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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part1-出会い
69/215

その13-5

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毎日の更新がヘビーになってきているような…?キリのいいところで、全部を一気にいれてしまいました。ここまで長いエピソードはいつもは小分けしているのですが…

「君達のサポートを受けて、俺も嬉しくて涙が止まらないよ。そんなに、人を悪者扱いしたいようだが、もっと、こう、計画通りに話が進んで良かった――くらいの賞賛はできないのかな?」


「あくどいわよねぇ、この男。将来が破滅するとか、学園の名前が傷つくとかチラホラ挙げて、それでOBがいるから抜け道はあるんだ――とか示唆するし。いかにもサギ師よねぇ」

「でもさ――あれ? 本当に、問題とかもみ消すのか? うちのOBがいるから?それに、うちの学園卒業してたら就職も問題ないのか? それは知らなかったなぁ。だったら、本当にこの学園に来たら将来も決まってるんだ」


 龍之介は今までの話の内容を思い出して、そのある一点を忘れていたらしく、それを思い出した龍之介がもちろんのことそれを質問した。


「うちのOBは、確かに官僚とかが多いようだけど、だからと言って、それで就職が決まるとは言っていないよ。本人の成績が悪ければ、この学園に来たからと言って就職が保障されてるのでもないし」

「要は本人次第だ、と言っているんだな」


 へえ、と龍之介は一応の納得をしていた。


「でも、セコイわよねぇ。口外しないって嘘八百並べて、あの男を騙すんだから」

「俺は一度足りと、警察に話さないと約束した覚えはないけどな。相手もそれを提示しなかったじゃないか。あらゆる可能性を最初に提示しない本人が悪い。――それに、一応ね、誓った通り口外はしないよ。警察に話したり口外するのは、柴岬藍羅ちゃんだから」


 にこやかにそれを向けられて、アイラはちょっと片眉を上げてみせた。


「なによ。協力してやったじゃない。今更、そっちの嘘に私みたいな真面目な人間を巻き込まないでよね。嘘つきなんかと一緒にされたら、私の名前の方が傷つくわ」


 大真面目にそれを言い切って、大曽根は更にシーンと冷たい顔をアイラに返す。


「よく――恥ずかしげもなく、そんなことを断言できるものだなぁ。ある意味で、そっちの方が賞賛ものだ」

「当たり前じゃない。私は法に背いてないもんねぇ。背いてる阿呆は、あの男じゃない」

「そうだね。柴岬藍羅ちゃんが教えてくれなかったら、確かにひどい目には合ってたかも知れなかったなぁ」


「感謝しなさいよ」

「まあ、それは感謝するかな」

「へぇ、随分、素直じゃない」


「その点は、ね。やっぱりさ」

「そうそう。柴岬が怪しくなかったら、きっと俺達の耳にも入ってこなかったからな。――本当に気付かない分だけ、末恐ろしいぜ」


 あの北野が羅列した名前の数だけでもかなりのもので、おまけに、そのうちのどれも、大曽根や井柳院から見ても至極普通の一般生徒ばかりなのである。

 真面目に見える、見えそうな生徒ばかりなのに、その裏では薬に手を染めて、かなりの回数で買い取っているようなのであるから。


「なあ――本当に、あいつらのこと……警察に話すか?」

「龍ちゃんは、俺がああいう輩の仲間になって、問題をもみ消した方がいい――って言ってるのかい?」

「え? そんなこと――そんなこと言ってないよ。全然、言ってないよ」


 大曽根にそれを淡々と指摘されて、龍之介は大慌てで首を振ってみせた。


「理由はどうあれ、非合法だと承知している薬なんかに手を染めて、道から外れた生徒がいるけど、だからと言って、俺は同情しないよ。ストレスが溜まったり、精神状況が不安定になったりするのは、本当に大変なことだと俺も重々承知している。だけど、それだったら、その大変なストレスの中でも真面目に頑張っている生徒はどうするんだい? そっちの真面目な生徒は精神が強かったから良かったじゃないか――と自分の非を正当化されたら、真面目にやってる生徒の方がかわいそうだ、と俺は思うけどね。確かに、追い詰められて、苦しい状況があるかもしれないが、それでも、俺は薬なんかには頼らないよ。一度、逃げ道を作ったら、いつまでも逃げ道を作り続けなければならないからね」


