その6-01
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このエピソードでもかなりの名前がでてきましたが、一体、誰が誰なんだ? と思われるかもしれません。
身内の話も多く、混乱させてしまったかもしれません m(_ _)m
今、“柴岬一族”の家系図を作ってみました。これから、どうやって、イメージをサイトに上げるのか確かめてみますので、お待ち下さい
『お嬢さん、飲み物でもいかかです?』
プールサイドのビーチベンチで、気だるげに寝そべっている美花の上に、スッと影が差して、美花はかけていたサングラスを半分だけ上げて、その影を見上げるようにしてみせる。
『あら、ハンサムさん。なに? 私に飲み物を買ってくれるわけ?』
『美しい女性を誘えるなら、なんなりと』
『だったら、特別おいしそうなやつね』
『かしこまりました』
気取ってお辞儀をしてみせる相手は、プールの中央にあるバーにゆっくりと歩いていく。
それで、美花は座りなおすように起き上がって、サングラスを頭の上にかけなおすようにした。
バーから二つのグラスを持って戻ってくる男が美花の前に来て、ピンク色のフロストが入った長いグラスを差し出した。
美花がそれを受け取ると、男は隣のベンチにスッと腰を下ろしていく。
美花がストローを口に近づけていき、最初の一口をゆっくりとすすり出していた。その傍らで隣の男を横目で確認するようにする。
かなり日焼けした腕や顔が、この灼熱の太陽にも負けずにゴールドに輝いていて、ふわふわと、くせのある色落ちした髪の毛がキラキラと反射していた。無造作にベンチに寝そべったその体は細身ではあるが、シャツの下の引き締まった体躯は、かなりの筋肉質の体だ。
気取ってなく、ラフな感じの魅力的な男だった。
『牧場はどうしたのよ』
『手伝いに任せてきたから、いいんだ。クリスマス用に酒ダルも残してきたし』
『それで、ボスは一人で常夏を満喫するのよねえ』
男は美花の方を見ながら、くすっと笑う。
『いいじゃん。親戚一同、全員集合の集まりだろ? Nana とPop にもずっと会ってなかったし。二人とも、年取ったなあ』
『そうね。なんだか、ちっちゃくなっちゃって』
なんとなくしんみりする美花だったが、気を取り直して、またストローを口に寄せていく。
『セス、あんたのガールフレンドはどうしたのよ? オニイサマは、随分、お盛んじゃない』
『まあ、あのブロンドも悪くはないかな。胸はないけど、足が長いし。ケード好みだな。あの足が』
美花は皮肉げにちょっと口元を歪めてみせていた。
『セスは昔っから、胸のデカイ女に目がいくもんね。ああ、嫌だ、嫌だ。いかにも下半身で動いてる男達は、ダメよねぇ』
にかっ、とセスが破顔してみせ、
『やっぱり、男だし。それくらいしか、楽しみがないじゃん。でも、俺は美しい女性にも、優しい男だぜ』
『そうかしら』
『そうだろ? ミカのドリンクも買ってきたじゃないか』
美花の口元が、微妙に笑いを堪えているような感じだった。
『相変わらず口が上手いこと』
『そんなことないぜ。――おっ、チビ共だ』
向こうからやってくるちっこい二人組みを見つけて、セスは寝そべっている姿勢から、スクッと身軽に起き上がった。
『おっきくなったなぁ。上はいくつだって?』
『3歳よ。下のはこの間で1歳』
『へえ、それでもよく動いてるな』
セスは自分達の方にヨテヨテと歩いてくるチビ共を見ながら、嬉しそうにその笑顔を大きくしていた。
『ほーら、二人のおばさんとおじさんですよー』
美花の母親が小さい二人組みを連れて、美花達のベンチにやってきた。
大きい方の兄は、美花とセスを見るなり、パッと美花の母親の後ろにすぐ隠れてしまった。それで、足の間から二人を、じぃっと、観察しているようである。
だが、転びそうになってヨタヨタと歩いてきた弟の方は、前歯を出して二人に笑いかける。アー、アー、と大喜びでベンチに走り寄ってきた。
