第八話 ウル ニューゲーム②
【ウル】
「私の“神技”は、触れたものを爆弾に変えることができる。
“火花爛漫”
ただし、爆発するタイミングは分からないし、操作できない。
数字の見えない時限爆弾かな。
だが私は、持ち前の頭脳により、ある法則を見つけた。
それにより、一秒の狂いもなく爆発する時間を予測できるようになったのだ!」
男は、民衆の前で演説する大統領さながら、高々と両手をあげて語りだす。
しかし、おれはこいつの言っていることがさっぱりわからない。
「おい!“神技”ってなんだ!」
幼馴染を殺された怒り。
今はそれを抑えろ。
この得体のしれない人物のことを掴むまでは・・・。
「おや。どうやら自分の能力にまだ気づいていないようだね・
それに例の動画も見ていない・・・。
しまったな。てっきり、キミの“神技”によって、私の能力が見破られたものとばかり・・・」
「だから、その”神技“ってなんだ?それに動画って?」
男は深く息を吸い込む、また話し出す。
「“神技”は、神によって、選ばれし人間に与えられた特別な力。
神はその力を使って、戦って欲しいのだそうだ。自分が楽しむためにね。
その旨が、今日の正午ちょうどに投稿された動画で、説明されていたのさ」
・・・神?
話を聞けば聞くほど、おれの頭は混乱してくる。
しかし、こいつの顔を見て、おれはあることを思い出す。
「おまえ。この高校の教師じゃないか。確か、・・・。」
おれの学年の担当ではなかったが、今年、新任したばかりで見覚えがあった。
「えぇ。ご紹介が遅れました。この高校で数学を教えていました、タレス、と申します」
タレスと名乗る男は、わざとらしく、深々とお辞儀をする。
「キミの名は?」
「・・・ウル。なぜここの教師が、校舎を爆破なんてするんだ?」
「大人には、いろいろ事情があるのだよ。
キミが想像もつかない苦しみを味わうこともある」
「どんな理由があっても、大勢の命を奪っていいことには、ならないだろう」
すると男は突然、歯をむき出しにして叫ぶ。
「うるさいぃぃぃ!!私に説教をたれるなぁぁぁ!!」
そして、足元にあった小石を数個手に取り、おれの方へ目掛けて投げてきた。
「ドクンンッッ!!!」
小石は、おれにあたる前に光を放ち、爆発する。
おれは爆破の勢いに、数メートル後方へ吹っ飛ばされた。
両腕に痛みを感じながら、地面に転がる。
「そこでおねんねしてな、ウルくん」
男は、おれを通り過ぎ、ゆっくりと去っていった。
まずいぞ。
何が何だか分からないが、やつの力は本物だ。
小石を爆弾に変えて投げつけてきやがった。
やつは、手のひらに触れたものを爆弾に変えることができる。
だとすると、この町のものすべてが爆弾になりうるってことじゃないか・・・。
危険すぎる。
野放しにはできない。
おれは、痛みに耐えつつ立ち上がり、男の後を追う。
タレスを追いながら、おれは考えを巡らせる。
小石が向かってくるとき、また心臓が強く鳴り響いた。
今回は、今までで一番強かった気がする。
そして、おれはふっとばされ、腕を負傷した。
あいつのいうとおり、おれにも“神技”とやらが備わっているとしたら・・・。
おそらくおれの能力は、身に起こる危険を心臓の鼓動により感じ取ることができるものだ。
鼓動の大きさは、身に迫る危険の大きさを示しているんだ。
だから、校舎にいたとき徐々に心臓の鼓動がでかくなっていたんだ。
爆発する時間が迫っていて、おれもみんなと一緒に死んでしまうから。
その時、幼馴染の顔が浮かぶ。
「くそ!絶対許さねぇ、タレス!」
「ドクンンッッ!!!」
また心臓がなる。
これは、さっき小石が飛んできたときの大きさと一緒だ。
つまり、近くで何かが爆発する!?
おれは、とっさに横方向に飛び避け、そのまま地面にダイブする。
「ドーン!」
予想通り、近くで爆発が起こる。
あいつ・・・おれが追ってくることも織り込み済みだってことか。
町中の物を爆弾に変えて、おれを仕留めようとしているんだ。
だが、大丈夫だ。
おれには、この能力がある。
危険を感じた瞬間、周りにあるものから距離をとればいい。
それに、爆発した後を辿っていけば、あいつにたどり着くことができる。
“神技”か。
あいつも名前をつけてたな。
おれもなにか・・・。
危険を感じとる・・・。察知する・・・。
よし、決めた!!
おれの“神技”は“危険察知”だ。
ネーヤ、まってろ!
おまえの仇は討ってやる。
この能力で、タレスを倒す!!