「そうだけど、な……」


 大曽根の言っていることは、本当に正しいことだと龍之介も承知している。


 自分達で間違ったことをしている生徒に同情するつもりもない。――だが、それでも、間違いだと判っていても、自分の弱さに勝てない時もあるのではないだろうか――と龍之介はちょっとだけ思っていた。

 そんな時、逃げ道だろうと、どうしても甘い誘惑に乗ってしまいたくなる――そんな心境も、判らないではなかった。


「龍ちゃん、あんなくだらない男に同情することなんてないわよ。まあ、薬を使ってストレス解消してる生徒は、精神不安定ですみませんでした――って反省するかもしれないけど、平気で身内を叩き落すようなあんなセコイ男が反省して、更正するわけないじゃない。自分だけ助かる手立てがあると判ると同時に、スッパリ、残りの全部を切り落としてるじゃない。セコイだけじゃなく、みみっちいし、くだらないコンプレックスで性格歪んでる男よ。あんな男、警察に突き出されて、少し痛い目に遭えばいいのよ」


 情けも、スッパリ、キッパリ、言い捨てるアイラはまさに、同情の余地無し――としたきつい態度だった。


「そう、かもしれないけどさ……」

「そうよ。誘惑されてそれに負けるのは本人次第だけど、誘惑で釣ろうなんて考えてる男も最低ね。龍ちゃん、あの薬が出回って、どれだけの迷惑がでてるか判ってるの?それ判ってて、あの男も売りさばいてるのよ。そんな男に同情する欠片もないわね。この学園に来て、卒業もせずに大学も行けなくて、ああホント、将来台無しねぇ。アホクサ」


 ああいい気味、とアイラの口調はまさにそれを物語っていた。


 さすがに、これだけきっぱり、スッパリと、同情もなく、哀れもなく、憐れみもなく貶されると、かわいそうかな……――と考えてしまいそうになる龍之介のほうがバカみたいである。


「龍ちゃん、それ食べて、しっかり補充しないさいよ。これからまた塾なんでしょう?龍ちゃんだって受験勉強して、試験も間近でストレス溜まってるのに薬に手出してないでしょう? そういうの、間違ってるって判ってるし、危ないから、って判ってるんじゃない。ここの連中も、一応は、それをわかってるみたいだし」

()()()連中……」


 大曽根も井柳院も、廉並みに情けない扱いを受けているようである。

 大曽根がそれを指摘するが、アイラは全くそれを無視してまた続けていく。


「そういう生徒もいるのに、私が弱かったんですぅ――って泣き付いてくる生徒に同情するなんて、アホよ。完全に間違ってるわね。反省するなら、しっかり反省して、また一からやり直せばいいのよ」

「そう、だけどさ…。それは――判ってるよ。でも、一から――って難しいんじゃないかな…」


「当たり前じゃない。人生なんだと思ってるのよ。何でも簡単にものごとが解決する、って信じ込んでるから、自分の思い通りに事が進まないとパニックするんじゃない。それを学ぶ機会ができて丁度良かったじゃない」

「柴岬って……なんて言うか……考え方がポジティブ――って言うんだろうけど、なんかな……」

「なんか、なによ」


「うーん……。でも、まあ、そうなんだけどさ。柴岬の言う通りだし……。――まあ、だから、すごいかな」

「その自問自答はなんなのよ。おまけに、一人で納得してるし。嫌ねぇ、ジジ臭い」

「いや、まあ、そうなんだけどな…。――まあ、一応、問題も解決したことだし、良かった、良かった。そうだよな」

「まあね」


 だが、大曽根と井柳院には、名前が挙がっている生徒達の対処だけでなく、学園始まって以来のスキャンダルであろう問題が目の前に投げられていて、まだまだ大忙しの二人なのであった。



読んでいただきありがとうございました。

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