その13-1
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やっぱり やらねば(続) https://novel18.syosetu.com/n7288hj/ (18歳以上)
「北野君、忙しいところを時間をとらせてしまって申し訳ない」
大曽根は本当に真摯な様子で、ちょっと済まなそうな表情をみせた。
「いや――」
生徒会室の入り口に立って、北野と呼ばれる生徒は、なんとなくその次の動きも定かではなく、それで、そこで立ち止まっている。
「どうぞ、椅子に掛けて。今日はちょっとした確認があって、ここに来てもらっただけだから。そんなに時間はかからないと思うし」
さっきから、随分、友好的な笑みをみせている大曽根が、手前の長椅子を指差すようにした。
北野は、チラッと、生徒会室の室内を一視して前に足を進めていく。
生徒会室に呼ばれた理由が今ひとつ判らず、だからと言って、うしろめたいことが全くないでもない北野は、最初は多少の警戒も混じって、仕方なく生徒会室にやってきた。北野も他の生徒同様、この学園に進学して以来、一度も生徒会室に出入りしたことがない。
勧められた長椅子にゆっくりと腰を下ろしていく間も、ちらっと、周りに置かれている家具などにその視線が投げられていた。
応接用なのか、大曽根が座っている椅子と、北野が座っている椅子の間にテーブルが置かれていて、周囲には西洋風の家具や棚が並べられている。どう見ても、生徒会の運営をする執務室には到底見えないものである。
そんなことを考えながら、ちら、ちら、と室内を観察していた北野の視線が戻ってきて、テーブルを挟んで座っている大曽根の視線とぶつかった。
それを確認して、大曽根がちょっと笑んでみせ、
「今なら勉強で忙しいだろう?悪かったね、忙しいのに呼び立てして」
「いや、別に、それくらいは――」
3年間、同じ学園にいるのだから、大曽根の顔くらいは北野も見知っている。
おまけに、相手はこの学園の生徒会会長を務めているものだから、その顔を知らない生徒がいる方がおかしいと言うもの。
この超エリート高の中でも優等生ばかりが集まると噂されている生徒会の会長にまでなって、教師達からの信頼も厚く、同じ学園にいながら北野のような普通の生徒とはほとんどその接点が交差しない一人だった。
「今日はちょっとした確認をしたくてね。だから、そんなに長くはかからないと思うんだ」
なんだか随分と人懐っこい笑みをみせて、生徒会長とまでなっているのにその態度が偉そうではなく、北野も初めて間近で話をすることになったが、なんだが、表紙抜けしてしまっていた。
「話を長くするのもなんだだから――単刀直入に聞こうと思うんだが、ダメかな?」
「いや、別に――」
話の内容も、質問される内容も知らないのだから、ダメも、嫌もあったものじゃないだろう。それで、北野は一応相槌だけを返していた。
じゃあ、と大曽根がまずそれを切り出して、
「最近、あまり良くない噂が構内で出回っているようなんだ。それで、そう言った事実があるのかどうかきちんと判断される前に、学園に警察がやってきてね」
「警察?!」
「そう」
大曽根は隠すこともなく素直に頷いた。
だが、北野は咄嗟に、なぜ警察が学園にやって来たのか――どこでバレたのか――考えを素早くめぐらせていた。北野は自慢するのではないが、慎重すぎるほど慎重に事を進めてきたのである。バレるはずはないのだ。
「それで、北野君にも聞きたいことがあって」
「俺に? ――何かな? 警察が聞きたいことなんか、俺には見当もつかないな……」
北野の頭の中では、証拠も握られていないはずであるので、大曽根の前で誤魔化してここを乗り切るしかない――と即座に判断されていた。
「そう? それなら、俺も心配する必要はないから、一安心だ」
にこやかな笑みが崩れず、それでいて大曽根は安堵したように肩を下ろしている。
「なんでも、危ない薬のようなものがこの学園内で売りさばかれている――というようなことを警察側が言ってきているんだ。――こんなことは…、あまり大きな声で話し合えるようなものではないから、この会話が終わったら、この話の内容は――忘れてくれると――いいんだけど?」
要は、大人しく口を閉じて黙っていろ――と言いたいのだろう。そういう噂が上がっただけでも、学園の恥であるのは間違いないのである。
「それは――構わないけど……」
「そう。それは、良かった」
「でも、なんで俺が――ここに呼ばれて――」
「そのことは本当に済まないと思っている。――何人かが、リストに乗っているらしくて――。俺は、うちの学園内の生徒がそんなことをするとは思えない、と話したんだが、警察側も調べがあるらしくて、中々、手を引いてくれないものでね。それで、俺が確認してから――という条件を出したんだ。俺は生徒を管理する必要があるから、そんな噂が出ていたなら、俺の耳にも入ってきただろうし――。そんな覚えもないものだから、突然、警察がやってきても、なんだかすぐには信用できなくてね」
「はあ……」
読んでいただきありがとうございました。