第一話 開幕宣言
【ヲタル】
とあるサイトに投稿された動画。
ほんの数分前に投稿されたばかりの、短い動画だ。
タイトルは「地球大戦 開幕」
投稿主は、神。
これが初投稿のようだ。
内容が伝わらないタイトル。
だが、名前のばからしさに少し興味が沸いた。
時間は、腐るほどある。
おれは、動画を再生する。
滑り台やブランコ、砂場で遊ぶ子どもの姿が遠巻きに映し出された。
どうやら公園で撮影したらしい。
(この公園見覚えがあるな・・・)
すると、若い男が横から現れた。
髪は金色。
白Tシャツに水色のアウター、緑のスキニーを着ている。
いかにもチャラそうな男だ。
顔もへらへらしている。
「どうも~初めましてだね~。神だよ!」
男は、明るくあいさつをした。
そして、その軽い口調で話を続ける。
「ほんとうはエデンって名前があるんだけど、神のほうが分かりやすいし
インパクトがあるって言われてねー。そう名乗ることにしたのよ!実際に神だからね」
「ボクは、神の国ってところからやってきたんだけど、そこがホント退屈な場所でね。
遊び相手もいないし・・・
だからね、君たち地球人にボクのゲームに参加してもらおうと思ったんだ。
名付けて地球大戦!!ルールは単純!ボクを見つけて倒すこと!
どう?面白そうでしょ~」
自らを神と名乗る男エデン。その男が考案したゲーム「地球大戦」
その突拍子もない発言にも関わらず、おれの心は熱くなってくる。
なぜか?それはエデンの説明によりはっきりした。
「今日の正午きっかり、つまりこの動画が投稿されたのと同時に
君たちの中の選ばれしものに能力を与えたんだ。
その名も“神技”。
それを開花させて、育てて、そしてボクと戦って欲しいわけさ!
それぞれ違う能力だからね。
“神技”が与えられたかどうか、どんな能力なのか。
それをすぐに感じられる人もいるだろうし、気づかずに
誰かに殺される人もいるだろう。
ずばり“神技”を扱えるかどうかはセンスと創造力といってもいい。
そのあたりは、君たち地球人のほうがよっぽど優れていると思うよ。
神の国のやつらは、つまらないやつばっかりだったからね。」
「特に、いま日の目を浴びていない者、虐げられている者。
そういうやつらは、ある時、爆発的な力を生み出す。
それは“神技”にもいえることだろう」
(日の目を浴びていない者、虐げられている者。
そうか、おれは、神に選ばれだんだ!
“神技”が与えられたんだ!
おれの熱く燃え上がった心が、体中を焼き尽くすようだ。
早く使いたい!“神技”で人を・・・・)
「さあ、今回は開幕宣言だけだ。
詳しいことは、また動画にするよ!
ただし、地球大戦にルールなんてないからね
気にせずに暴れちゃってもかまわないよ♪」
「それでは地球人の諸君!楽しいゲームを期待しているよ!」
そこで動画は終了した。
(なんてことだ。
神が仕掛けたゲーム。
その開幕をこんなに早く知ることができた。
無名の投稿主だ。
この動画をみているやつ、なをかつ“神技”を持っているやつは
おれくらいだろう。
やってやる!おれがこの世を火の海に変えてやる!)
火の海、それはヲタルから無意識にでた言葉だ。
しかしそれは、彼の中に潜む神からの贈り物によるものかもしれない。