その6-02
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“柴岬一族”家系図アップしてみました。Part2の章の初めに入っています。
是非、参考にしてみてくださいね?
『そう言えば――アイラも、今回はボーイフレンドを連れてきたのね』
なんだか、その話題を持ち出した美花の母親が、とても嬉しそうである。
『ああ、あれ』
『そうよ。なんだか、かっこいい男の子じゃない。日本人なのに、背も高くてね。わたしもビックリしちゃったわ』
『友達だ、って言ってるわよ』
『そうなの? ――グレナは、ボーイフレンドだって話してたわよ』
『あいつがボーイフレンド? ――それは、よくやるぜ』
なんだか、セスの口調もかなり同情じみたトーンである。
美花の母親が、くすくす、とつい手を口に当てながら笑ってしまう。
『こんな、みんなが集まるところで、あの男の子も大変ね』
『そうかしら。全然、気にしてないじゃない。気にするようなタマにも見えないけど』
『そう?』
『そうよ。アイラより年下だけど、妙に落ちついてるじゃない?』
『あら、年下だったの? ――全然、そんな風に見えなかったわね』
『まあ、でもアイラは友達だって言ってるし。全然、色気もないじゃない、あの二人』
『あら、そうなの? ――それは……残念ねぇ』
本当にがっかりしている所が、なぜか謎である。
『そう言えば――そのアイラはどうしたんだ?』
『ビーチに言ってるわよ。残りの二人と』
へえ、と相槌を返したセスは、抱いていたエーサンの弟を、ぽて、と美花の上に置いていく。
それから、スッと身軽に立ち上がったセスは、美花の母親の腕からエーサンを取り上げる。
『――いや……いや、グランマっ』
大慌てで、美花の母親に腕を伸ばしてくるエーサンを無視して、セスは気軽にエーサンを抱きかかえていく。
『おじさんがプールに入れてやるぞ』
いやいや、とエーサンが美花の母親から離されて、うわあぁん――と耳が裂けるほどの大声を張り上げて、大泣きし出してしまった。
セスはそれにもへこたれた様子もなく、大泣きするエーサンを抱えて、子供用のプールに膝をついていく。
少し離れたプールからでも、エーサンの大泣きする大声が美花達の所にも届いてきた。
少し顔をしかめてしまう美花は、嫌そうに、
『ああ……、よく泣くじゃない。あの声じゃ耳が張り裂けるわね』
自分の上に乗っている弟の方は、また前歯を出して美花に腕を伸ばしてくる。
『フィンはこんなに人懐っこいのにねぇ』
きゃっ、きゃっ、と大喜びで美花の水着を引っ張ったり、顔に腕を伸ばしてくる弟のフィンは、笑う度によだれがこぼれてしまっていた。
そうするうちに、あの耳が張り裂けそうな大声がやんで、向こうのプールからでは子供のはしゃぐ声が届いてくる。
それで、美花と美花の母親がそっちを振り向くと、セスと水のかけ合いをして遊んでいるエーサンがいるのである。
『セスは子供の扱いが上手ね』
『まあ、馬や牛の扱いに慣れてるから、子供も動物と変わらないんじゃない?』
そんな呑気なことを言っている美花も、フィンを抱き上げてベンチから立ち上がっていた。
『じゃあ、エーサンに負けずにうちらも泳いでくるか』
頭の上のサングラスを母親に手渡して、美花とフィンもプールに向かっていった。
* * *
その頃、噂のアイラと残りの二人は、龍之介の元気に乗せられて、ビーチにやってきていた。
昨日の大賑わいのパーティー疲れも見せず、朝から元気な龍之介は、朝食を終えてしばらくしないうちにすぐに、廉とアイラをビーチに誘っていた。
支度を済ませてきたアイラと廉を連れて、一向は宿の前の海に入るのではなく、海水用のビーチに向かって歩いていったのである。
まだ日差しが頂点まで達していないので、早速、泳ぎにでかけようと張り切っている龍之介の前で、着ている簡単なワンピースを脱いだアイラは――特別、驚くことではないのだが、ビキニを着ていた。
リゾート地で、ビーチがあって、そこらに出てきている観光客の女性陣は、ほとんど全員がビキニを着ているようだから、驚くことではないのだが、なんだか、龍之介は目のやり場に困ってしまい、ちょっと横を向いてしまった。
薄い水色っぽい小さなフリルのついたカワイイ水着だったが、アイラが着ると――どうも、カワイイ――といった感じの表現に収まらないのであろうか……。
アイラは腕とかにクリームを塗り出し始めている。
「龍ちゃん、日焼け止め塗らないと、ひどいことになるわよ」
「日焼け止め? なんで? 俺はサンクリームを持ってきたのに。焼きに来たんだぜ」
それは聞いて、アイラがかなり顔をひきつらせて龍之介を振り返った。
「この炎天下でサンクリーム? ――さすが、龍ちゃんだ、と言うべきかしら……」
「なんで? せっかく海に着たのに焼かなくてどうするんだよ」
「こんな炎天下だったら、焼かなくても勝手に焼けるわよ。それなのに、余計に焼くなんて、龍ちゃんくらいよ」
「ええ? そうかな。だったら――廉は?」
廉もボトルからクリームを腕に塗っているようである。
「俺も日焼け止めだけど」
「ええ? そうなのか? なんで?」
「アイラも言ってるけど、この天気だったら、焼かなくても勝手に焼けるから。日焼け止めなんて、丁度いいくらいに焼ける用のものだし」
「そうか? 日焼けしないようにするやつだろ?」
「普段の天気だったら、一応はブロックできるだろうけど、この炎天下で、日差しの強い太陽の下にいたら、日焼け止めでもすぐに焼けてしまうよ」
「そうなのか? ――それは、知らなかったなぁ……」
それで、龍之介は手に持っている自分のサンクリームに目を落としてみる。
「焼いたら――ダメかな……」
「ダメじゃないわよ。絶対に焼けるから心配するんじゃないわ」
「そうかな……」
「でも、急激に焼いたら、後で痛くなるわよ。寝れなくなったら、どうするのよ」
「そっか……それも、あったな。でも、俺は昔からたくさん焼けても、結構、大丈夫なほうなんだよな」
「あっそ。だったら、サンクリームにして、どんどん焼けばいいじゃない」
呆れてアイラはそれを言っていた。
「そう、しようかなっ。俺は真っ黒になって帰るのがいいと思うんだ。友達にも自慢できるしな」
それで、アイラと廉のアドバイスとは反対に、龍之介一人がサンクリームを塗って、3人は海に出て行ったのだった。
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