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第64話 イレギュラー判定(※3人称視点)


 ※3人称視点



 異世界ウィンダミアのとある街にある部屋の一室で、虚空に浮かんだ2つのウィンドウが淡い光を放ち、室内を照らし出している。



 その淡い光に照らし出された室内には、紙の資料を手に持ち、椅子に身を投げ出した若い細身の男の姿があった。



 男の名は、シェイド。



 この異世界ウィンダミアでもっとも強力な権限を持つ、『ダンジョン協会』の最高位である『主宰』を務めている男だった。



 シェイドは手にした書類を執務机に投げ捨てると、虚空に浮かぶウィンドウに向け喋り出す。



「資料は読ませてもらったよ。ホーカムの街って、確か歴史的に見ても魔素が相当薄い地域だったはずだよね? そんな場所に、突如としてDランクのダンジョンが発見されるなんてありえないだろう。システムの不備という懸念はないの?」



 ウィンドウに映し出された男は、ジェイドの厳しい視線を受け、たじろいた様子を見せる。



 ジェイドの視線の先の男は、ダンジョン協会の職員で、世界各地の探索者ギルドから送られくるダンジョン情報を解析し、危機予報を出す部署の責任者であった。



「私もその懸念を考え、取得データの再確認をさせましたが、あの魔素量でDランクまで成長するには何百年もかかると思われるのですが……。発見された場所を考えると街に近すぎて、何百年も見つからないのはあり得ないとの判断です。何らかの特殊要因で脅威度判定が跳ね上がったとしか」



「何らかの? 原因が分からないとでも言いたいの?」



 危機予報の責任者の男へ向けたジェイドの視線が厳しさを増す。



「も、申し訳ありません! 脅威度判定の跳ね上がった要因と思われるのは、ミミックの存在かと思われます。隠蔽されていたであろうミミックを討伐しているため、その脅威度が加算され、Dランク判定が下されたものかと推測しております! なにぶん、あまり前例のない事態ですので、断定に足る情報がありませんでした!」



「隠蔽されたミミック。そのようなレアな罠を見つけられる優れた探索者がいたというの?」



 ジェイドの視線が危機予報の責任者から、もう一つのウィンドウに浮かぶ男に向けられた。



 もう一人の男は、世界各地に存在する探索者ギルドをまとめる総ギルド長を務めている。



 ジェイドの視線に曝された総ギルド長は、手にしていた書類に視線を落とし質問に答え始める。



「は、はい。本来、ダンジョン内に隠蔽されている物は、感覚強化系の特性を鍛え上げた者が見つけられる物ですが……。こちらのアスターシアというつい最近登録された探索者は――」



 ジェイドの前に新たなウィンドウが浮かび、総ギルド長が送ってきた登録情報が浮かび上がる。



「ほぅ、『隠蔽看破』ね。こんな珍しい特性を持つ者が、ホーカムの街のような片田舎で探索者をしているとは」



「おっしゃる通り、かなり珍しい特性です。記録を調べた限り、この百年で2例ほどしかヒットしませんでした。でも、『隠蔽看破』があれば、ダンジョンの片隅で隠蔽されたミミックを発見することは可能。さきほど、危機予報の責任者が言ったとおり、本来なら見つからないはずの隠蔽されていたミミックを発見し、退治したことで脅威度判定が跳ね上がり、Dランクとして認定された案を私も推します」



「ふむ、つまり今回の件は、珍しい特性を持った探索者がいたから発生したイレギュラーな判定だったと、2人とも言うんだね?」



 ウィンドウに浮かぶ2人の男は、ジェイドの問いに頷き返す。



「ふむ……、たしかにそう推測した方が納得できる点も多いね」


「引き続き、送られてきたデータは再解析を続けております」


「再解析で異常が確認されたら、即座に報告をわたしにあげるように」



 危機予報の責任者に指示を出したシェイドが、今度は総ギルド長に視線を向ける。



「たしか最近になって我がダンジョン協会が、クルリ魔導王国のオッサムの森を『重点探索指定地区』にしている。そのためヴェンドの街に探索者が集められていると聞いているが、突発事態が発生した際、対応はできるように、探索者ギルドは国との取り決めはしてあるのかね?」



「は、はい。クルリ魔導王国とは話を付けてあります。各街の探索者ギルド長が、異常事態時を知らせた時はヴェンドの街にいる上級探索者を即座に派遣するよう取り決めを交わしております!」



 総ギルド長の報告を受けたシェイドは、椅子に身を預けたまま目を瞑った。



 その様子を危機予報の責任者と総ギルド長が無言で見つめる。



 しばらく無言の時が流れ、空気の重さを感じビクビクしている二人は口を開けずにいた。


 瞑想するように目を閉じていたシェイドが目を開くと、執務机に肘を突き、鋭い視線で二人を見据える。


「分かった。ホーカムの街から上がったこのDランクダンジョン発見に関しては、イレギュラー判定とする。だが、引き続き注視しておくように」



 二人が頷くと、虚空に浮かんでいたウィンドウが消えた。



 ウィンドウが消えた部屋では、シェイドが再び椅子に身を預け、天井を見上げた。



「クルリ魔導王国の場合、もとが空中都市であるため、地下機関部の破損から漏れた魔素で、急激な魔素上昇が起きてもおかしくない……。空中都市の魔素浄化装置として設置されていたオッサムの森の濃度急上昇も、その影響の余波かもしれない。はぁ、世界の管理などというのは、面倒で楽しみも少ない仕事だね。とんだ貧乏くじを引かされた」



 椅子に身を預けたままのシェイドは、ため息とともに目を閉じた。

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