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第18話 『渡り人』

「デキムスさんは、俺がもしその『渡り人』で異世界人だと言ったらどうします?」



 こちらの質問を聞いたデキムスさんの目から、それまでの探るような視線が消えた。



「どうもしない。『渡り人』は見つけ次第殺すだけさ。それくらい、この世界に住んでるなら当たり前だろ?」



 殺す!? 転移者は殺されるのかよっ! この世界!



「じょ、冗談ですよね?」



「『渡り人』は、強すぎる力でこの世界に災厄をもたらしすぎた存在。だから、見つけたら即座に殺せって統一ダンジョン協会が推奨してるんだぞ」



 その目、嘘で言ってるわけじゃなさそうだよね……。



 異世界転移者は、相当この世界の住民に嫌われてるって話か。



 それにしても、これだけ恨まれるってどんなことしたんだろう。



「そ、そうでしたね。俺としたことが忘れてましたよ。ハハハ」



 話が予想外にヤバい方に向かいそうだったので、慌てて誤魔化す。



 俺がその『渡り人』だとバレたら、即座に殺される。



「異国からの旅人であるアオイはこの世界に疎いようだから、わしから常識を教えておいてやる。心して聞け」



 先ほどまでと表情を一変させたデキムスさんが、ニコニコした笑みを浮かべた。



 無視して、立ち去ると怪しまれまくるし、ここは話をきくしかねぇ。



「それはどうも。ご親切に」



「いい返事だ。では、『渡り人』のことを教えてやろう。やつらは世界を越えた際、神から与えれる褒賞(ギフト)による強大な力を持っているのだ。ある者は常人にはあり得ないほどの魔力、ある者は他の追随を許さない卓越した剣技、ある者は尽きない体力といった褒賞(ギフト)が神から与えられる」



 世界を越えた褒賞(ギフト)だと? 俺、そんな褒賞(ギフト)もらってねーぞ。



 目覚めたらガチャがいただけだし……。



 はっ! まさか、俺の褒賞(ギフト)ってガチャか?



 捨てようとしたらガチャが焦ってたし。



 抱きかかえているガチャに視線を向けると、『そ、そうなんですかねー?』ってわざとらしく顔を逸らした。



 この態度、ガチャが俺の褒賞(ギフト)で確定だな。



 でもまぁ、悪くないぞ。ガチャは可愛いからな! 大当たりの褒賞(ギフト)だ!



 こっちの思考を読んだのか、ガチャは照れたようにレバーを回す。



 かぁー! かわいいな! ガチャ引かせてくれるだけでなく、癒し効果も抜群だぞ!



 照れているガチャの身体をわしゃわしゃと撫でまわしてやった。



「そんな強力な力を持つ『渡り人』たちは、神から与えられた褒賞(ギフト)の力を使って、この世界由来の物を改変させ続けた存在だ。ダンジョン発生の仕組みも魔物もやつらが生み出したものだと言われ続けている。だから、見つけたらすぐに殺さねばならん。黒目黒髪の『日本人』という名の害虫どもをな」



 異世界から来た俺みたいなやつが、力を使ってこの世界でやりたい放題したから、現地の住民がガチギレしてるってわけかー。



 って――! 俺、関係ねぇぞ! 何もしてないのに!



 これは確実にバレたらマズいやつだな。



 黙っておいた方が穏便に済むはずだ。



 俺はニコニコと笑って、情報を与えてくれたデキムスさんに手を差し出し握手を求めた。



「いやー、いいことを教えて頂きました。ありがとうございま――」



「だから、『渡り人』のお前は死ね!」



 背中の弓を構えたデキムスさんが、目にも止まらぬ早さでこちらに向けて矢を放つ。



「マジかよっ!」



 飛来した矢が見えない壁に遮られて弾かれる。



 ナイスっ! プロテクションシールドを張っておいてよかったぜ!



「矢が見えない壁に弾かれた!? お前は『魔術士(スペルキャスター)』か!」



「さあな! あんたは、水筒くれたからいい人かと思ったけど、いきなり人を撃つとは失礼なやつだな!」



 2本目の矢が放たれ、プロテクションシールドに弾かれる。



 プロテクションシールドつよっ! 耐久値が20しか減ってねぇ!



 これくらいの攻撃なら、集中で攻撃されない限り脅威ではないってことか。



 3本目、4本目もプロテクションシールドはデキムスの矢を弾いた。



「アオイのは、ずいぶんと強力な不可視の盾だな。世界を越えた褒賞(ギフト)は、強力な魔法でももらったか?」



「俺は異国から来た旅人だと言っただろう。今謝罪をすれば、俺を『渡り人』と誤認して射たことは許すが」



 敵対行動を見せたデキムスに対し、言葉遣いを改める。



 ガチャも俺の腕から飛び出して、デキムスに対し威嚇するようにレバーを激しく回す。



「連れの犬はうるさいな。それに『渡り人』のお前もな」



 おや? デキムスには、ガチャが普通の犬に見えてるのか……。



 確かに行動はわんこに似てるが。



「あんたに、俺の相棒が見えるのか?」



「当たり前だろ。真っ白な体毛に覆われているが、頭頂部の毛色がピンクなのは珍しい。小型とはいえ優秀なダンジョン探索犬なんだろ? その犬は」



 ガチャは、デキムスへの威嚇を続け、レバーをグルグル回している。



 蛍光ピンクのガチャマシーンを連れ歩くと、頭がどうかしてるやつと思われるかと思ってたが、他人からはかわいいわんこに見えるならよかった。



 俺にはわんこじゃなくて、ガチャマシーンに見えるわけだが、これはこれで可愛いからヨシ!



「確かに優秀だと思う」



「そうか、ならそっちを先に!」



 デキムスが弓に番えた矢をガチャに向けた。



「俺の大事な相棒を射させるかっての!」



 ガチャに向かってプロテクションシールドを発動させ、射られた矢は不可視の盾に阻まれ逸れた。



 このままじゃ、らちが明かねぇ。



 とりあえず、気絶させてもらう。



 矢を射ろうとしたデキムスに近づくとキックの戦技を発動させる。



 腰の入った回し蹴りが決まると、デキムスが吹き飛んで地面を転がっていく。



 し、死んでねえよな? 意外と威力たけぇ!



 近づいて息を確かめる。



 ふぅ、死んでねぇようだ。気絶してくれた。



 とりあえず、目覚める前にこの場を去った方がよさそうだ。



 足元のガチャを抱え上げ、外套に隠し、影潜りの外套の力を使用する。



「ガチャ、ここに居たら危ないからずらかるぞ」



 俺とガチャは姿を隠し、『オッサムの森』の奥に進むことにした。


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