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地球大戦  作者: ET
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第五話 ヲタキング

【ヲタル】

おれは、アニメが好きだった。

友達のいないおれにとって、アニメのキャラクターだけが、心の許せる友達だった。

親が金持ちだったため、家には、たくさんのフィギュアがあった。

高校の昼休み、教室の机にグッズを並べ、一緒にご飯を食べていた。

だって友達だから。

昼食をともにするのは当然だろう?

そんなおれは、クラスの奴らに気味悪がられていた。

そう、彼女に出会うまでは。


「この子、なんて名前なの?」

顔をあげると、おれの心臓は激しく鳴り響いた。

小さい顔に、ぱっちりとした目、筋の通った小鼻に、ぷっくりとした分厚い唇。

けちのつけようのない整った顔の女子が目の前にいた。

驚くことに、メイクをした形跡がない。

鼻につく化粧品のにおいをまとわせている、クラスの女子よりも

彼女は数倍、綺麗だった。

そんな彼女がおれに話しかけている?

驚きと疑いにより、声が出ない。


「ねぇ、聞いてる?もしもーし?」

おれの思いは、つゆ知らず。

彼女は、快活な声で話かけてくる。

おれはなんとか声を絞り出す。

「こ、この子は、『ヒカリム』。世界を救う、お、女勇者なんだ・・・」

名前を聞かれただけなのに、余計な補足をしてしまった。

気まずい思いを感じながら、おそるおそる彼女の方を見る。


「・・・そっか!『勇者ヒカリム』ちゃんか!すごくかわいいね。

じゃあこっちの子は?すごく強そうで色気があるね」

おれの思いとは裏腹に、彼女は明るいトーンを落とさない。

純粋な気持ちで、おれに興味を持ってくれている。

好意が伝わり、おれの口も滑らかになっていく。

「こ、こっちは、『魔王ゼブラス』魔界を統べる男。

『ヒカリム』の村を焼き尽くしたんだ。だけどね、彼は・・・」

おれは饒舌に話しをしていた。

彼女は、時々質問を挟みながら、楽しそうに聞いている。

気が付くと、昼休みの時間が過ぎていた。


「すごく楽しかった!どの子もみんな、魅力的だね。

・・・あのさ。もしよかったら、ヲタル君の家に行ってもいい?

もっと色々な子たちを見たいな。それにヲタル君の話も、もっと聞きたいし」

耳を疑った。

こんな美少女が、おれの家に遊びに行きたい?

なにかの間違いだ。

そんな思いもなくは、なかった。

しかし、喜びの方が勝っていた。

「い、いいよ。・・・じゃあ今日、さっそく」

「うん!ありがとー!そうだ、名前教えてなかったね。わたし、ユカ。隣のクラスだよ」

そうして、放課後に待ち合わせをして彼女は、教室を出た。

目の前には、硬くなった弁当があった。


その日からユカは、毎日おれの家にきた。

おれの友達を紹介したり、一緒にアニメを見たり、ゲームをしたり。

この時は、おれの人生のなかで最高のひとときだった。

そして、一緒に過ごすほど彼女の魅力に気づいていった。

天真爛漫な笑顔。意外とおっちょこちょいなところ。

おれは彼女のことがどんどん好きになっていった。


彼女と初めて会ってから、1週間がたった日。

おれは、ある決意をする。

彼女に告白しよう、と。


いつも通り、彼女を部屋に招く。

「今日は、なにするー?」

変わらぬ笑顔を見せながら、彼女は振り返る。

その瞬間、おれは彼女を強く抱きしめる。

そして、ベッドに押し倒し、キスをする

初めての女子とのキス。

なんだこの高揚感。

「んんっ、んんん!」

彼女が何か話している。

おれは、自分の口を彼女の口から話す。

すると彼女は、思い切りおれの頬をひっぱたいたのだ。

おれは思わず後方に倒れる。

「なにすんのよ!変態!!」

彼女の豹変っぷりにおれは、戸惑いを隠せなかった。

「な、な、な、なにって。おれ、ユカのことすきだから。告白しようと思って。

ユカもおれのこと好きだろうし、キスしたんだよ。

「意味わかんない!!なんで告白する前にキスなんかすんのよ!」

「だ、だって、「百言(ひゃくげん)一手(いって)()かず」とか「嫌余六助(いやよろくすけ)好機(こうき)なり」でも告白する前にしてたし」

「それはアニメの話でしょ!現実と混同しないで、気持ち悪い!臭いし、べとべとだし、マジ最悪!!」

そういって彼女は、フィギュアを投げつけて、おれの部屋から出ていった。

おれは、何が起きたのか分からず、倒れた友達をずっと見ていた。


その日から、地獄が始まった。

彼女が学校中に、この件を言いふらしたのだ。

机には落書きをされ、トイレに行けば彼女が好きだった男達に暴行を受ける。

戻った時には、おれの友達はバラバラにされていた。

そう、学校中がおれの敵になっていた。

しばらくして、おれは高校を辞めた。




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