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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part1-出会い
71/215

その14-2

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今回はキリがいいので、全部まとめて入れてしまいました。もう事件も解決し、後はエピローグだけとなりました

「相変わらず質問攻めなのね、龍ちゃんは」

「ああ、ごめん。でも、いつ帰るの?どこ?」

「ニュージーランド」

「え? ――ニュージーランドっ?! なんでっ?!」


 素っ頓狂な声を張り上げて、驚いている龍之介の足がそこでピタッと止まった。


 耳元で叫ばれたアイラは、半分顔をしかめて片耳を塞いでしまう。


「龍ちゃん、うるさいわよ。どうして騒がないといけないの」

「あっ、ごめん――でも、なんでニュージーランド?なんで?」

「身内がいないとこが、そこだったの」


「身内? ――身内と仲悪いの?」

「仲はいいわよ」

「だったらなんで? わざわざ、身内がいない場所を探したのか?」

「そうね。仲はいいけど、毎回、毎回、顔を突き合わせてるとうるさいこともあるじゃない」

「それは――まあ、あるかも……しれないけどさ」


 それは、龍之介も十分に理解していることである。龍之介の祖父は尊敬もしてるし、嫌いでもないが、やはり、たまには祖父のいない場所にでも行ってみたくなるというものである。


「それで、もうすぐ学校が始まるから、帰って準備もしなくちゃいけないものね」

「そう……なんだ。ニュージーランドって南半球だろ? すごい遠いな」

「そうね。でも、会おうと思えば会えるから、龍ちゃんも勉強終わったら、遊びにくればいいわ」

「うん、俺も外国に行ってみたいから、行くの考えるけど――」


 アイラにつられて、にこっと笑ってそこまでを口にした龍之介は、あれ?と不思議そうに首を傾げていた。


「どうしたの?」

「うん――あれ? 外国って、柴岬、英語話せるのか?」

「話せるわよ。それじゃないと学校にも行けないじゃない」


「そうだよな。だったら、なんで今、日本にいるんだ?」

「あっちは今夏休み。それで、バイトしに遊びに来たのよ」

「遊びに来た? ――日本に住んでないのか? どこに住んでるんだ? ニュージーランドじゃないよな。身内から逃げて行ったんだし」


「逃げてないわよ。ただ、身内がいない場所を探しただけ。実家は――まあ、色々ね」

「色々? なに、それ?」

「まあ、色々よ」


 へえぇ、とよく判らない相槌を返した龍之介は、またすぐに次の質問を口にする。


「いつ帰るんだ?」

「今月末か、来月――でもいいかな」

「学校いつ始まるんだ?」

「来月末よ。だから、少しは時間があるから、日本で遊んで帰ってもいいんだけどね。ヤスキには貸しがあるから」


「あの人――払ってくれるの?」

「払わせるからいいのよ」

「また、払わせるだ」


 そこを指摘する廉を睨め付けて、アイラはなぜか知らないがその腕で廉を向こうに押し返すようにした。


「あっち行ってよ。龍ちゃんとお喋りしてるんだから」

「俺も誘われたから」

「私は誘ってないもの」


「どうしてそこまで毛嫌いされるのか、すごい不思議なんだけど」

「毛嫌いじゃなくて、胡散臭い男は相手にしてないのよ」

「まあ、いいじゃないか。廉だって祈願して試験に備えたいだろうしさ」


 おかしそうに笑いながら、龍之介が廉とアイラの間に入ってくるようにした。


「大体ね、貧乏学生から金を取るような男が悪いのよ」

「俺は一度も取ってないし、毎回、払わされているけどな」

「当たり前じゃない。なんの為にバイトしてると思ってるのよ。遊び代は私が払うんじゃないの」


「柴岬ってそんなに金に困ってるのか? 親は出してくれないのか?」

「親はとても親切なことに学費を払ってくれてわ。でも、日本の学生と違って、こっちはね、生活がかかってるのよ」


「生活? なんで?」

「日本のねお子さまはお気楽でしょうけど、私はね、これでも自活しないといけないの。生活がかかってるのよ、わかる、龍ちゃん?」


「え? 生活? 本当に、生活?」

「そうよ」

「なんで? 高校生のうちから、自活しないといけないのか?」


 アイラはその質問に、ちょっと瞳を細めていく。


「なに?」

「龍ちゃん、私はね、大学生よ」

「えっ?」


「龍ちゃんより年上よ。一つだけどね」

「え? ――えぇぇぇっ?! 大学生っ?! 柴岬がっ! なんで?」


 きーん、と耳鳴りがして、アイラはまたも顔をしかめて耳を押さえるようにした。


「なんでっ? 大学生? 年上っ? ――あれ? でもそれって――ええ? でも――それって――だったら、年サバよんで、学園に入ってきたのか?おまけに、制服まで着て。――それは、サギだろ。マズイぜ、そんなこと――」


