その4-04
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『アイラ達は席をどうするの?』
『決まってないよ。伯母さん達も一緒に座る? それとも、他の一行と一緒だっけ?』
『あら、私達も決まってないのよ。それに、パーティーが始まったら、みなの所に廻れるから、どこに座っても同じじゃない』
なんだか、アイラの伯母夫婦は龍之介達と席を一緒にするらしく、適当に決めたテーブルにやってきて、それぞれが椅子に腰を下ろして――いかない。
龍之介は自分の前にある椅子を引いて半分座りかけていたが、手前側では、アイラの伯父が自分の奥さんの席を引いている。
アイラも美花も座らないので、廉が仕方なく美花の席を引き、そこに美花がゆっくりと腰を下ろしていき、同じように、アイラの場所にも回ってその椅子を引いていた。
「え……――もしかして、レディーファースト……とか、いうやつですか……?」
「あらぁ、龍ちゃんは日本男児だから、そういうのには疎いのかもしれないわね。仕方がないけど。でも、これくらいはできなくちゃ、女に嫌われちゃうわよ」
龍之介の隣に座っている美花が、くすっと、微笑んでそれを話す。
「はあ……」
親しげに、随分、上品な微笑みを投げられたのだが、なぜか、龍之介には、理由の判らないプレッシャーを投げつけられた気分だった。
そうしているうちに、会場内にはゾロゾロとたくさんの出席者が入りだしてきていて、一番初めに着いた龍之介達のテーブルの方に寄ってきて、皆で挨拶を済まし、そこから隣のテーブルが埋まり出し、次のテーブルが埋まり出し――とパーティーが始まる15分前くらいにはほぼ全員がその会場に揃っていた。
「――本当に……パーティーなんだぁ……。すごい、な……」
会場を見ただけで、かなり本格的な盛大なパーティーになることは、簡単に見て取れた。
だが、集まってくる団体が揃って全員、本当に、皆、着飾ってきていて、女性陣のほとんどはアイラや美花のような本格的なドレスを着ていた。
年齢の上の方の女性陣は長いスカートのドレスが多く、まだ若い年齢層では、膝くらいの丈だったり、それより短かったりと多様ではあったが、それでも本当に全員が全員、豪華なドレスで着飾っていた。
男性陣と言えば、ほとんどが黒の正装用のスーツやタキシードが多かったが、中に着ているシャツが違っていたり、ネクタイやピンが留められていたりと、やはりそれぞれに個性のある様相だった。
アイラの祖父は略装のタキシードを着ていたが、きちんとネクタイではなく黒の帽タイをしていた。
「すごいなぁ……。こんなに、きちんとしたパーティーって、始めてだ……」
生まれて初めてとの経験とは言え、こんな豪華なパーティーに龍之介自身が混ざっているというのも、不思議な経験だった。
「ねえ、ミカ。ミカなんか、どうせ司会で忙しいんでしょ。ミカが動いたら、私、龍ちゃんの隣に座るね」
「ああ、そう。まあ、私が戻ってくるのはご飯中くらいだろうし。いいわよ」
「美花さん、司会ですか……?」
「そうよ。やっぱり、誰かパーティーの進行をしなきゃいけないじゃない。それに、今回は私のおかげで安く旅行ができるんだから、私が勝手にパーティー進める権利もあるわよね」
「ミカはただの目立ちたがり屋よねぇ」
「いいじゃないの」
「あっ、それで思い出した」
美花の話を聞きながら、龍之介が、突然、大声を出すので、テーブルの全員が一体何事だ、と龍之介を一斉に見返す。
「なによ」
「なんなの、龍ちゃん」
「あっ――いや……、その、大声出すつもりじゃなかったんだけどさ……」
相変わらず突飛な行動だけに、全員の視線が集中して、龍之介はちょっと恥ずかしそうに顔を赤めて、微かにうつむいてしまった。
「いやさ……――美花さんの話で思い出したけどさ――」
「私の話?」
「そう、です……。あの、今回は、ありがとうございました。イーメールとか送ってくれたのも、ちゃんと俺の為に日本語で通訳されてて、俺のやつだけ連絡するのも時間もかかったでしょうし――その、ありがとうございました。それに、格安だったから、俺もマレーシアにこれて…。去年もアイラの所に遊びに行って、それでクリスマスも楽しかったけど、今年もまた旅行できて、嬉しいです。アイラと廉に会うのもすごい久しぶりだから。それに、アイラの家族――ってすごい大勢でビックリだし。でも、これだけ集まったから、すごいなぁ、って驚いてるのと感心してるのと両方です。それで、美花さんに、ありがとうございます、って言うの忘れてまして」
「あらぁ……、龍ちゃんって、ホントいい子ね」
ぐすっと、涙ぐんだような様子で美花が感激し、龍之介の顔に簡単に腕を伸ばしてきて、そのまま龍之介の頬にキスをする。
「いい子ねぇ、龍ちゃんは」
「あの――あの……――」
かあぁ……と、龍之介の顔が一気に赤らいでいき、しどろもどろと、そこからどうすることもできない。
くすくす、とテーブルの皆がおかしそうに笑うので、尚更、龍之介の顔が赤くなってしまった。
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