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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part2-マレーシア編
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その6-03

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「アイラ、おーい……――寝ちゃったんだな」


 一泳ぎ済ませた龍之介と廉が戻ってくると、パラソルの下で、背中にバスタオルをかけて横になっていたアイラは、完全に寝入ってるようだった。


 龍之介がちょっと覗き込んでも、スーと、気持ち良さそうな寝息が聞こえるだけだ。


「熟睡だ」

「爆睡って感じだけど」

「爆睡? ――ああ、確かにそんな感じだ」


 廉は一人で納得しながら、龍之介のように少し屈んで、アイラを覗き込むようにした。


「アイラ、部屋に戻って寝た方がいい」

「おい――廉……起こして、いいのか……?」


 半分、廉を止めるような形の龍之介が手を伸ばしているが、廉はアイラの肩をさするようにして、もう一度、アイラを起こして行く。


「アイラ、部屋に戻った方がいい」

「――う……ん――いや……――」


 寝ぼけているアイラは嫌そうに廉の手を払う。


「部屋に戻った方がいい」

「いい……の……。眠い……の――すごい――」


 それを全部言い終わらないうちに、アイラはまた、スーッと、深い眠りに落ちて行ってしまった。


「――どうする?」

「仕方ないな」


 濡れている前髪を少しすくうように後ろにかきあげて、廉はアイラの背中に置いてあるバスタオルを取り上げて、龍之介に渡すようにした。


「ちょっと持っていてくれないかな、龍ちゃん」

「え? ――いいけど――」


 それを受け取ったはいいが、龍之介はよく理解できず、ポカンと廉を見返している。


 廉は少し屈んでアイラの肩を反対に押すようにしながら、サッと、アイラの向きを変えて、そのままアイラを抱き上げた。


「それ、ここにかけて、龍ちゃん」

「え? ――ああ、はいはい。これな――」


 言われるままに、咄嗟に、龍之介はバスタオルをアイラの前身ごろにかけるようにした。


「――重く……ないのか、廉?」


 反応に困っている龍之介は、その瞳を大きく見開いたまま、なんだか、じぃっと、廉を眺めているようなのである。


「そりゃあ、まあ、人並みの重さはあるし」

「でも――なんか、軽々――みたいに、見えたけど……」

「そうかな」

「そうだよ。――なんか、廉って――すごいなぁ……。アイラを抱き上げるんだぁ……すごいなぁ――」

「そうかな」


「そうだぜ。俺なんか、女の子を抱き上げたことなんてないぜ。廉って、すごいなぁ」

「だったら、代わる?」

「え?! ――いやっ――」


 思ってもみないことを言われて、龍之介は、ふるふると、勢い良く首を振ってしまった。


「いや――俺は、いいよ――だって――抱き上げるのも――俺はさ――いいんだ――」


 大慌てて、おまけに、大混乱して首を激しく振る龍之介に、つい、廉も笑ってしまう。


 ちょっと笑われてしまって、それで我に返った龍之介は、かあぁ……と、少し顔を赤らめてしまった。


「いや――さ……。その――」

「ここに残しておいてもいいけど、この炎天下に昼寝なんかしたら、脱水症状とかになられても困るし」

「脱水症状? ――それは、ダメじゃん。干からびちゃうからか?」

「そうだね。熟睡してるから当分は起きないだろうし、放っておくのもなんだから」


「そっか。だったら、部屋に戻ろうぜ。ついでに、俺も水が飲みたいな。暑いよな、いい気分だっ」

「龍ちゃんは元気だな。バテないといいけど」

「大丈夫、大丈夫。俺は暑いのも好きなんだ」


 そうやって空を見上げていくと、目が痛いほどに澄んだ青空がチカチカと視界の前で突き刺してくるようだった。


「あぁあ、最高っ~!」

「元気だな、龍ちゃんは」


 アイラを抱えながら、自分達の部屋に向かっていく廉と龍之介の前に、アイラの兄のカイリが、血相を変えて二人の下に走ってきた。


「どうしたんだ?」

「ビーチで昼寝をしていたので」


 勢いのまま詰め寄られて、なんとなく怯んでしまう龍之介に代わって、廉が仕方なくそれを返答する。


「昼寝?」


 それを言われて、カイリは、ちょっと抱き上げられているアイラを見下ろしてみる。


 クーっという寝息が聞こえそうなほど、アイラは一人気持ち良さそうに、完全に熟睡しているのである。


「だったら、俺が運ぶ」


 抱き上げている廉からアイラを奪い取るような感じに見受けないではなかったが、カイリがさっさとアイラを廉から取り上げて、また簡単に抱き上げていく。


 それで、龍之介と廉を構うことなく、アイラを抱き上げたまま、さっさと一人、龍之介達の部屋に向かって歩き出してしまった。


 その後ろ姿を見送っている龍之介は、半ば呆気に取られてしまっていた。


「――……今の――なんか……グイッて、無理矢理、取り返したように見えなかったか……?」


 廉はそれにはノーコメントである。


 鈍い龍之介のことであるから、この休暇にやって来て以来、廉が受けている、この暗黙のプレッシャーを感じ取っているとは、到底、思えないことである。


 紹介されたその瞬間から、いらぬ誤解どころか、格好の標的にされてしまった廉の状況と立場を、全く理解していない龍之介は、なんと幸運なことであろうか。


 自分達の泊まっている部屋に戻ってきた龍之介と廉の前で、アイラを寝かせてきたのだろうか、カイリがアイラの部屋から出てくる所だった。



読んでいただきありがとうございました。

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