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地球大戦  作者: ET
31/99

第三十話 死体泥棒①

【ウル】

目が覚めると見慣れた天井が見えた。

窓からはオレンジ色の光が差し込む。

見慣れているけどなんかおかしいと思い、そうか、ここは自宅の部屋じゃなくてコアコ・ルミクが泊めてくれていた部屋だと気づく。

全身が気怠(けだる)くて、起き上がる気になれない。

寝たまま横を見ると、妹のトラメがおれの体を(まくら)にして寝ていた。

起き上がれないのは、こいつのせいでもあったのか・・・・・。



なんでこんな状態になっているのか・・・・・。

そうだ、病院の屋上にいた白い男。

あいつにたどり着くまでに雷を死ぬほど避けて、あいつと戦って・・・・・。

あいつと一緒に屋上から落ちて・・・・、あいつの雷に打たれて・・・・・・・・。

雷・・・・・・・トラメ!?

おれはトラメも雷に打たれて重傷だったことを思い出す。

さっき見たのは(まぼろし)か!?と思い、また横にいるトラメを見て、今度は彼女の体に触れる。

良かった幽霊じゃない・・・・・。

正真正銘のトラメだ。



「ん、んんっ」

おれが、動いたことでトラメの目が覚めた。

「お、お兄ちゃん!よかった~。心配したよ~」

トラメは、おれの体に抱きついてくる。

「三日間も眠りっぱなしだったんだよ!」

「・・・・そんなに寝てたのか」

どうりで体が気怠いわけだ。

「それより、お前は大丈夫なのか?雷に打たれたろ?」

「トラメは平気だよ!一日寝てたらバッチリ回復した!」

まじか・・・・・・。

そういえば、コアコ・ルミクがトラメには耐性があるとか言ってたな・・・・。

にしても元気だな、こいつ・・・・。



しばらくして、コアコ・ルミクが部屋に入ってくる。

後ろにもうひとりいる・・・・・・。

「ネーヤ!!」

「ウル!!!」

おれの幼馴染、ネーヤが声を出しながら走ってくる。

「よかった!ほんとに心配したんだから!!」

「それはこっちのセリフだって・・・」

今まで一度もしたことはなかったのだが、おれたち力強く抱き合い、お互いの無事を再確認した。



ムサネは、道場で鍛錬(たんれん)をしているそうだ。

三日間眠りっぱなしだったやつが目覚めたんだ。

少しくらい顔を見に来いよな、冷たいやつめ・・・・・。

ようやく体が活動モードになったのか、気怠さは(やわ)らいできた。

おれは、布団から上体を起こす。

「それよりネーヤ、あの学校の爆発をどうやって知ったんだ。外に出てたって聞いたけど・・・・」

おれは、疑問に思っていたことを()く。

「爆発が起こるなんてこと知らなかったわよ。ただ、ウルが授業中に居眠りしてたと思ったら、いきなり血相を変えて教室を飛び出すんだもん。気になって、後をついていったのよ・・・・」

そうだったのか・・・・・。

とにかく無事で何よりだ。



そのあと、おれが重傷を負った日のことを聞いた。

屋上から落ちたところをコアコ・ルミクに助けられたようだ。

「あんたも病院に向かっていたのか・・・・。全然気づかなかった」

「あぁ、お前にすべての雷が集中していたからな。楽な道のりだった」

「あんた・・・・。最初から、おれをおとりにするつもりだったのか・・・・・!?」

「まぁな、十中八九、病院にたどり着く前に死ぬと踏んでいたからな・・」

こいつ、弟子をおとりに使うとは・・・。

「それで・・・・、あの白い男はどうなったんだ?」

おれは訊く。

「警察に引き渡した」

「大丈夫かよ・・・」

「ある意味大丈夫ではないな・・・・」

意味深なことをいうコアコ・ルミクだった。



「これからどうするの?」

ネーヤが言う。

彼女は、おれが寝ている間に“地球大戦(ちきゅうたいせん)”のことを聞いたらしい。

「・・・・分かんねえけど、とりあえず強くなるしかないよな。あとは仲間集めとか?」

おれは、腕を組みながら頭をひねる。

現状は、まだ周りの出方を伺うしかない気がする。

できることといったら、その二つじゃないか?