『おっ、元気だな、こっちは。お兄ちゃんは、人見知りかな?』
セスはちっこい方に腕を伸ばして、スッと、身軽に赤ん坊を抱き上げた。その反動で、赤ん坊が嬉しそうに手足をバタバタ動かしまくる。
『おっ、元気だな。こんな暑くても、元気なことはいいぞ』
『どうしたのよ。子守りなの?』
美花は自分のベンチの足元を譲るようにして、奥にちょっと座りなおしていく。
その空いた場所に、美花の母親がゆっくりと腰をかけていき、足元にまとわりついている兄の方を抱き上げた。
『そうよ。サフロンも忙しいでしょう? だから今朝はゆっくり寝れるように、ね。それに、おばあちゃんだって、ずっと会ってなかったものねえ』
美花の母親にべったりしがみつくようにして、その小さい兄の方は、一向に美花達の方を振り返らない。
『エーサン、ミカおばさんよ。もうずーっと前に会ったきりだから、忘れちゃったでしょ。こっちはセスおじさんよ。そんな恥ずかしがらないで』
ちろっと、美花の方を一瞬だけ見たエーサンだったが、すぐにまた美花の母親の胸に顔を埋めてしまっていた。
『ここに着いて以来、ずっとそればっかりねえ。ちょっと傷つくわよ』
『仕方ないわ。たくさん知らない人がいるんだから。ねえ、エーサン? いっぱい、パーティーにも来てたでしょう?』
美花の母親には返事をするようで、モゴモゴと、何かを美花の母親の胸元に向かって話している。
『セスも、久しぶりね。昨日、着いたんでしょう? パーティーじゃ、みんな忙しくてゆっくりと話す機会がなかったもんね』
『伯母さんも、久しぶり。おばあちゃまは休暇中も大忙しだな』
『あら、ここだけよ。帰ったら、また離れ離れだものね。今だけ、ね?』
美花の母親の春香は日本人のせいか、3人の成長した子供に孫までいるのだが、未だに若く見える女性だった。
『叔母さん、いつ見ても若いな。俺がもうちょっと年上だったら、すぐにデートに誘ってるのに』
まあ、と美花の母親はやんわりと笑っている。
『セスは口が上手いのね』
『セスの得意技よ』
『あら、そうなの? だったら、その得意技でたくさんの女性もコロリ、かしらね?』
美花の母親はお茶目な母親である。セスも笑っているような顔をしていた。
『ケードは彼女連れだったわよ』
『そうだな』
美花の母親の顔が、セスを意味深に眺めている。
『俺はいいんだ。そっちの方はケードに任せてるから』
『あら、そうなの? セスだって、忙しい、って聞いてるわよ』
『俺は牧場があるし』
『あらあら。そういうことにしておいてあげましょうかしらね』
くすくすと、美花の母親はおかしそうに笑っていた。
『そう言えば、ガブリエルの所は結婚が近いって言う話だけど』
『ガブリエルが? ――まあ、あそこは付き合いが長いからぁ。愛しの幼馴染だし』
『そうね』
『あの一家は、一家揃ってアツアツだからいいんじゃない?』
『そうねぇ。でも――、うちの残りの子供たちはどうしたのかしらね。靖樹は30才になったのに、全然、そっちの話が上がってこないし。私の一人娘も――そんな話が上がってこないわねえ』
『私はいいのよ。現代の女は、早々、簡単に結婚決めないのよ。しっかり見極めて、いい男を捕まえないとね』
『選り好みが激しいのもねえ……』
『いいじゃない』
『でも、私だっていつまでも若いままじゃないからね。いつになったら、次の孫が見れるのかしらね。60前に作らないと、疲れちゃうから面倒みれないわよ』
『60過ぎても気持ちは若く、でしょうが。ママはね、若いからいいのよ』
『ああ、次の孫も見たいわぁ。今度は女の子かしら。それとも男の子かしら。この家系は男の子が多いものねえ』
美花を無視して話を続けている美花の母親に、美花も、うんざり、との顔をしていた。
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