その13-3
ブックマーク・評価★・感想・レビューなどなど応援いただければ励みになります!どうぞよろしくお願いいたします。
「――他の――生徒とかも、警察が話をしてるのかな?」
北野は特別興味がある様子を極力見せず、なんとなく話を繋げるような素振りで、それを切り出してみた。
「まあ、それは仕方がないだろうね。いくら、精神状態が不安定だと言っても、非合法のモノに手を出した結果は、判りきっているものだ。その非は、きちんと処罰されなければならないだろうね。――本当に、そんなことで、この学園にまで入ってきたのに――なんとも、無駄なことをする。将来も目茶目茶じゃないか――」
その最後の一言は、大曽根の独り言のようだった。
警察が話をしているだけではなく、生徒――何人なのだろうか――をすでに逮捕――したのだろうか。事情聴取――だけなのかもしれないが、まさか、そいつらの中から北野の名前が挙げられたのではないだろうし―――
ゴクッ――と北野は乾いた口の中で、自分の唾を飲み込んでいた。
「北野君も、明日、警察が学園にやって来た場合、わざわざ時間を取らせることになるだろうけど、関係がないと警察に説明すれば、それで済むだろうから。本当に、受験を控えて、こんなことに巻き込まれるなんて、煩わしい以外のなにものでもないね。そんなに時間はかからないと思うから」
「――俺の――名前が?」
「いや、でも北野君は見覚えがないから、何かの間違いだろう?きっと受験を前にストレス解消にでも――といたずら気分だったのさ」
「そう――だな……」
「明日は、他の生徒にも迷惑になるだろうから、下の応接間で警察と話をすることになると思うんだ。授業の合間に抜けるのもなんだから、数人ずつまとめて、応接間の隣の待合室で時間ごとに集まるように先生から支持を受けているから、明日、悪いんだけど、登校してきたら、もう一度、生徒会室に来てくれないかな?井柳院が時間割――のようなものを作るから」
「時間ごと――って、そんなに、いるの――かな?」
焦って聞き返しそうになった北野は、ハッと、自分のペースを取り戻すように、また素っ気無く質問を口に出した。
大曽根はちょっと困ったように眉間を寄せて、
「まあ――仕方ないね。受験のストレスだろうと、くだらないモノに手を染める方が間違っている。見つからなければいい、と高を括っていたのだろうが、実際にバレてしまった時の結果を全く考慮していなんだから、何ともバカげているのさ。この学園を卒業して、大学に進めば、その将来はほとんど約束されたも同然なのに。それをチャラにするなんて、本当にくだらないな」
「確かに。見つからないと高を括る前に、バレた時の対処をあらかじめ予測しておけば、どうにでも言い逃れなど簡単にできたものを。誰も知らない――と思ってる奴らほど、全部筒抜けだ――ということが判らないなんて」
「一時の記の迷いなら、警察が動く前に俺に一言でも話してくれれば、まだ――助かる方法とてあっただろうに。こんな問題は、なにも今に始まったことじゃない」
「前にもあったの――か?」
咄嗟に聞き返した北野は、揃って振り返った大曽根と井柳院の両方の視線を受けて、すぐに素っ気無い素振りをしてみせる。
「この学園に――有名なのに、事件とかあったのかな――と思って」
「まあ、進学校だろうと、問題はある所にはあるものだから」
「そう。他校でも、問題がある学校はあるしな。問題があるからと言って、それを上手く対処しない所だと、警察がやってくる――なんてことが起きる。まあ、今回はこの学園が問題対処に入る前に警察に見つかったようだが」
「運が悪かったのか、どうか」
なんとも皮肉げに、二人をそれを言うので、北野は慎重に二人を見返しながら、また質問を口に出す。
「――じゃあ、前にも問題があったのかな?」
「まあ」
「――学園が対処する――って、もみ消した――とか?」
「そういうこともあるけど――それだけが方法じゃないだろう?」
「それだけじゃない? ――どんな?」
それで、大曽根と井柳院がちょっと互いに見合って、
「この学園のOBはかなり政府関係の仕事に携わっているだろう?」
東大、京大――などなど、超進学校で大学進学率とて95%以上を占めているのだから、その後の就職先が官僚関係とて驚くほどのものではない。
「この学園に寄付される寄付金とて、ここのOBが大半だ。将来ある、優秀で有能な世代を作る為――にと。この学園に来た以上、その名を汚さず、そしてこれからの次代を作っていくのには、この学園の運営が滞りなくされなくてはならない」
「そう。超進学校だけに、ストレスや精神不安定で離脱する生徒は、今に始まったことじゃない。だから、ここに残っている生徒はかなり保護されていることになる。就職一つにしても、OBのバックアップがあるから、大学卒業後はかなりの上のポジションにつくことも可能になってくる。その名に傷がつくのはまずいだろう?」
「そんな重要な役割を果たしている学園だけに、些細な問題ごときで怖気づいてなどいられないさ。警察関係にも、この学園出身のOBがたくさんいる。いざとなれば、ちょっと口を利いてもらえばいいだけのこと」
二人の話を聞きながら、北野はなにかを真剣に考えていた。二人の話が本当ならば――本当以外にあり得ないが――寄付金とて膨大な額が寄付されているのは、ある程度、周知の事実である。
官僚やら警察関係やら、あらゆる重要機関の大事ある地位を占めているのも、たぶんほとんどがこの学園出身のものだろう。
そうなると、問題が暴露して学園の恥になるのは――この大曽根や井柳院にとっても思わしくないはずである。
なにしろ、エリートコースまっしぐらを突進する二人の生徒会の時代に、この学園でのスキャンダル――など暴露されれば、この二人の力量をも問われるかもしれない。
読んでいただきありがとうございました。
一番下に、『小説家になろう勝手にランキング』のランキングタグをいれてみました。クリックしていただけたら、嬉しいです。