「コアコ・ルミク。しばらくここを拠点にしてもいいか・・・・・・?」

おれたちの中で、この人が段違いに強い。

できるだけ近くにいた方がいいだろう。

「・・・・・・・・・・・・・三食、飯を作るならな」

彼女は、しぶしぶといった感じで承諾した。

そして、こんなことも言った。

「・・・・仲間が欲しいなら二人心当たりがある」



「なんだよそれ!もっと早く言ってくれよ」

おれは、思わず大きい声をだす。

「身内を預けるんだ・・・・。弱い奴の仲間にするわけにはいかないだろう」

・・・ということは、今はある程度実力を認めてくれているのか?

「最低限だがな」

おれの心を読んだように彼女は言う。

「身内って誰なの、ししょー?」

トラメが言う。

「オレの妹だ」

「あんたに妹がいたのか?」

おれは、なんとも言えない気持ちになる。

コアコ・ルミクのように強いのだろうか・・・・・。

だとすれば仲間になってくれるのは嬉しいが、このきつい性格が増えると思うと気が進まない。

「つよいのー?」

「ひとりはな。今、キョウトに住んでいる。近々、ここに着く予定だ・・・・」

なんだもう、話が進んでいるのか・・・。



「もうひとりは、戦闘力は皆無だが、なかなか使える・・・・・」

「なんだよ、使えるって?」

「会えば分かる。明日にでも迎えに行け・・・」

「明日!?どこに住んでんだよ」

「A地区だ」

A地区か。ここからなら近いな。

「名前は、カルア・ルミク。無傷で連れて来いよ」

あんたは、行かないんだな・・・・・・。



翌日。

だいぶ体が軽くなっていた。

「お兄ちゃん、もう動いても平気なの?」

「あぁ、寝てばっかりいてもしょうがないからな。体を動かさないと・・・」

おれは、手足をストレッチしながら言う。

コアコ・ルミクの妹、カルア・ルミク。

彼女は、なにやら店をやっているとかで、そこまで迎えに行くことになった。

場所は、自分で調べろと言われたので、ネーヤから借りたスマホのナビに、頼ることにした。



行くのは、おれとトラメだ。

ムサネは、また修業をしたいとか言っていた。

コアコ・ルミクも、行く気がないようなので、ネーヤは彼女と一緒の方が安全だと考え、

ここにいてもらうことにした。

「二人でお出かけは久しぶりだね!」

「そうだな、じゃあ行くか!」

ネーヤに見送られながら、おれたちは丘を降りて行った。



A地区は、周りが森に囲まれた自然豊かなところだ。

とりあえず、行けるところまでバスで行って、そこから歩くことにした。

ニホンの至る所で“神技(しんぎ)”使いによる被害が出ていたが、公共交通機関などは、まだ機能しているみたいだな・・・・・。

それもいつまで続くのかは分からないが・・・・・・・。

バスに一時間ほど揺られて、おれたちは降りる。

そこからさらに、三十分ほど歩くと、徐々に周囲に緑色が増えていく。

「気持ちいね~」

「あぁ、自然ってなんかいいな」

なにがいいって具体的には言い表すのは難しいけど、とにかく心がきれいさっぱり丸洗いされていく気がする。

「そういえばトラメたち、ピクニックとかしたことなかったね~」

「・・・・・・・そうだな」

両親がいなくなって、おれは働きづめだったからな。

そんなことする余裕はなかった。

どちらかというと、今(おちい)っている状況の方がのんびりできることは少ないはずなのに。

なんだか不思議なものだな・・・・。



さらに歩みを進める。

そこは周りが木で埋め尽くされた草原だった。

風で葉がカサカサとこすれる音、チッチッチッと規則的な音をだす小鳥の鳴き声、チョロチョロと小川が流れる音。

自然が奏でる音色でそこは満たされていた。

