表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part2-マレーシア編
97/215

その6-04

ブックマーク・評価★・感想・レビューなどなど応援いただければ励みになります!どうぞよろしくお願いいたします。

 部屋に入ってきた二人を見て、カイリは静かにドアを閉め、ゆっくりと二人の方に歩いてくる。


 半裸で、ショートパンツだけ履いているカイリは、龍之介が判断した通り、随分、鍛えられている体躯をしていた。そして、その歩いてくる様相も、そのガッチリとした体格とは反対に音がなく、身軽な足並みだった。



(この兄妹って……音無しだなぁ……)



 アイラに出会ってからというもの、いつもなんとなく訝しんでいたこの事実を思い出して、龍之介は、ただ静かに、カイリの近寄ってくる様子を眺めていた。


 龍之介と廉の前まで来たカイリの視線が龍之介に固定されて、その視線の先が頭から足元にゆっくりと落とされる。そして、またその視線が上がり、龍之介の目線に戻ってきた。


 その――なんとなく横柄な態度にもみられない――迫力で、上から下まで観察されて、龍之介の顔が自然強張ってしまう。


「あの……なに、か――」

「随分、均整の取れた筋肉だな」

「え?」


 意味が全く理解できず、強張ったままの形相で、龍之介が聞き返した。


 それで、カイリがまた、ちらっと、龍之介の体に視線を落とし、

「服着てた時はそんな風にも見えなかったが、随分、均整の取れた筋肉だな。その年で、かなり動いてるな」


 それは珍しい――とでも言いたげな口調だったが、龍之介の頭は完全に真っ白になっていた。


 まさか、同姓の――それも年上の男から、自分の体をしげしげと観察されて、おまけに――褒められたのだろうか――気のせいかもしれないが、龍之介の体を見て、なんだか喜んでいるように見えるのは、龍之介の気のせいなのだろうか。


「……あの――いえ……その――」

「今度、お手合わせ願いたいね」

「いえ――俺なんか、絶対に適いませんから」


 簡単に断言する龍之介に、ふいっとカイリが視線を上げて、龍之介を真っ直ぐに見返す。


 その口元が少しだけ上がっていて、龍之介を見ているその瞳が、不敵に輝き出していく。


「なんで、そう言える? 俺は別に普通の男だし、特別、強いわけでもないぜ」


 龍之介の顔が嫌そうにしかめられたが、それには返答をしない。

 それを見て、益々、興味が沸いたのか、カイリが少し目を細めて、嬉しそうな顔をする。


「リュウちゃん、見かけに寄らず、かなりの腕だなあ。それは知らなかった。やっぱり、相手してもらおうかな。ここにいたら体もなまってくるし」

「いえ、俺は……結構……です――」


 はっきりと断ることもできず、知らず、龍之介の語尾が小さくなっていく。


 ふっ、とカイリは軽く笑って、その目を隣の廉にも向けた。

 だが、龍之介の時のように上から下まで観察するのではなく、ただその視線を廉に向けただけなのである。


 次に何が出てくるか……――とその様子を見守っている龍之介の前で、カイリがスッと動き出した。


「後でボートを借りて沖にでも出ようと考えてる。アイラに、混ざりたかったら連絡するように、と伝えておいてくれ」

「ああ、はい――わかりました」


 じゃあ、とカイリはその場を動き出して、静かに開けっ放しのドアから外に出て行った。


 その姿がなくなって、龍之介は、はぁ…と、安堵したように肩をおろしていた。


「――なんかぁ……迫力ある人なんだよな、あの人。――アイラのお兄さんだけど、なんかなぁ……」


 龍之介はまた長い溜め息をこぼしていた。


 まあ、龍之介の言っていることも判らないではないので、廉も口では言わずに、龍之介に全くの異議はなし。


「アイラも寝てるから、一休みして、また遊びに行こうかな」


 気分を取り直して、龍之介もスタスタと部屋の中に足を進めていく。


「龍ちゃんは元気だな」

「だって、常夏なんだぜ。泳ぎまくらないと損じゃんか」

「俺は、次は遠慮するかな」

「なんで?」


「昼間はまだまだ暑くなるから、そんな場所で遊んだら、一気にバテてしまうから」

「そうか?」

「そうだよ。夕方なら、まだ少しは耐えられるだろうけど」

「そうかぁ? 俺は平気だけどな」


 この炎天下に全く堪えていなさそうな龍之介は、まだまだいけそうである。


 廉も少々微苦笑めいた顔をして、

「帽子とかない? あまり急激に太陽に当たってたら、日射病になるかもよ」

「そっか。確か――帽子は一応、持ってきたはずなんだ」

「昼にもでるなら、次は必要だな」

「そっか。じゃあ、俺、ちょっとシャワー浴びるけど、先にいいか?」

「どうぞ」

「廉が終わったら――」


 それを言いながら、龍之介は、キッチンカウンターに置かれているラジオ時計に目を向けていた。


「昼になるかな?」

「そうだね」

「だったら、昼飯だ。イェイ!」


 ガッツポーズをきめて、バスルームに走りこんでいく龍之介の背中を見送って、廉もおかしそうに笑っていた。



読んでいただきありがとうございました。

一番下に、『小説家になろう勝手にランキング』のランキングタグをいれてみました。クリックしていただけたら、嬉しいです。


Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランキングタグ、クリックしていただけたら嬉しいです (♥︎︎ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾
小説家になろう 勝手にランキング

大人になってもはちゃめちゃ恋愛物語『やっぱりやらねば(続)』は大人の恋愛編です。
やっぱりやらねば(続)(18歳以上)

別作品で、“王道”外れた異世界転生物語も、どうぞよろしくお願いいたします。
奮闘記などと呼ばない(18歳以上)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