その2-02
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これからもアイラの親族がぞくぞく増えていきます。近況報告とTwitter で、一族の出生地などのお話もしています
あまりにたくさんの質問を一気に出しまくる龍之介に、アイラの祖父母の瞳が、クリクリと、おかしそうに輝いている。
「親戚内は――そうねえ、30人くらいだけど、その親戚のまた親戚がついて来たり、兄弟姉妹が一緒に乗ってきたりするから、60~70人くらいにはなるんじゃない?」
「ええぇ……それはすごいな。そんなにいたんだ。知らなかった……」
そこで、龍之介はふと何かを思いついたようで、それも口に出してみることにした。
「なあ、アイラの家族って、明日に到着するのか? ジェイドさんだけ先に来たんだろ?」
「そうね。昼過ぎと、夜――に着くって聞いてるけど」
「アイラのお父さんとお母さんだけじゃないのか? そう言えば、アイラって、何人兄妹? 家族とか、兄妹の話ってしたことないよな。ずーっと昔、オニイサマがいる――とは耳にしたけどさ」
「龍ちゃんは一人っ子でしょう?」
「そうだよ。アイラは?」
アイラは、そこで、なんだか不思議な笑みを口元に浮かべてみせる。
龍之介は不思議そうに首を傾げていた。
「ジェイドは2番目ね。うちの一番上のオニイサマは、カイリ。私の下に弟のギデオンよ」
「ええ? 4人兄弟なんだ。知らなかったなぁ。それに、アイラだけ女なんだ」
「そうねぇ」
また、アイラがなにか不思議な笑みを口元に浮かべている。
「だったらさ、廉は一人っ子なのか?」
出会ってから、そう言った話題をしていなかっただけに、実は、今の今まで、廉の家族がどういったのか全く知らない龍之介だったのだ。
「俺には、兄がいるよ」
「えぇ?!」
「うそっ!」
二人揃っての反応に、廉はちょっと首を倒してみせる。
「なんで?」
「絶対、一人っ子だと思ってたわ。お兄ちゃんがいるようには見えないじゃない」
「そうだよ。全然、そんな感じに見えないし。気配もないじゃないか」
「そうかな」
「そうだぜ。ええ? 廉にお兄さんがいるなんて、知らなかったな。全然、そんな風には見えないもんな」
「仲悪いの?」
「そんなことはないよ。普通だと思うけど」
「でも、連絡取ってるとこ見たことないわよ」
「ほとんどイーメールが多いから。家にいる時は、たまに電話をしたりするけど」
「それでも、一応、ちゃんと連絡取り合ってるのね。知らなかったわぁ。全然、お兄ちゃんがいるようには見えないもんね」
「俺はそれほど冷たい男じゃないけど」
「でも、絶対、一人っ子だと思ってたわ。マイペースだし、ゴーイングマイウェイじゃない」
「アイラ程じゃないよ」
「なによ」
「兄弟の真ん中なのに、偉そうだな」
「なによ。私はいいのよ」
「アイラは昔から生意気だから」
「なによ」
そこで口を出したジェイドにも、ジロッと、アイラが睨め付ける。
その視線を全く気にしていないジェイドは、隣の祖父母を見やって、
『アイラは一族の中でも生意気だろう?』
賢い祖父母は、ふふ、と笑ったままそれには返答をしない。
それで、アイラの剣呑な目が向けられて、
『なによ、Nana もPop もそうだって思ってたの?ひどいわ』
『そんなこと、ないわよ。アイラは――そうねぇ、元気があるから』
『なによぉ』
くすくす、とアイラの祖父母が笑っていた。
「そうかぁ……、アイラは一族内でも生意気なのか……。――じゃあ、その性格は地なんだな」
「龍ちゃん、何が言いたいのよ。失礼な男ねぇ」
「え? いや――そのな――だた、そう思っただけで――」
「随分、失礼な男じゃないの」
「いや――あの――」
和んだその場の会話が続き、夕食の時間になるまでアイラ達はアイラ達の祖父母の部屋でゆっくりと時間を潰していたのだった。
『カイリ』
受話器の向こうの聞き慣れた声に、カイリはわずらわしそうに自分の髪をかきあげながら、ちょっとベッドの横の時計に目をやった。
『ジェイド。お前、起こすなよ。昨日、徹夜だったんだぜ。それに、明日は飛行機待ちだ。なんだよ、一体』
あからさまな嫌悪をみせて、一気に文句を叩きつけるカイリを気にせず、ジェイドは自室のベッドに座りながら、その視線が、スッと、向こうの方に投げられていた。
『アイラが今日着いた』
『アイラ? ――ああ、今日か。あいつも早く出るって言ってたからな。それで? アイラは?』
さっきまでの嫌悪とは違って、ころっと気分が変わったカイリの口調を聞きながら、ジェイドの視線はまだ遥かかなたの方向を見ているようだった。
『友達を連れて来た』
『友達? ――ああ、そんなことも言ってたな。日本人だろ? 日本の友達だとか』
『そう。男が二人』
一瞬の沈黙が訪れた。
シーンと、受話器の向こうでは、今話された事実をカイリが頭で分析しているのだろう。
『誰だ、そいつら?』
『一人は――問題じゃないけど、もう一人がね』
『そいつは?』
『さあね。でも、どうもね』
ジェイドは、兄弟の中で一番口数が少ない男だった。
いつも、一人で遠巻きから観察するような癖があって、じっくり考えるのもジェイドの傾向だった。
そのせいか、口数が少ない分だけ、ジェイドが見逃すことはないというほど、ほんの些細なことにも、ジェイド一人だけが気付いていることが多かった。
今の返答を聞いて、カイリは少し目を細めながら、ちょっと自分の顎を摘んでいた。
『俺が着くのは明日の夜だな。他の一行も明日、明後日、到着なんだろ』
『そう聞くね』
『だったら、お目付け役はお前がすれよ。俺が着くまでな』
『それは問題ないけどね』
『男が二人ね、二人――』
ふーん、とよく判らない相槌を返しながら、じゃあな、と電話の向こうで受話器が切れて行く。
それを確認して、ジェイドも自分の受話器を戻していた。
開けている窓の向こうでは、まだ、夕焼けの残りが水に反射して、ぼんやりとした明るさを残している。
ジェイドは疲れは感じていなかったが、まだまだ、これから長い休暇を想像して、枕に頭を沈めていった。
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