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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part2-マレーシア編
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その4-02

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「龍ちゃん、今夜はパーティーなのよ。6時に支度できるように、終わらせておきなさいよ」


 相変わらず、偉そうに、命令口調のアイラだったが、そのアイラに慣れているだけに、龍之介はまだ不思議そうに顔をしかめていたが、一応、頷いた。


「それは、大丈夫だけどな……。――でも、数時間もなにするんだ、アイラ?」

「支度するに決まってるじゃない」


 あまりに簡潔に断言されても、龍之介には――その中身が判らない。


「龍ちゃん、女性に関しては、口を挟まない方がいいよ」

「ええ? でも、なんでだ?」

「龍ちゃん、謎は謎のままの方が、後のことを心配しなくていい」

「そうかなぁ?」

「そうなんだ」


 淡々と、全く普段と態度も変わらずの廉だったが、なんだか、やけに悟っているように聞こえてならないのは、龍之介の気のせいなのだろうか。


 そうこうしているうちに、午後のビーチタイムもあっという間に過ぎてしまって、龍之介は、未だに謎なのに、アイラに言いつけられて、4時にはビラに戻ってきていた。


 支度をする前に、またシャワーを浴びなおしてさっぱりし、龍之介はクローゼットにかけていた自分のスーツに手を伸ばしていく。

 ハンガーからスーツを抜き取っても、本人自身があまりに乗り気でないから、スーツなど着たくはない。


 おまけに、常夏なのに、スーツなど着こんだものならば、汗だくになってしまって、きっと、悲惨な状態になることだろう。


「――……暑いのに、俺なんか…こんな格好してさ――。これでも、一応、着飾った――風にはなるのかな?」


 自分のネクタイと鏡との両方を睨めっこしているような龍之介を振り返った廉は、しかめっ面をしたままの龍之介を見て、少し首を倒してみせた。


「スーツだから、大丈夫さ」

「そうかな……。――でも、スーツなんて――滅多に着たことないのにさ……」

「今回はどうしたんだい?」


「仕方ないから、買ってきたんだ。アイラが1着はイチョウラを持って来い、って言うしさ。パーティーにジーンズじゃダメだって――さ」

「まあ、今夜は、一応、パーティーだし」


 廉を振り返った龍之介は、そこに立っている廉を見て、なんだか、はあぁ……と、長い溜め息を吐き出していた。


「どうしたんだい?」

「廉はいいよな。なんか、スーツも着慣れてる感じがするしさ。俺と違って、スーツ着ても、着られてるようには見えないしさ。背も高いから、そうやってるとカッコイイしさ。俺が着ても、なんか、七五三の子供みたいだ」


「そんなことはないと思うけど」

「いいや、あるんだ。いっつも、親戚にも、龍ちゃんはかわいいわね、って言われまくってるしさ。廉みたいに迫力がないんだよ、俺には。やっぱ、背が高くないとな」


 かなり力説している本人なので、廉は深く追求しないことにして、袖口のカフスを留めなおして、廉は仕方なくスーツの上着を取り上げた。


「暑いから、スーツは着たくないんだけどな」

「そうだよな。こんなの着てたら、暑苦しくて、ディナー始まる前に汗だくで死んでるぜ」


 一生懸命ネクタイをしめている龍之介は、はあぁ…と、やるせなさそうに、大きな溜め息をこぼしていた。


「――でも、やっぱり、廉って、スーツ着ても浮いてないんだな。いいなぁ」

「そうかな」

「そうだぜ。いいなぁぁぁ」

「龍ちゃんも、そのスーツ似合ってるよ」

「そうか? 七五三だぜ、俺なんか」

「まあ、そんな風には見えないから、大丈夫だよ。――それより、ネクタイができたら、そろそろ行く時間だ」


「あっ、そっか。ネクタイ締めるのなんて、高校以来だな。堅苦しいのに解放されて、やーっと喜んでたのにさ」

「そうだけど、これから、またその機会は増えるだろう?」

「俺は、冠婚葬祭程度だもんね。獣医にネクタイは必要ないぜっ」


 ビシッと手を前に出してポーズを決める龍之介に、廉がおかしそうに少し笑っていた。


 龍之介の用意が整ったので、二人が部屋から出て行くと、広間にはすでにアイラが着替えを済ませてそこで待っていた。


「男のくせにいつまでかかってるのよ。たかが、スーツの一つや二つ着るのに、そんなに時間がかかるわけ?」


 うんざり、と明らかに示唆しているその口調で、アイラはカウチの背に寄りかかって立っている。


「アイラ――うわっ……すごいな――それ、なんだ――」

「それって、どういう意味なの?」

「え? ――別に、深い意味はないけど。すごいな…なんか――本格的だ――。着飾るって、そんな着飾るのか?なんか、すごいなぁ……。本格的だなぁ」


「龍ちゃんさ、「すごい似合ってる」とか、「きれいだね」くらい言えないの?」

「え? ――いや――その、似合ってるけどさ――」

「けど、なによ。日本男児の割に、そこら辺が潔くないのね。龍ちゃん、少しは褒め言葉でも習いなさいよ」

「ええ? ――でも、そんな褒め言葉って言ったってさ――なんかさ――照れくさい…し。そんな、毎回は――言えないよ…」


「なぁに? なんの話?」


 ガチャと自分の部屋のドアを開けて、美花が颯爽と広間に歩いてきて、龍之介の会話に混じってきた。

 それで、ちょっと横を振り返った龍之介の前で、アイラに負けずに、ドレスアップしてきた美花がカツカツと床を鳴らしていく。


「ミカ、そのドレスいいね。やっぱ、ミカだから、白が合うわよねぇ。おまけに、その外見が騙してるモンね」

「色気を感じる女、って言ってよね。アイラのもいいわねぇ。それ、どこで買ったの?」


「クアラルンパよ。ミカに教えてもらった場所に行ってきたんだ。ミカみたいな高級志向じゃないけど、今回はこれでいいのよん」

「いいじゃないの~。悪くないわ」


 ツカツカと広間を横切って、美花がアイラの前まで颯爽と歩いていく。


 そして、アイラの着ているドレスを確認するように、その軽やかな裾をちょっと持ち上げてみる。


「アイラ、あんたなに? ダイエットしてるの? ちょっと痩せすぎじゃないの? これ以上痩せて、どうするのよ。ガリになるわよ、ガリに」

「忙しかったの。これから食べまくるから、いいのよ」


 ふうん、と美花は適当な相槌をしながら、いきなり、ペタペタとアイラの胸を触りだしたのだ。


 それを見ている龍之介が唖然と口を開ける。


「色気じゃ負けないけど、ボディーは負けるわね。うちらの中でも、あんたはピカイチだもんね。ムカつくわ」

「いいじゃん。ミカなんかBimbo に見えないもん。私なんか、何着ても、すぐにBimbo よ」

「今回は見えないわよ。やっぱり、いいじゃない~、このドレス。でも、あんた、痩せてもまだ胸あるの? そこら辺が、更にムカっね」


「別に胸があっても、特にはならないわよ。1サイズ、小さくしたいくらいだわ」

「それは、胸のある女が言う台詞ね。余計にムカっね。でも、今からしっかり支えないと、すぐに垂れるわよ」

「わかってるわよ」


 龍之介は、この会話を聞いて、更にその口が大きく唖然と開いていく。

 なぜ、女通しでペタペタと胸の触り合い――などというようなことをするのだろうか……。


「ちょっと、そこの二人? どう、これ?」


 アイラの横に並んで、腰に手を当てながらミカがポーズを取っていく。


 唖然としたまま口を開けている龍之介の反応はない。



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