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地球大戦  作者: ET
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第十五話 天候十二神拳①

【ウル】

「どういうことだ?」

おれは、疑問を口にする。

さきほどの、夜の高校でのトラメの動き。

彼女の周囲を漂う、謎の閃光(せんこう)

あれは、人間業じゃなかった。

それなのに“神技(しんぎ)”ではないだと?

おれは、トラメに詳しく話すように(うなが)す。


「あれは武術だよ!」

トラメが答える。

「武術?空手とか、カンフーとかの?」

おれが訊く。

「そう。私のししょーの家に古くから受け継がれていたものなの」

そういって、妹は人差し指を立てて、おれたちに説明する。

「”(あま)(そうろう)十二神拳(じゅうにしんけん)”。

さっきのは、そのうちの一つ。“雷兎神拳(らいとしんけん)”」

妹は、どや~って感じでこっちを見る。


「おまえ、いつのまに武術なんかならってたんだよ」

おれは、疑問に思っていたことを声に出す。

「うんとね~。ちょうど一年くらい前かな~」

「どうして始めようと思ったの?」

ムサネが訊く。

「だって、お兄ちゃんすごく心配性なんだもん。

ひとりでお留守番くらいできるのに・・・。

だから、トラメが強くなれば、お兄ちゃんを安心させられると思ったの」

「良い子じゃない」

ムサネがおれの方を横目で見て言う。



「それよりその、“神技”ってなんなの?」

トラメがおれに尋ねる

おれは、神の動画(おれは、みていないけど)やおれたちに備わった能力について

トラメに話した。

「ふ~ん、そんなことが起きてたんだ。だからあんな爆発が起こったんだね・・・・・」

トラメは、何度も頭を上下に揺らす。


“神技”について話してみて、おれは先ほどのトラメの戦いっぷりを思い出す。

「だとしてもあれがただの武術とはな・・・・。正直、信じられん」

「ししょーが言うには、”天候十二神拳”を使えるのは、ごく限られた人なんだって!

どんな人が使えるのかは、諸説あるって言ってた」

「なんだよ諸説って?」

「えーっとね、昔、雷に打たれてたりして死にかけたことがあるとか、科学者の人体実験に利用されていたとか、あとはね・・・・」

すこしの沈黙ののちトラメは言う。

「そうだ!神の血が混じっているとかも言ってた!」

その言葉に、おれは目を見開く。


神・・・・。

今までのおれなら、そんな話は意に返さなかっただろう。

しかし、今日、おれに起きたできごとをふりかえり、その存在が確かにいることを実感する。

「とするとおまえの先祖は、神・・・・?」

おれは、そういうとトラメの両肩を揺さぶる。

「そうだ!おまえがもし神の血が流れているなら、おれも同じってことじゃないか」

おれは興奮して、トラメの顔に接近する。

「いや、でも。それは諸説だから。ほんとにそうかは分かんないよ?」

「それでもいい。可能性があるなら。おれも、そのなんちゃら神拳を使えるようになりたい」

妹に守られるだけなんて嫌だ。

「今のおれの“神技”じゃあ、とてもじゃないけど、この先生き抜いていけるとは思えない」

おれは、意を決してトラメにいう。

「オマエの師匠の所に連れて行ってくれ」

「別にいいけど。」

トラメは控えめに答える。

「じゃあ、さっそく明日行こう!」

「私も一緒に行っていいかしら」

ムサネが言う。

「うん、じゃあみんなで行こ!」

「オマエの師匠なんて名前なんだ?」

「コアコ・ルミクししょーだよ!すっごいセクシーで、美人なの!」

おれの心は、すこし浮足立つ。



「ムサネ・・・。おまえもおれんちに泊って行けよ」

ムサネはギョッとした顔をする。

しかし、すぐに表情をもどす。

「・・・・分かったわ」

「大丈夫!お兄ちゃんが変なことしたらトラメがお仕置きしてあげるから!」

トラメは、無邪気な笑顔でそう言った。



家に帰ってきたおれたちは、軽く夕食をとり、風呂に入って、それぞれ別の部屋で寝ることにした。

自分の部屋で寝る準備をしていると、扉からトラメがひょっこり顔を出す

「お兄ちゃん!今日は一緒に寝ようよ」

「なんでだよ。おれんちクーラーないんだぞ。熱いだろ」

おれの言葉は無視して、妹はおれの部屋に自分の布団を持ってきた。

「いいから、いいから。じゃあ、おやすみー」

妹は明るくそういった。

しかたなく、おれも隣に布団をひき、寝転がる。


”地球大戦”が始まったこの日。

目の前で多くの命を奪われ、自らの命も危険にさらされた。

これから、あの時のような惨劇(さんげき)が続くと思うと不安になる。

おれは、体が疲れ切っているのに眠れずにいた。

すると、トラメが横の布団からおれの布団の中に入り込んできた。

そして、おれの体を強く抱きしめた。

「・・・・お兄ちゃん」

妹は目をつぶっている。しかし、その目じりには水滴がたまっている。

おれは、妹を強く抱きかえす。

大きく揺れていたおれの心は、穏やかな波に変わった。

次第におれの意識は、遠い夢の中に(いざなわ)われた。



次の日の朝、十時を回ったころ、おれは目覚める。

体は所々痛むが、たっぷり寝たおかげで、ずいぶんと回復したようだ。

トラメの姿が見えない。

あいつより、遅く起きるとは、いつぶりかな。

おれは、そういい、自分の体がぐっしょり濡れていることに気づく。

「シャワーでも浴びるか・・・」

おれは起き上がり、浴室とつながっている洗面所へ向かう。

近くに行くと、水が流れる音が聞こえる。

シャワーか?

