その3-01
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リゾート地にやって来て二日目。
朝はのんびりのスタートではあったが、朝食が9時までということで、仕方なく、8時半過ぎにはホテルのレストランに向かっていた。
そこでは、すでにアイラの祖父母と兄のジェイドが朝食を済ませて、コーヒーなどで一服している最中だった。
そのテーブルに混じってアイラ達も朝食を食べ始め、朝から食欲旺盛なアイラの皿は山盛りの大盛りである。
「よく……食べるなぁ、アイラ……」
「そうよ。これから、食べまくりよ。何の為に、遥々、マレーシアのリゾート地までやって来たと思ってるのよ。マレーシアは食べ物も色々あるから、食べまくらないと損よ」
そうなのかぁ、とアイラの勢いに気圧されながら、かなり感心している龍之介は、山盛りを食べまくるアイラと、トーストとフルーツ程度しかその皿に乗っていない廉の間に挟まれながら、今日も一日、元気に遊ぶ予定なのである。
「アイラ、親戚が集まってくるから、今日は外出たらダメなのか?」
「そんなことないわよ。別に、龍ちゃんが残って挨拶しなくちゃいけないんじゃないし。でも、一気に集まった方が紹介し易いじゃない? 明日はクリスマスイブのパーティーがあるから、全員集まるけど、パーティーじゃ紹介どころじゃないもんね。龍ちゃんが嫌だったら、残らなくてもいいのよ」
「嫌じゃないぜ。アイラの親戚に会うのも興味あるし。家族にも会ったことないからさ。でもさ――ずっと、部屋にいるのかなぁ、って思って」
「大抵、昼過ぎからやってくるはずだから、それまで遊んでていいわよ。ジェイドの話だと、昼近くからこのレストランの一部だけ貸し切りにしてるらしいし。昼食べる組みとかいれて、ここに着いたグループが、お茶程度はできるようにしてあるんだって」
「そうなんだ」
「なに、どこに行くの?」
「もちろん、海さっ! 常夏の海にやってきたんだから、泳がないとな」
「プールもあるわよ」
「今日は海だぜぃ! プールはいつでも試せるけど、海は昼間とかになるだろ?」
「ふうん。じゃあ、昼近くに戻ってくれば? 昼食べる頃には、ある程度の親戚も集まってるだろうしね」
「そっか。廉はどうする?」
「俺は部屋で休んでるよ」
「泳がないのか?」
「ああ、まだまだこれからいつでも泳げるから、今日は遠慮しておくよ」
「そっか。じゃあ、アイラは?」
「私は昼寝」
「昼寝?」
「昼じゃないけど、朝寝ね、今だったら」
「せっかく……遊びに来たのに、もう、寝るのか?」
「そうね」
はっきりと言われてしまって、はあ……そうですか、と龍之介も言わざるを得ない。
「遊ぶにはねぇ、エネルギーの補給が必要なのよ、龍ちゃん。私はね、忙しかったの。だから、今日は昼寝よ」
「そう、なのか。まあ――ゆっくり休めよ」
「そうね」
そう言うことで、朝食を済ませた3人は部屋に戻り、朝寝するらしいアイラはさっさと自室に消えていく。
そして、廉はカウチでテレビでも見るようだった。
その二人を残して、龍之介は水着に着替えて、いざ、常夏のビーチにまっしぐら。
* * *
「アイラ、昼になるけど、どうする……?」
アイラに言われた通り、昼前に戻ってきた龍之介は、手早くシャワーを終え、さっぱりした様相で出てきて、それで廉と二人で、アイラを起こそうかどうか話し合っていた。
疲れているならそのまま寝かせておいてもいいのだが、親戚が来るそうだし、挨拶にも顔を出さないといけないそうだから、仕方なく、アイラを起こすことにしたのだ。
『……ダブルシフトなのよ――うるさいぃ……』
うるさそうに、龍之介の手を払うアイラは、また、枕に顔を埋め直してしまう。
それで互いに顔を見やった龍之介と廉は、
「……今、何て言ったんだろうな」
「うん、まあ、仕事が掛け持ちだったのかな」
「まあ、忙しいって言ってたし……。――起こさないで寝かしておく?」
