その3-03
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今回はスローテンポでお話が進んで行きます。末永くお付き合いください
「ヨロシク、リュウちゃん。アイラから、タクサン、リュウちゃんのこと、キイテルノヨ。アエテ、ウレシイワ」
それを話しながら、アイラの母親がぎゅぅっと龍之介を抱き締めた。
それで、あわあわ……と、動揺しまくっている龍之介など構わず、その笑顔を横にいる廉にも向けていく。
「ソシテ、レンでしょう? レンくん、ってヨブカシラ?」
「廉で構いません」
「そう? ヨロシク。アイラのオカアサンです。アイラのトモダチで、ヨク、キテクレタノね。タノシンデイッテね」
「ありがとうございます」
アイラの母親は龍之介にしたように、廉の腕を引いて、すぐにぎゅぅっと抱き締めていく。
「アイラの友達? へえ。初めまして、かな?」
次から次へと現れるアイラの身内や親戚を前に、次にやってきた若い青年を前に、龍之介はちょっとポカンとしたまま、その顔を上げて見上げる羽目になってしまった。
今まで会った誰よりもその青年は背が高く、細身の体躯で、その背の高さからか、履いているジーンズの足が龍之介の腰辺りに来ているのは、龍之介の気のせいなのだろうか。
「弟のギデオンよ」
「はぁ……よろしく、お願いします……」
「どうも。アイラの日本人の友達なんだろ? 去年も遊んだらしいし」
「ええ、まあ…あの――そうです……」
「それで、こっちがレン? よろしく~」
「初めまして」
気軽にギデオンが手を出してきて、廉も腕を出して出された手を握り返した。
二人を興味深そうに見下ろしているギデオンは、にこっと、そこで笑ってみせる。
少し癖のかかった黒髪が無造作に耳にかかっていて、見上げている龍之介の目に映ってくるその瞳の色は――グレイがかった鈍い青色――だったのだろうか。
「本当に……外人の兄弟だ……」
それを呟いてしまった龍之介は、はっと、我に返り、大慌てでパッと自分の口を手で塞ぐようにした。
その龍之介を見て、ギデオンが大笑いしだす。
「リュウちゃんだろ? あんたさ、おもしろいな」
肩まで揺らして大笑いするギデオンに、龍之介はまだ手で口を押さえたままだ。
「ギデオン、やめなさいよ。龍ちゃんは、生粋の日本人なんだから。外人の団体が襲ってきて、反応が遅れてるのよ」
ひどい言われようだったが、まさにその通りなので、龍之介も答えるに答えることができない。
アイラが背の高い弟の肩に腕を乗せるようにして、くすっと笑いながら龍之介に向き直った。
「ギデオンが一番Mumに似てるのよ。それに、一人だけヒョロヒョロと大きくなるしね。Mumのおじいちゃんとかが、背が高かったんだって。それで、ギデオンはそっちの血を引いてるのよ。兄弟でも、ギデオンが一番外人っぽいかも」
「そう、なんだ……――。でも……弟さん、身長、何センチ……? ――すごい、背が高いんだなぁ……」
「そうねぇ――いくらくらいかしら」
「ああ――センチで言ったら――188cmくらいかなぁ」
「そんなに?! ――すごいなぁ……」
「そうか? でも、俺の周りにもこれくらいは結構いるけどなぁ」
「そうなんだ。いいなぁ……。俺と、20cm近くも違うし……。――いいなぁ……」
「でも、日本人は、あんまり高くないだろ?――こっちのレンはちょっと違うみたいだけどな」
「そうだな。レンは日本人でも背が高い方だから。――184~5は……あるよな、レン」
「そうだね、たぶん。正確に測ったことはないけど」
「ふうん。だったら、カイリと同じくらいじゃん」
「カイリ……さん? ――えーと……確か、アイラの一番上のお兄さんだっけ?」
「そう。ジェイドはカイリよりちょっと高いだろ? 俺はここまで伸びて、家族の中で一番背が高いわけ」
「そうなんだ。アイラも背が高いから……すごいなぁ……」
「ああ、Mumの家系だろうな。ヒョロヒョロ背が高いの、いっぱいいるんだって」
「そうなんだ。いいなぁ、そういうのってさ……」
「ねえね、龍ちゃん。こっちが私のパパね」
「よろしく」
「あっ、よろしくお願いします」
アイラが嬉しそうに連れて来た男性は、明るい髪の色をした男性で、アイラよりも少し背が高く、ポロシャツにジーンズとラフな格好をしているのに、それが返ってアイラの父親の趣に似合っていて、龍之介はそこでまた驚いていたのだった。
「アイラが世話になったね。ありがとう――って言うのは、間違ってたかな?」
「いいえ、そんなことはありません。初めまして」
硬直している龍之介に助け舟を出すように、廉がアイラの父親と話を進めていく。
「ああ、初めまして。君がレン? アイラがたくさん食べただろう? ――ああ、そうじゃなくて――アイラが、ごちそうになったね。日本にいる時に、いつもご飯を食べさせてもらったと、ヤスキが話しててね」
「いつもじゃないわよ」
「まあ、見解の違い、とも言うけど」
ぷぅと、アイラが膨れてみせて、廉を軽く睨め付けていた。
くすくすと、笑っているアイラの母親が自分の夫の腕を組むようにして、
「さっ、ツギノアイサツよ」
「そうだね」
「ソレジャア、アトデね」
ちょっと頭を下げた龍之介の前で、アイラの両親と弟が他の親戚への挨拶に向かっていく。
「なんかさ……――ハンサムな家系……って言うのかなぁ……。――さっき見た双子だって、お母さんがアジア人だけど、二人とも全然アジア人っぽくないしさ。他の従兄弟もさ――外国で言えば、結構、いい男――の部類に入るんだろ?」
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