洗濯機を見ると、トラメのパジャマが乱雑に入れられていた。

「あいつまた、着替えを準備せずにシャワーしてるな・・・」

妹は、いつもそうだ。

そして、裸でリビングをうろつく。

もう中学生だが、おれに裸を見られても気にしないようだ。

おれは、洗面所から出て、妹の部屋から服を持ってきてやる。


おれが戻ってきたころ、シャワーの音が止み、ドアが開けられる。

「トラメ・・・。ここに服、置いていおいたから・・・・・・・・・・・」

おれは、言葉を失う。

そこには、トラメ・・・・・・・・よりも数段、発育の良い体をした女が全裸でいた。

茶色い髪に水滴を滴らせて、火照った顔をこちらに向ける。

ムサネだ・・・・・。

その目は、鋭く、じっとおれの方を見た。


おれは、口が乾ききっていた。

なにか・・・・いわなければ・・・・・。

おれは、彼女の顔と体に数回、目をやり、明るく言い放った。

「道着きてたから分かんなかったけど、意外とおっぱいでか・・・・・・」

言い終わる前に、彼女は表情を変えずにおれの顔の中心に拳をお見舞いした。

おれの体は、洗面所を突き抜け、廊下の壁にぶち当たった。



食卓についた、おれとトラメとムサネ。

少し遅い、朝食。

だが、そのテーブルには沈黙が到来していた。

主に、おれとムサネのせいで。

二人の様子に、違和感を感じたトラメは、おれに訊いてくる。

「どうしたの二人とも?なんかあったの?」

「別に・・・・なんもねぇよ」

トラメの質問に、おれは目をそらして答える。

鼻を真っ赤にしながら。


「ほんと、ムサネちゃん?」

おれは、ドキッとし、ムサネの方を見る。

彼女は、おれを一瞥したあと、妹の方を見て答える。

「えぇ、特に問題ないわよ」

おれは、ホッと息を吐く。


「お兄さんに裸を見られて容姿に言及されただけよ」

おれは、持っていた茶碗を落とす。

お兄ちゃん、サイテーーーー!!!という

妹の声がおれたちの朝食にこだまする。



妹と洗い物を済ませる。

妹は時より、こちらを睨んでくる。

「しかたないだろ・・・洗濯機におまえの服があったんだ。

おまえがシャワー浴びてると思うだろ・・・・」

おれが言い訳をする。

「もう!!昨日、ムサネちゃんには、トラメの服を貸してたでしょう!?」

妹が怒鳴ってくる。

ちなみに、ムサネがシャワーをしていたころ、妹は洗濯物を干していたそうだ。

「フンッだ!!」

妹は、そっぽを向く。

おれは、必死に話題を変える。


「・・・・・・ところでおまえの師匠の家はどこにあるんだ?」

おれは言う。

トラメは、ジト目をしながらも答える。

「・・・・丘の上だよ。師匠の家と道場は隣り合ってるし、そこにいけば会えるよ」

妹は、もう一つ付け加える。

それは、おれにとって、寝耳に水の話だった。

「そうだ、ししょーの家に行く前に病院に行こうよ」

「病院?なんで?」

「だってネーヤちゃんのお見舞にいきたいし」

おれは、手に持っていた皿を置き、妹に詰め寄る。


「どういうことだよ!?ネーヤは、あの爆発に巻き込まれて死んだんじゃ」

おれの、剣幕(けんまく)に押されて妹は身じろぐ。

「ううん、生きてるよ。どうしてか分かんないけど、ネーヤちゃんあの時、外に出てたみたい。

あの校舎にいたほかの人たちは、みんな死んじゃったけど、ネーヤちゃんだけ無事だったの」

おれの顔は明るくなるが、目には涙があふれてきた。

「そうか・・・・生きてたのか・・・・・・良かった・・・・」

おれを見て、トラメは肩を撫でてくれる。

「うん。でもね校舎と距離が近かったせいで、爆発の時の風に吹っ飛ばされちゃったみたい。

その時、どこかにぶつかって気を失ってたの」

「じゃあ、あいつ・・・まだ意識が戻らないのか・・・・?」

「多分、でもお医者さんは、命に別状はないって!」

おれは、安心して、胸をなでおろす。

意識は戻っていないらしいがとりあえず無事でなによりだ・


「そうだな。そうと決まれば早速見舞いに行こう!」

おれとトラメは笑顔で顔を見合わせ、さっさと終わらせようと、再び洗い物にとりかかる。

「もし意識を取り戻したら、お兄ちゃんがムサネちゃんの裸を見たこと言っちゃうから」

石化したように、おれの動きは止まった。











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