 キッ、と明らかに冷たいアイラの視線が龍之介に向けられる。


「年サバよんでた? たかが一つくらい年上で、サバよんでた? よく言ってくれるじゃない、龍ちゃん」

「え? でも――だって、制服まで着て――それって、危ないぜ……」


「誰が好き好んであんな制服を着たと思ってるのよ。仕事だから、仕方なく着たのよ。おまけに、高校まで入る羽目になって」

「だって――でも、それって――やっぱり、いけないと……俺は、思うぜ。サギだよ――」


 ジロッとアイラに睨み付けられて、龍之介の語尾が小さく消えて行った。


「いや、その……――あの――」


 ふしゅぅ、としぼんでしまった龍之介はそこから言葉が続かない。


「たかが一つの年の差で、そこまで大袈裟にすることないじゃない。差別なんて低俗ね、龍ちゃん」

「ごめん…差別、したんじゃなくて――ただ、ちょっと驚いて――その……なんていうか、柴岬が……」


「その“柴岬”って言う呼び方もやめてよね。アイラ、でいいわ。“柴岬”なんて呼ばれたことないの」

「でも――」

「アイラ、でいいのよ、龍ちゃん」


 しっかりと念を押されて言い聞かされた龍之介は、一応、頷いてはみたももの、そんな簡単に名前を呼べるような性格でもない。


「私の住んでる場所はニュージーランド。家族は、まあ、色々散ってるわ。帰ったら、日本で言う大学3年に突入ね。日本にはバイトで遊びに来たの。知り合いがいるから。これで説明になったでしょう?もう、一々、驚かないでよ」


「うん、ごめん……」

「まあ、龍ちゃんは素直だから、いいけどね。それより、あそこで並ばないとダメなんでしょう?」


 朝早くに出かけてきた3人だったが、目先では既に長い行列になっている団体が長く続いていた。


「混んでるのねぇ」

「初詣だから、しょうがないよ」

「そう。祈願する時、お金も入れるんでしょう?」


「うん、そう。でも、柴岬の分は俺が出してやるな。生活かかってるからさ、やっぱり」

「本当? やっぱり、龍ちゃんはいい子よねぇ。そういうところ、大好きよ」

「え? ――それは、違うけど……」


 気軽にアイラに腕を組まれた龍之介は、かぁ、と頬を赤らめてしどろもどろ。


「じゃあ、俺も君に寄付したら、腕組み?」

「いくら?」


 ちょっと目を細めて考えているアイラに、廉は首を倒してみせて、

「昼ご飯とデザート、かな」

「仕方ないわね」


 商談成立したようで、アイラは反対の腕で廉の腕を引いて気軽に腕を組んでいく。


「ねえ、晩ご飯は? 今日は仕事ないの」

「……柴岬って……、大胆なんだ……な」

「大胆? なにが?」

「いや――そうじゃなくて、豪快……? ――かな」


「あのね、龍ちゃん、世の中には私程度の女なんか5万といるのよ。今からしっかり学んで、いい女を捉まえるのよ。この程度で怯んでたら、男が(すた)るじゃない」

「そう、かな……」

「そうよ」


「でも、要求の多いのは、絶対に違うと思うけど」

「晩ご飯はどうしたのよ」

「ちゃんとおごってあげるから、文句言わないの」

「おごるんなら、そっちこそ、一々、文句言わないでよね」

「でも、お礼の一つも聞きたいものだけど」


 アイラの瞳が不敵に輝いて、組んでる腕の横で、アイラが廉を覗き込むようにした。


「レンちゃん~、おいしいご飯が食べたいのぉ。なにしろ生活かかってるからバイト料もふっとんじゃうし。アイラ、コキ使われて、これでも体重落ちちゃったぁ。だからね、お・い・し・いご飯~。たくさん食べさせてくれたら、大好きぃ、って言うから」


 コロッと態度の変わったアイラに、龍之介はポカンと口を開けてしまった。


 そして、アイラがちょっとだけ背伸びをして、ちゅっ、と廉の頬にキスを落とす。


「――仕方がない」

「ほらね? 男なんて、こんなものよ」


 ケロッとまたその態度が変わって、龍之介は更に唖然とする。


 廉がその龍之介をちらっと見やって、

「龍ちゃん、この手の見本はね、滅多にいるものじゃないんだ。だから、それをお手本として彼女を探す必要はないよ」

「え? ――でも――うん……わかった――けど――でも、その……」


 戸惑う龍之介の腕をしっかりと組み直し、

「さあ、張り切ってお参りしましょうっ。やることやって、受験を勝ち抜くんでしょう、龍ちゃん? やっぱり、やらねば――よ」


 アイラの勢いに引っ張られて、その両腕にいる龍之介と廉は軽く駆け出していた。



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