心が和むその場所で、一軒、家が建てられていた。

周りの緑とは一転して、赤茶色の木で建てられた家。

家を囲うようにピンクや黄色の花が一面に咲いていた。

しかし、家の前に自然に馴染むことが絶対にできない黒い物体があった。

よくみると、車だ。

安い給料で働く肉体労働者が詰め込まれるような、大きいバンだった。

なんでこんなものがここに・・・・。



「ここがカルア・ルミクの家か・・・・・」

「どんなひとだろうね、ししょーの妹さん」

「すぐ蹴ってくるやつじゃないといいな・・・」

おれたちは、家の前につく。

カルア・ルミクと書かれた木の表札が扉にかかっている。

扉の横にはいくつか水瓶(みずがめ)があり、メダカが活発に動いている。

コンコンッ。

おれは、玄関をたたく。

「はーい」

穏やかな声が遠くから聞こえる。

カチャッ、と扉が開く。



「こんにちは~。コアちゃんのお弟子さんたちね。初めまして、カルアです♪」

満開の桜が咲き誇っているのかと勘違いしてしまうほどに、その笑顔は美しかった。

「はじめまして、トラメです!!」

「・・・・・・どうもウルです」

トラメがいつも通り明るく挨拶する中、おれは彼女の姿を見るのに必死だった。

カルア・ルミク。

背は、おれよりと同じくらい。

細身だが女性らしくふっくらとした体に似合う、白色のワンピースで中央や(そで)にピンクのレースをつけている。

髪は長く薄白紫の色はとても色っぽかった。

まるで聖母のような、温かみのある笑顔。

エロいだけのコアコ・ルミクとは大違いだ・・・・・。



「わざわざ迎えに来てくれてありがとね」

彼女は相変わらず笑顔でそう言う。

「いえ、自然に囲まれててすごく良いところですね!」

トラメが言う。

カルア・ルミクは、ありがとう、ため口でいいのよ、と言っていた。

性格もすげー良さそう。

「わたし、昔っから自然が大好きなの!だからお店もここに開くことにしたの」

「お店ってなんのお店なんすか?」

「簡単にいうと占いね」

占い?彼女のイメージとは少しずれるな。

「詳しいことは中で話すわね。今、お客さんもひとりいるの」

彼女はそう言うとおれたちを中に招いた。


外と同じく赤茶色の木で作られた内装は、なんとも落ち着く空間だった。

玄関をまっすぐ進んで、右の部屋に出る。

そこには、窓側の半分が椅子やテーブルが置いてあり、反対側の半分はカウンターになっていた。

おしゃれなカフェみたいだ。

しかし、そこにまたもや黒い存在が。


男は、カウンターの真ん中の席に座っていた。

体格ががっしりしていて、黒いフード付きのロングコートを着ていた。

腕には、黒い布がぴっしりと張り付いている。

今日は、天気がいい。

かなり暑いはずなのに、男には肌が露出した部分がなかった。

男がこちらを振り向く。

おれは、ドキッとする。

その顔は、不気味なマスクで覆われていた。

全体は白く、目は〇と×がそれぞれ赤くついていて、

口のある所は、黒くギザギザに描かれている。

なぜが笑っているのように見えるのだが・・・・。

その男(定かではないが)の、雰囲気を一言で言い表すなら、死神だった。

まさか、こいつ“神技”使いか・・・・・・・・・・。

おれたちの魂を狩りに来たのか、得体のしれない黒い存在から目が離せなかった・・・・・。





黒い不気味な男・・・・。

彼は、一体・・・・・!?


最後まで読んでいただき、ありがとうございます!!

感想や質問はいつでも受け付けております。


それでは、次回もお楽しみに!!

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