その2-02
* * *
リリン、と携帯が鳴って、廉は座っていたソファーから立ち上がって、キッチンのカウンターの上の携帯を取り上げた。
スクリーンの表示は龍ちゃんからで、廉は携帯電話の蓋をパカッと開けた。
「廉です」
「廉? 今、どこにいるんだ? 午後からいなくなっただろ? またサボったのか?」
またと言われるほどサボった記憶はないのだが、そこら辺を指摘はしないで、廉は少しだけ奥の部屋に視線を向けていた。
「家に戻って来てるんだ」
「家? なんで? 具合悪いのか? 昼からずっといなかっただろ? 廉の荷物だってまだあるのに。それで、電話したんだ」
「そうか。荷物は――仕方ないかな。ちょっと用事ができて」
「用事?なんの? 授業サボるほどの用事? それで、今は家なのか? なんで?」
止まりをみせない質問攻撃に、くすっと、つい廉も笑ってしまって、
「龍ちゃん、質問ばかりで、答える暇がないんだけど」
「え? ――あっ、ごめん。なんで、今、家なの?」
「ちょっと用事があってね」
「だったら、荷物どうする? カバンごと教室に置いておくわけにもいかないだろ?」
「そうだね。でも、ロッカーの中にでも入れておいてくれればいいんだ」
「でも、宿題どうするんだ? 明日の用意だってできないだろ? なんだったら、俺が持って帰ってやるよ」
「ああ、それは面倒だからいいよ」
「いいって、いいって。それに、英語の問題で教えてもらいたいのもあるしさ。一石二鳥、ってね。授業終わったから、今から廉の家に寄ってもいいかな?」
「どうぞ」
「だったら、カバンも一緒に持ってくな。――ああ、大曽根と井柳院も一緒にくるってさ。暇だから」
「まあ、誰でも大歓迎だよ」
諦めたように言われた言葉だったが、まったくひるむ様子もなく、電話の向こうの龍之介は元気に返事を返す。
「じゃあな。もう学校出てるから、そんなにかからないと思うんだ」
「それじゃあ、待ってるよ」
午後の授業はサボってしまったが、どうやら、放課後は勉強会、になるようだった。