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短編

元婚約者は学名『コンヤクヨリモドン』

作者: マンムート

婚約者がいきなり、婚約破棄だとわめいたので、はいっ! 喜んで、と喰い気味に応じました。


だって、婚約者がいなくなれば、好きなだけ趣味に没頭できるんですから!


婚約破棄万々歳!


すごく短時間で読めるかるーい話です!


 パーティ会場で、婚約破棄しろ、と言われたので、はいっ! と喰い気味に応じました。


 驚かれましたが、あちらから言って来たので応じただけです。


 そもそもこの婚約自体。貴族のあれやこれやで断れなかっただけだったので。

 両親だって苦しそうな顔をしてましたもの。断ってもいいとまで仰ってくれました。

 だけど、ふたりの思い出のつまったコレクションを売らせて自分が助かるなんてできません。

 というか、そのコレクションは絶対に引き継ぎたいと思ってたんで!


 ま。そんなわけで、最初から好意のかけらもなく。

 向こうもゼロを更に減らすようなことばかりしやがるのです。


 はやってるからちょっとやってみただけだモサかったお前は俺に教育されて綺麗になったんだから惚れてるはずだとかわめいていましたが、知ったことではありません。


 さっさと帰ったので、その後どうなったかも知りません。


 両親に報告しましたら私に対しては良かったね、で。

 先方に対して大激怒でしたから、それなりの対処がされたとは思いますが。


 なんで知らないかと言えば、翌日には我が家の別荘へ向かったので。


 知り合いの方々はなんにもないところだと呆れますが、海に面してていいところなんです。

 私、王都よりもここのほうが好きなんです。

 なんといっても、この別荘。近くの崖から太古の生物の化石がザクザクとれるんです!

 両親もこの趣味で出会って結ばれたそうです。ろーまんちっくですね!


 久しぶり! かわいい化石コレクション! さぁガンガン増やしますよ!


 そういえば元婚約者はこの趣味をバカにしてましたっけ。ゴミ集めだって。

 俺の妻になるからにはあんなガラクタを忘れさせてやる、とかほざいてもいましたっけ。

 あいつに無理矢理強制されたドレスも化粧ももういらない! 解放!


 婚約破棄万々歳♪


 奉公人達も気を利かせてくれて、王都の話を伝えないようにしてくれてて、感謝です。

 わーい毎日毎日化石三昧! 論文も書いちゃおう!

 ドレスじゃなくて動きやすい作業着! 作業着最高!


 と、思っていたら遠路はるばる、元婚約者が押しかけてきました。

 崖で化石を掘っていたら現れたのです。不法侵入してきたのです。

 なんだかボロボロの格好をしています。足に鎖までついてます。

 しかも不潔です。臭いです。


 お前のせいでメチャクチャだ俺は廃嫡されて実家から縁切られて慰謝料を払うために鉱山労働するはめになったじゃないか!


 とかなんとかわめいていましたが、自業自得ですね。

 婚約しなおせ、と言われましたが、お断りです。


 襲って来たと思ったら勝手に足をすべらせて、勝手に落ちていきました。


 わー。

 ぼちゃん。


 あとは波の音ばかり。


 ここは崖ですよ。素人が命綱もつけずに来る場所じゃありませんのに。


 なにに足を滑らせたのかな、と思って見て見たら、なななんと、太古の貝の化石!

 しかも新種!


 大発見です!


 無我夢中で発掘してたら夕方になってました。


 レアな上に、完全な状態で傷一つついていない一級品です!


 その後、この新種の化石のおかげで素敵な殿方との出会いがあるのですが、それはまた別の話。


 意気揚々と帰る途中、あ、そういえば元婚約者が落ちたな、と思い出しました。

 目撃者もいないんで、黙ってましょう。


 だけど、あんなのでも何万年後には化石になるんでしょうか?


 学名は『コンヤクヨリモドシ』といったところでしょうか。


 うーん。戻らなかったので、モドシはないか。


『コンヤクヨリモドン』にしておきましょう。


 ま。いくら珍種でも、二度と見たくないですけどね!





最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 未必の故意ですよね。主人公犯罪者なら注意入れたほうがいいのでは。
[良い点] タイトルを見た時、なんだこりゃと思いました。 一生懸命化石を探している時はクスクスとしながら読ませて頂きました☆彡 最後はなるほど!と思いました。 面白く読ませて頂きました。 ありがとうご…
[気になる点] ジャンル、恋愛かなあこれ…
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