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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part2-マレーシア編
76/215

その1-03

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「歩くの嫌なのか?」

「こんな暑い中、歩きたくもないわ」

「でも――そんなに遠くないんじゃないのか?」

「でも、歩くなんて嫌よ」

「だったら、どうやって部屋に行くんだ……? ――まさか、おぶって――なんてことはないよな……」

「それ、すごいいい考えかも」


 そして、すぐにアイラの視線が、スッと、横に向けられる。


「俺は嫌です」

「なんで即答?」

「なんで、俺がアイラをおぶらないといけないのかな? こんな暑いのに、アイラまでおぶったら、俺の方がバテるけど」


「いいじゃない。涼しい顔してるんだから」

「顔は関係ありません」

「あるわよ。そんな涼しそうな顔してるんだから、おぶるくらいお手のものでしょう?」

「俺は嫌です」

「ケチ」

「それは、ケチに入らないから」


 ふくれっ面をしてみせるアイラが、クルッと、もう一度、龍之介を振り返る。


「だったら、龍ちゃんは?」

「俺っ? ――え……?! なんで――? ――重いだろ……? それに、暑いだろうし……」

「今、私が()()、とか、そんなくだらないこと言ったのかしら、龍ちゃんは?」

「え? ――いや、そうじゃなくて――その、それはさ――」


 一瞬にして冷たい視線を投げつけられて、しどろもどろの龍之介は、咄嗟に隣の廉に救いを求めてみる。

 その視線を受け取って、はあぁと、廉がわざとらしく溜め息をこぼしてみせる。


「アイラは、全然、変わってないだろ?威張りすぎだし」


 そうだな、と言いかけた龍之介の横で、アイラの冷たい眼差しが、キッと、強まって、言いかけた言葉をモゴモゴと口でごまかしてしまう龍之介。


『アイラはいつも生意気じゃないか』


 聞き慣れた声を聞いて、アイラはクルッと振り返った。

 振り返った先に立っている若い男を認めて、アイラが嬉しそうにタッと駆け出した。


「Jade!」


 ジェイドと呼ばれた若い男の方も腕を伸ばし、駆け寄ってきたアイラを嬉しそうに抱き締める。

 そのまま、アイラをすくい上げるようにして、自分の背の高さまで持ち上げた。


『アイラ。この放蕩娘は家にも、全然、立ち寄らない』

『放蕩娘じゃないじゃない。忙しいのよ。それに、家は遠過ぎるしね』

『また、言い訳だ』


 龍之介の前で何かを言い合っているようだったが、その若い男はアイラを持ち上げたまま少し顔を離し、ちゅと、アイラの頬にキスをした。


『アイラ、痩せ過ぎてるな。きちんと食べていないのか?』

『忙しかったのよ。でも、ここで食べまくるからいいの』


 なんだか、アイラの説明には納得したような顔を見せず、その若い男は少し眉間を寄せて行く。


『ちょっと、いいのよ。これから食べまくるから。眉間にシワよってるわよ』


 アイラはその若い男にぶらさがったまま、人差し指で眉間をツンツン押している。


 若い男はまだ微かに眉間を寄せていたが、その視線を、スッと、静かに龍之介と廉の方に動かした。

 それで、持ち上げているアイラを地面に戻すように、トンと、下ろして行った。


 若い男の視線の先を見て、アイラはふっと笑い、

『私の友達よ。連れて来るって話したでしょう?』

『そうだね』

「こっちが、龍ちゃんね。それから、レンよ」


 アイラが龍之介と廉の方に戻ってきて、あまりに簡潔な紹介を済ませてくれた。


「アイラの友達?」

「え? ――ああ、そうです。あの――初めまして……。よろしく、お願い、します……」


 静かな瞳が、ただ、じぃっと、向けられて、なんだかその迫力負けしてしまったのか、龍之介が大慌てで、ペコッと、頭を下げていた。


「えーっと……菊川龍之介です」

「そう。それで、リュウちゃん」


 その視線が廉に動いていって、それで、廉も自己紹介を済ませることになった。


「藤波廉です」

「そう」

「私のお兄ちゃんよ。ジェイドね」

「ジェイド……さん? ――外人、なの? なんで? それとも、外人の名前だけ? ――でも、顔は――日本人ぽくないかもしれないな…。え? だったら、アイラも外人なの? ――えぇぇ? 外人だったの? なんで?」


 アイラの口元が上がって、笑いを堪えているような顔をしていた。廉には、今にも吹き出しそうなのを堪えているのだろう――としか見えない。


「私はね、クォーターよ」

「クォーター? なんのクォーター?」

「父が日本人のハーフなのよ」

「お父さんがハーフ? ――そうなの? だったら、日本人じゃないの? お母さんは? ――ええ?! だったら、クォーターって何?お父さんがハーフで、お母さんが――? なに?」

「4分の1だよ」


 自問自答しながら大騒ぎし出してしまった龍之介の横で、廉がそれを簡単に説明した。


「4分の1? ――ああ、クォーター――ああ、そうだ。確か、英語でそうやったよな。あっ、そっか。だったら、アイラは外人なのか?」

「でも、日本人の血も混ざってるわよ」

「じゃあ、お母さんは?」

「色々ね」


「色々? どんな色々? 外人なんだろ?」

「まあ、日本人じゃないわね」

「そうなのかぁ……。それは――知らなかったなぁ。――でも、そう言われて見ると、アイラも日本人みたいな顔はしてないかもしれないし――」


 そう言いながら、龍之介は目を凝らすようにしてアイラを観察してしまう。


 今まで、マジマジと、アイラの顔を凝視するなどしたことがなかっただけに、なんとなく、今、初めてその顔を観察すると、彫りの深い顔立ちと言い、その大きな目に高い鼻の感じといい、典型的な日本人の顔かたちではなかったように見受けられた。


 出会った時から、きれいかなぁ…、とそれだけで終わらせてしまっていたので、龍之介も深くは考えなかったのだった。


「外人――っぽいかも」

「でも、アジア人の血が混ざってるから、向こうではアジア人のミックスだってすぐに分かるよ」

「そう――か?でも――知らなかったなぁ……。なんだ、アイラは外人だったのか。知らなかったなぁ…。なんで、教えてくれなかったんだ?」


「普通は気付くと思うけど。龍ちゃんだけじゃないの、全然、気がつかなかったの」

「え? そうなのか? ――廉も気付いてたのか?」


「偉そうだから」

「なによ」

「それに、注文も多いし」

「うるさいわね」


「いや――それは、あるけど」

「なによ、龍ちゃんまで」

「え? いや――あの、違うけどさ――いや、その――まあ――な?」

「なにが、な?よ。な? ――ってなによ」

「いや――その――だけどさ――あのな――まあ――」


 じろっと、睨み付けられて、龍之介は誤魔化す言葉も出てこなく、しどろもどろになってしまう。


「アイラは生意気だからね」


 アイラの横に寄ってきたジェイドが、ポンと、自分の手をアイラの肩に置いて、また龍之介と廉の方に向いた。



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