「いや、起こした方がいいかも。昼も食べないとお腹空くだろうし」
仕方ない、と今度は廉がアイラの肩を少し揺らしてみた。
うーん――と、嫌そうに唸っているアイラだったが、また肩を揺らされて、それで、仕方なく諦めたように起きることにしたようだった。
はあ……と、大きな伸びをして、気だるそうにアイラが起き上がっていく。
「――ああ、なに? もう昼なの? ああん…まだ寝たいけど、仕方ないわね」
それで、まだ寝ぼけているアイラを伴って、3人はまた朝食を食べたレストランに戻って行ったのだ。
レストランに行くと、やはり、アイラの祖父母が先にそこにやって来ていて、ジュースで一息ついているようだった。
『よう、アイラ』
『ウィル、ミック』
だが、今回はその祖父母の隣に、双子らしき若い青年が座っていたのだ。
アイラが、スタスタと、テーブルに寄っていくと、二人も椅子から立ち上がった。
『久しぶり~』
『久しぶりだな』
アイラが、まず、右端の一人に抱きついていって、その相手もアイラを抱き締め返す。
そしてすぐに、隣のもう一人も抱き締めて、同じような挨拶を済ます。
『なーに、全然、変わってないじゃない』
『それは、アイラも同じだ』
『でも、なんか体重落ちたんじゃないのか?胸が減ってる』
『どこ見てるのよ』
『そう言われてみれば、そうかも』
『どこ見てるのよ』
仲良く抱き締めて挨拶を済ませていたのに、いきなり、アイラがその二人の頭を、ポカッと、殴りつける。
それで、龍之介はあんぐりと口を開けて、そのアイラを見返してしまった。
『お前、相変わらず乱暴』
『そうそう。手が早い』
『うるさいわね』
『ほらほら、他にもお友達がいるのよ。そこら辺にしなさいね』
テーブルの向こうで、くすくすと、笑っているアイラの祖母に嗜められて、アイラの前にいる双子が、ふいっと、龍之介と廉に向き直った。
『アイラの友達?』
『日本人?』
『そうよ』
『へえぇぇ』
双子が興味深そうにその瞳を輝かせて、テーブルを抜けて、二人がゆっくりと歩いてくる。
「アイラの友達?」
「え? ――ああ、そうです」
「俺はウィリアム」
「俺はマイケル」
「うちらは、ウィルとミックって呼んでるのよ」
「それは――初めまして。菊川龍之介です」
「じゃあ、そっちは?」
「藤波廉です」
「「どうも、よろしくっ」」
双子が揃ってそれを口にした。
「叔母さんと叔父さんは?」
「荷物ほどいて、後から来る」
「そう。二人とも元気?」
「元気だよ」
アイラの質問に双子が交互で返答をするので、そのやり取りを見ている龍之介も不思議な気分になってしまう。
一卵性双生児であるのは間違いないのだ。
顔形が似ているだけでなく、背格好もとてもよく似ている二人なのである。
ほんの少しの違いと言えば、ウィリアムと呼ばれた方が少し茶色のくせ毛をしていて、マイケルの方が黒髪だったのだ。
「英語の名前だけど――日本人じゃないんだ、この二人も」
「ウィルとミックのお母さんは、シンガポール人よ。でも、父親がイギリス人のハーフだけど。それで、二人のお父さんが、私のお父さんの弟なのよ」
「へえ、そうなのか…。――日本語……上手なんだなぁ」
「アイラが日本語でケンカ売ってくるから、仕方なく」
「そうそう。アイラに負けてられないし」
なるほど、とつい納得してしまった龍之介である。
「二人が来たなら、ジェイドと部屋交換したの?」
「そう」
「さっき」
きょとんとしてアイラの会話聞いてる龍之介を振り返り、アイラが簡潔に説明を進める。
「ジェイドはNana とPop の部屋だったけど、ここの二人がNana とPop の世話係なのよ。それで、部屋はウィルとミックがNana とPop の所ね。ジェイドは別の部屋割りよ」
「そうなのか。へぇ……」
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