり?」
「流石に警察とか呼ばないと不味いだろ。」
「それは絶対に駄目。俺が捕まっても良いのか。」
「もちろん良いだなんて思ってもいない。」
「そうだろ。警察に通報するのはなし。元々はローガンが悪いからさ。」
「それならどうするわけ?」
リアが焦った表情で聞く。
「死体をどこかに隠すしかない。」
「それってかなり不味くない?隠したら私達まで捕まるわ。そんなのに関わりたくないわ。」
「トーマスの言うことが本当ならその選択肢も悪くないんじゃないか?」
「ノア、あんたそれ本気で言ってるの?」
リアがノアに聞く。
「このままコイツが捕まって良いわけじゃない。それなら隠すしかないだろ。」
ノアにはトーマスに対する情があったので警察に捕まる所を想像なんてしたくなかった。
「それにローガンがまいた種だからトーマスだけの問題じゃない。正当防衛と訴えた所で決定的な証拠もない。それならトーマスの言うように死体をどこかに隠すしかない。」
「嘘よ。そんなの関わりたくないよ。」
「リア、お前はこのことを黙ってれば良い。死体のことは俺ら二人で考えるから。安心してくれ。分かった?」
「うん。分かった。」
彼女は泣きながら部屋に入った。
「まず血を止めて拭き取ろう。血痕は家宅捜索の時にすぐ調べられる。俺はローガンのために人生を台無しにするくらいならノヴァと人生を歩みたい。結婚だってしたいくらい好きだ。それなら捕まるわけにはいかない。」
トーマスが言った。
「一番バレない所はどこにあるんだ?」
「それが思いつかない。」
「ローガンのいた部屋とかは?」
「馬鹿、そこは家宅捜索された時にすぐにバレる所だろ。他の所のほうが良い。」
「死体をどこかに運ぶか。」
「まずは家の中で探してみよう。」
彼らは家に隠せそうな所を探した。
「ここはどうだ?」
「ここもバレそうだ。」
「この部屋は?」
「バレる。部屋に隠すのはかなり不味い。」
「それならどうするんだ?他に部屋なんてないだろ。何を提案しても駄目駄目ってお前は何か考えでもあるのか!」
「あまり大きな声で叫ぶな。近所にこのことがバレたらどうするんだ。どうせなら庭を掘ってローガンの死体を埋められたら一番良いんだけどな。」
「その作業してるの見られたらかなり不味いぞ。見たやつまで殺すわけにはいかないしな。」
「そうなったらただの殺人になる。これ以上巻き沿いになる人を作りたくない。ローガンはただの正当防衛になるけど。」
「樹海かどうかに行くか、それとも湖に沈めたりでもするか?海とかに流したりもできるけどな。」
「それも一応考えに入れても良いな。出来るだけ家の付近でローガンの死体を処理したいと思う。」
「そうか。」
2人はしばらく死体の隠し場所を考えた。
「トーマス、もしかしたらこの家地下室があるじゃないか?」
「そんなこと一度も聞いたことないけどな。」
「もしかしたらあるんじゃないか?」
「そんな話あるわけない。」
書斎の本棚によりかかると少し本棚が動き出した。
「ん?これってまさか隠し扉ってやつじゃないのか?」
「この本って俺達入る前にたくさんあったよな。」
「そうだな。押してみるか。」
トーマスは本棚を押そうとした。
「中々動かないな。」
本棚はゆっくりと動こうとした。
「ノア、お前も一緒に押してくれ。」
「分かった。」
ノアも一緒になって本棚を押す。するとさっきよりスムーズに本棚が動く。するとその先に暗い部屋が見えた。
「こんな所に部屋があったんだな。」
「映画とか小説とかの話だと思ったけどな。」
トーマスは部屋の電気をつけた。
「まずローガンの死体をこっちに運ぶぞ。」
「そうだな。このままには出来ないな。」
2人はローガンの死体を運んだ。
「そろそろだ。」
「ついたぞ。」
隠し扉にある部屋にローガンの死体を置いた。
「ノア、ドアを閉めてくれ。リアがこのことを知ったら面倒になる。」
「リアを信用してないのか?」
「お前の彼女は話してしまいそうだからな。」
「そんなことを言うなよ。」
そう言いながらノアは隠し扉を閉める。本棚の反対側も本棚になっている。
「ここに地下につなぐ階段もあるな。」
「降りるぞ。」
「また?」
「面倒臭いけど、死体の対処にはある程度面倒が必要なんだよ。」
彼らは死体を運びながら地下につなぐ階段を降りた。
「あともう少しだ。」
「ローガンのやつ意外と重いな。」
「おろして良い。」
2人は地下室についた。
「暗いな。」
