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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part2-マレーシア編
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その1-01

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新章です。日本を離れ、またまたハチャメチャ、勢いも止まらず!


実はPart2となっていますが、【マレーシア編】時間的に言うと、Part3なのです。Part2には【ニュージーランド編】を考えていましたが、こちらは、短編で旅行記となりそうなので、いつか時間がある時に書きあげるかもしれません

 始まりは、アイラが夕食を済ませてテレビを見ている時だった。

 フラットの電話が鳴り、自分のインターネットに集中しているピートは、全く電話など聞こえない。


 それで、アイラがカウチから立ち上がって、キッチンのカウンターのところに歩いていった。


『もしも~し』

『アイラ、久しぶり』


 その声を聞いて、アイラはほんの一瞬首を傾げ、それで、その顔がその声を思い出したように、パッと、変わる。


『Hey、レン。久しぶり』

『久しぶり』

『そうね。どうしたのよ。こんな地球の果てに電話かけてくるなんて。――今、そっち何時?』

『1日遅れの朝だよ』


 へえ、と相槌を返すアイラは、カウンターの前の小さな丸椅子を引いて、そこに座りなおすようにした。


『それで、なに?わざわざアメリカから電話かけてくるなんて。大した用なんでしょう?』

『ただの日常会話でもしようかと思ったんだけど』

『嘘つきね、相変わらず。わざわざ、そっちからかけてくるんだから、用はなに?』


 相変わらず、要点をスバスバと突きつけてくるアイラは簡潔である。


 それで、電話の向こうの廉も、うん、と言って、次の言葉を出した。


『龍ちゃんが、クリスマスにマレーシアのリゾート地に行くと――』

『そうね』

『割引がきいて安くなるから、クリスマスとお正月をそこで――』

『そうねん』


『アイラの親戚が集まるから、と言う話も聞いていて』

『そうよ。私のおばあちゃまの80歳の誕生日のお祝いもかねてね』

『誕生日はいつ?』

『誕生日は、今年の初めよ。でも、皆で揃ってお祝いする機会がなかったから、クリスマスを兼ねて、そこでお祝いね』

『そうか。いいね』

『そうよぉ』


 その予定を考えるだけでも、アイラの顔が満面の笑みに変わっていく。


『私の知り合いが、予約の手筈とか、全部、任されてるの。それで、ディスカウントがかなりきいて、格安よー』

『へえ、それはいいな』

『そうよ』


『いつ、マレーシアに発つんだ?』

『一応、全員集合はクリスマスイブまでだから、その間に島に到着すればいいのよ。でも、私は1~2日早く行って、ちょっと買い物の済ませなくちゃね。せっかくの余暇よ、リゾート地で。買い物があるのよ』

『そうか』


『龍ちゃんの日程はまだ決まってないけど、クアラルンパから一緒に行くことにしてるのよ。龍ちゃんだったら、どうやって島に行くか判らないでしょうから』

『そうか。楽しそうだな』

『そうねぇ、楽しくなるわよ』

『本当だ。でも、龍ちゃんは誘うのに、俺は誘ってくれないんだ』


 それを聞いて、はた、とアイラの会話が止まる。


『実家に帰ればいいじゃない』

『そうだね』

『去年だって帰ってないじゃない』

『そうだね』


『両親とか会ってないんでしょう?』

『そうだね』

『だったら、実家に帰りなさいよ』

『それ、龍ちゃんにもそう言った?』

『龍ちゃんには、格安のチケットがあるわよ、って言っただけよ。そうしたら、龍ちゃんも来たい、ってね』


 ふうん、と電話の向こうでそんな素っ気無い返答がされる。


 アイラは少し片眉を上げて、

『家族でクリスマスくらい過ごせば?』

『そうだね。でも、俺の両親は今はイギリスだから、アメリカには来るのかどうか』


 むーっと、アイラがなんだかその口を尖らせて行く。


『なによ。だったら、イギリスに自分から会いに行けばいいじゃない』

『そうだね』


 またその淡々とした返答が返ってくる。

 アイラは口を尖らせたまま、カウンターの上に肘までつき出していた。


『なんで、わざわざマレーシアにまで来るわけ?』

『楽しそうだな。いいな、リゾート地なのか』


 へえぇ、とわざとらしいその返答を聞いて、アイラの口がへの字に曲がっていく。


『こんなに親しくなった仲なのに、龍ちゃんだけは誘うけど、俺は誘ってくれないんだ』

『なによ。両親のトコに帰ればいいじゃない』

『そうだね』


 んーと、アイラは顔をしかめたまま溜め息をついていた。


『マレーシアで遊びたい?リゾート地よ』

『いいね』

『だったら、宿泊代から遊び代も、全部、含めて今月末までに払わないとダメなのよ』


『そうか。だったら、その詳細をイーメールで送ってくれないか?』

『本当に来るの?実家はどうしたのよ』

『どうして、俺だけは遊んだらダメなんだ?』

『そんなこと言ってないじゃない』


『だったら、なんで?』

『親不孝者ね』

『でも、電話の挨拶くらいはできるから』


 アイラはそこで完全に閉口していた。


『ミカに直接支払わないといけないのよ』

『ミカって誰?』

『私の従姉よ。ミカが全部の手続きとか予約とか済ませるから』


『クレジットカードじゃダメかな』

『カードで大丈夫よ。全員が全員、そんな一気に支払えないじゃない』

『そうだね』


『飛行機のチケットも探して欲しいなら、ミカに頼めばいいわよ。旅行代程は安くならないけど、たぶん、ミカなら簡単に探せるはずだから』

『そうか』

『ねえ、そっちの休みいつなの?』

『アイラはもう休みだろう?夏休みだから』

『そうよ』


『俺の方はどうだろ。たぶん――クリスマス前まではあるだろうけど、大した問題じゃないから。アイラの仕事は?』

『そんなの、ホリデー前までだけよ。マレーシアから帰って来てから、また探すし』

『そうか。だったら、龍ちゃんに聞いて、龍ちゃんの飛行機の到着する近い時間帯にするかな』

『まあ、詳しいことはまだまだ後で決めれるからいいけどね。まだ、十分に時間があるもんね』

『確かに』


 それじゃあ、と話を終えて、二人はその夜の電話を終えていたのだった。





『やあ、久しぶり』


 アイラは後ろから声をかけられて、ちょっと首だけを後ろに回した。


『なんだ、もう着いてたの?』

『そうだね』


 相変わらずその様相が変わらずで、空港の中と言えども、暑くなっているその中で、一人涼しげな顔をして、おまけに長旅の疲れも見せずに澄ました顔でそこに立っている青年を軽く見上げながら、アイラは微かに口端を上げてみせた。


『相変わらず、変わらないのね』

『そうかな』

『そうよ』

『痩せたの?』

『忙しかったのよ。でも、この休暇で食べまくるからいいの』


 ふうん、と曖昧な返事をして、青年はアイラを見下ろしながら、自分のカートをちょっと押して横に並べるようにし、そして、アイラの横の椅子に腰を下ろすようにした。



読んでいただきありがとうございました。

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