その12-4
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大曽根が端的に質問している間、アイラは次のクラス写真をめくって、また個人写真を見比べている。
大曽根は、うーん、とちょっとだけ顎をつまむようにして、
「だったら――柴岬藍羅ちゃんに取り引きを伸ばしてもらおうと思ったけど、それは却下のようだから、やっぱりここに呼ぶしかないかな」
「なに? 訊問するわけ?」
「さあね。それは状況によりけりだし」
ふうん、とアイラは全く興味のなさそうな返事だけをする。
「ああ――これよ、これ」
2~3クラスも行かないうちに、アイラが一つの写真を指して、アルバムごとテーブルに置き直した。
それで、大曽根と井柳院が少し覗き込むようにしてその指差した場所を確認する。
「北野友和、か」
「知ってるの?」
「3年も一緒にいれば、ある程度の顔は覚えてるさ。彼一人だけ?」
「さあね。この学園で挙がってきたのはこの男だけだけど、他にもいるんなら、それは知らないわよ」
「誰から受け取ってる――も知らないの?」
「それは、渋谷の方ね。そっちもたくさんあるらしいから、別に一つを潰しても全部が消えるんじゃないでしょうけど」
「そんなにたくさん?」
「そうらしいわね」
ゲロゲロ――と大曽根と井柳院の顔が明らかにそれを物語っていた。一人を捕まえても、分散された場所から取り引きしてる生徒がいれば、更なる調査が必要となる。
「他の学校の調査はどうしたのよ」
「調査中だよ」
「へえ。その調査を持ちかけた相手も問題だとは考えなかったわけ?」
それを指摘されて、大曽根は少しだけ嫌そうな顔をしてみせた。
「その可能性も――ないとは言い切れないけど、まあ仕方がない。相手側が問題で、白を切られても、俺にはその判断の仕様がない。それに、俺が頼んだ内容も、俺自身が調べまわっていると示唆する内容でもないから、俺には問題がない。他校の問題は他校のものだからね。相手側が問題でも、情報を回してきた場合は、警察にそれをやってもいいし、うちの学園と繋がってるなら、警察に手渡した時点で、他校の繋がりも見つけるだろうから、それも俺には問題はない。どちらにしても、俺達にはさほどの損はない」
全て計算済みだ、とでも言っているような口調にアイラが皮肉げに口を曲げていた。
井柳院が大曽根とアイラの二人の会話中に、スッとアルバムをテーブルから取り上げて、身軽に立ち上がりながら、後ろの棚にしまい直していた。
「引き際なんだろうけど、放課後、興味あるなら、君にも特別立ち聞きを許してあげるよ」
「へえ、それは随分寛大で」
「まあね。言っただろう?俺はちゃんと協力する、って。だから、もらった分は返さないと。これでイーブン、ね」
「イーブンには程遠いわね」
「昼もおごってもらってるだろ?」
「それはサービスの一つでしょう。今回はデザートついてるんでしょうね」
恥ずかしげもなく、おまけに、またも偉そうにそれを催促してくるアイラである。
大曽根は少し口をへの字に曲げながら、
「それも、龍ちゃん次第だろうね。龍ちゃんのパワーで買えない時は、買えるデザートもなし。でもね、せっかく昼までおごってもらってるのに、どうも、「ありがとう」という素直な態度が見られないんだが、なんでかな?」
「まだその中身を見てないじゃない。物もなしに、「ありがとう」なんて言うわけないじゃない。生徒会なんて、いかにも胡散臭いんだから」
変な理屈を叩きつけられて、大曽根の口は更にへの字口。
そこに、コンコン――とドアがノックされて、井柳院がまた椅子から立ち上がった。
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