その13-4
Happy Valentine!!
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北野はそこまで考えて、慎重に大曽根と井柳院を見返した。
「――もし――問題があったら――些細なことかもしれないし、そうでないかもしれないし――それでも、生徒会の知らぬ間に、生徒の間で問題を起こしたり――したら、生徒会の面子も立たないよな」
「そうだね。全校生徒を管理する――というのが、生徒会の仕事の名目だから」
「それができないと、生徒会が無能――と言われるかもしれないし」
「じゃあ――さ、警察沙汰になる前に、生徒会――とか、学園が問題をもみ消しにする――とか、まあ、世間に知られる前に、対処する――とか、は必要になるよな?」
「そうだね。時と場合によりけりだけど」
「じゃあ――さ、もし、俺が――この話をしたら――警察沙汰にはならないかもしれないし――」
意味深な北野の口調に、大曽根と井柳院の興味が引かれたようだった。
「それは?」
「俺が話したことは――絶対に口外しないと約束してもらおうか。俺は――ただ、知ってるだけだから」
「それが――今、警察がこの学園に関わっている問題――に関係あるのかな?」
大曽根が慎重な面持ちで、それを確認する。
北野はちょっとだけ口端を上げて、
「そうかもな。生徒会が知ったら――転地がひっくり返るほど、驚くかもな」
「警察沙汰になる前に、学園で対処できる――かもしれない、と北野君は言っているようだけど?」
「そうだな。だから、俺が話したとは絶対に口外しないなら、俺も、俺の知ってることを生徒会に話せるんだけど」
大曽根はその場で少し考えるような顔をみせ、そして、後ろの井柳院にもその顔を向けてみた。
「まあ、大事があるなら――さっさと片付けるのが先決だと思うけど」
淡々とした、現実的で実務的な返答は、はまさに井柳院らしいものだった。
ふーむ、と大曽根は顎を摘むようにして、
「じゃあ――北野君は、知っていることを全部俺達に話してくれるのかな?」
「俺が話したと口外しないって誓ってもらうかな」
いきなり、立場が逆転したように、偉そうにそれを言いつけてきた北野に、大曽根はそれを気にした様子もなく、素直に頷いた。
「誓ってもいいよ。君が話したという事実は決して口外しない」
「いいだろう。だったら、仕方がないから話してやるよ。生徒会なんか、今、この学園で一体何が起こってるかなんて、本当に何も知らないんだぜ。警察沙汰になる前に対処するなら、早くやらないと、まずいかもなぁ。なにしろ、学園始まって以来のスキャンダルだろうし」
「そうか。――そんなひどい状態になっているのか……」
「それは――困りものだな」
「そうだろ」
井柳院は大曽根の後ろから前に出てきて、大曽根の隣の椅子に腰を下ろすようにした。
「わざわざ話してくれるようで、生徒会としても助かるよ」
「まあ、この学園の名前に傷がついたら、大変だろうしな」
突然に、話題の中心として注目されて、にやっと、北野がいたく満足げに笑った。
「まずは、まあ3年から行った方がいいな。やっぱり受験でストレスも溜まってるだろうし――精神不安定――っていうのは、つらいだろうから」
「そうか。では、頼むかな」
「3年で問題になりそうなのは、3年B組の横内で、E組の有沢――」
「ちょっと待ってくれないかな。俺は大体の生徒の顔は見覚えがあるけど、名前と顔が一致しなくてね」
「ああ、それなら、ここに卒業アルバムがあるな。3年生なら、まずアルバムからで大丈夫だろう」
なんともタイミング良く、井柳院がテーブルについている引き出しを開けて、中から卒業アルバムを取り出すようにした。
パタン、とそれを北野側に開いて見せるようし、またきちんと座りなおしていく。
「ああ、これならいいな。では、北野君、続きを」
二人に促されて、北野は疑いもなくそのアルバムを覗き込んでいた――
* * *
「サッギー!」
「そうだよ。大嘘つきもいいところだよ」
アイラと龍之介の二人が同時にそれを口に出していた。
北野が生徒会室を去ると、そこに座っている大曽根と井柳院の元に、龍之介とアイラと廉が戻ってきた。
執務室として使用されるには華美で――まったく実用性のないその室内は、生徒会室の応接間として使用されている部屋なのだ。そのすぐ後ろの部屋に、実際の生徒会室の執務室があったのだ。
北野が来ている間、その執務室で隠れていた3人は、もちろんのこと、初めから最後までの北野の話を全部聞いていた。
全て筒抜け状態である。
「君達ね、その言い様はないだろう」
「サギよね、この男。口から嘘八百――どころじゃないじゃない。この慣れようは、毎回、嘘ついてるわね。やっぱり、胡散臭いと思ってたのよね」
「いやぁ、大曽根もよく平気な顔して、あんなでたらめをペラペラ喋れるよな。全く、あの口調が疑わしくないところが、サギだよな。警察なんか、どこにも来てないよな」
「そうよね」
「そうだよな」
リキの入った二人は、互いに、ねえ?と息の合ったまま同意しながら、全くその会話をやめる様子はない。
廉は一人静かに座りながら、アイラに言いつけられた紅茶を出して、自分もそれを一人優雅にすすっていた。
テーブルの上には、龍之介が昼間に買ってきたデザートの残りが出されていて、ストンと椅子に腰を下ろしたアイラが、早速そのデザートの菓子パンに手を伸ばしていた。
「なにが、口外はしないと誓うよ――よねぇ。警察に突き出す癖して」
「大サギ師だ」
アイラと龍之介の二人から、まだそれを言われるので、大曽根はシーンと冷たい顔を二人に向けた。
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