「ここにスイッチがあるぞ。」
「つかないな。」
「懐中電灯を持ってくる。」
ノアは懐中電灯を取りに行った。
「持って来たぞ。」
ライトをつける。
「意外と広い部屋だな。」
「あそこに何か見えるぞ。ライトをそっちに当ててくれ。」
「そっちってどっちだよ。俺の指している方向だよ。」
ノアはトーマスの言う方向にライトを当てると、プランターが見えた。
「何でこんな所にプランターがあるんだ?」
「よし、ここに死体を埋めるぞ。」
「まるで俺達が死体を持ってくるのを予想してたみたいだな。」
「いいから埋めるぞ。スコップはあるか?」
「探してみる。ここにあったぞ。」
大きなスコップをトーマスに渡した。
「まず掘るぞ。」
彼らは土をどんどん掘った。
「こう言うのってどれくらい掘れば良いんだ?」
「人を殺したことないからそんなの知るんけ無いだろ。」
「まだ掘るのか?」
「死体は腐敗するからちゃんと掘ったほうが良い。俺が捕まっても良いのか?」
「トーマス、分かったよ。」
二人は死体を埋める罪悪感というものがどんどん消えていった。
「まだまだか?」
「もう少し掘らないと不味いと思う。」
「少し休まないか。」
「あと少しだ。」
彼らはプランターの土を掘るのをやめなかった。
「続けるぞ。」
しばらくすると手が止まる。
「ノア、どうした。もう無理なのか?」
「変なものにぶつかったんだ。」
掘り上げてみた。
「うわ、何だこれは。」
「嘘だろ。」
何と死体がすでに埋まっていた。
「俺らが住んでる所で未解決の事件でも起きたのか?」
「そんな話聞いたことないけどな。」
「まさか俺らより先に先客がいただなんて。」
「もしかしてこれはローガンが埋めた死体とかなんじゃないか?」
「あいつが2人もルームメイトがいてそんなリスクのあることをするか?」
「俺が最後に見たあいつはまさにサイコパスだった。そう言うことをやりかねない。だけどあいつでもなさそうだな。」
「ここの前の住人ってどんな奴らだったっけ?」
「老夫婦が住んでたみたいだな。」
「彼らが誰かを殺したんだな。」
「話したら俺達まで警察に捕まるから身のために今日見たことは全て話すなよ。ノア。」
「分かってるよ。おれも流石にそこまで馬鹿ではないぞ。」
「それじゃあ隣に死体を埋めるぞ。」
「分かった。」
既にある死体の隣にローガンの死体を置いた。
「ローガン。すまないがお前にはここにいてもらうよ。」
「ノア、これは正当防衛なんだ。あいつに殺されたら俺も同じようになってたかもしれないから。」
そしてどんどん土をかぶせた。どんどん死体は見えなくなって行く。
「これで完璧だ。」
「上に上がるぞ。」
彼らは上に上がり隠し扉を開けて戻った。
「あとはあいつの血痕をくまなく拭き取るぞ。証拠は残してはいけないからな。」
彼らはローガンの血痕を拭き取った。
「これで良いか。」
「もっと拭き取ってくれ。」
彼らは血痕を拭き取って自分達の服を洗った。
「何度も言うが俺はローガンを殺すつもりなんて一切なかった。だけど証拠がなければ何も出来ないからこうするしかなかったんだ。これで良かった。」
「トーマス、お前の気持ちはよく分かったよ。」
ノアはリアの所に行った。
「ハニー、大丈夫か?」
「私、事件に巻き込まれそうで何だか怖いの。」
彼女は弱音を吐いてノアに抱きついた。
「リア、大丈夫だ。ローガンのことはトーマスと上手くやったから。」
ノアは彼女を優しく撫でてキスをした。
「そんなに不安にならないで。」
その夜はノアはリアのそばにずっといた。
次の日の朝ノアはキッチンの方に向かった。
「トーマス、お前今日は起きるの早いな。」
「何だか皆のぶんの料理も作りたくなったから早く起きたんだ。」
トーマスは料理を作り終わり並べる。
「死体を処理したのに切り替えが早いな。」
「その話はもうしないでくれ。」
「分かったよ。お前の作る朝ご飯は美味しいな。」
「今日は格段と張り切ったんだ。」
「そうか。」
「おはよう。」
「リア、おはよう。料理食べてくれ。」
「分かった。」
3人は一緒に朝ご飯を食べた。
「トーマス、相変わらずあんたの作るご飯は美味しいね。」
「そうだろ。いつかノヴァにも食べさせてやりたいと思うんだ。」
「彼女がトーマスのことを忘れてなければの話よ。」
ローガンの事件の次の日から彼は何事もなかったかのように日常を送る。
トーマスはローガンの部屋に行った。




