その12-3
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「用は何なのよ」
生徒会室に入ってくるなり、冷たい顔をしてそれをつっけんどんに言いつけてくるアイラに、大曽根はまずにこやかな笑みを浮かべ、
「やあ、柴岬藍羅ちゃん。久しぶり」
「二日前に会ってるじゃない。用は何なのよ」
「まあ、まずは椅子に掛けて。今日は皆で楽しくランチの日、だし」
しらー、と冷たい反応を返すアイラに、大曽根はまだにこやかな笑みを崩さず、続けていく。
「龍ちゃんと藤波が昼の買出し係なんだ。二人が戻ってくる前に、俺達もちょっといけない話をしないかな、と思って」
「うわぁ、なんだかドキドキしちゃうわ。生徒会長と副会長が相手だしぃ」
アイラの皮肉をモノともしないで、大曽根はにこやかなままその手を上げて、アイラに座るように指示した。
それで、アイラが仕方なく大曽根の前の椅子に腰を下ろしていった。
「昨日、何かあったらしいけど、その話は、まあ龍ちゃんが戻ってきてからでもできるんで、まずは――こっちが先だよね」
そう言って、大曽根がアイラの前のテーブルになにかの分厚い本のようなものを差し出した。
「それ何?」
「今年の卒業アルバムだ。藤波の話だと、君の相手は3年らしいから。それなら、卒業写真を見たら簡単に確認できるだろうし」
「確認してどうするのよ。警察も動いているのよ」
「警察が動いてる部分は警察の仕事だろうから、俺達も介入はしないさ。それに、学園内で起こっている問題は、まず、学園内で調べてみないことには。俺はその結果次第で、警察に協力するのも押しまないが?」
「そうなの? 生徒会だけで口止めするのかと思ったけど」
「ああ、そういう動き方もあるだろうけど、俺は共犯者にはなるつもりはないし。学園内で起きている問題であろうと、犯罪であれば警察に任せるのが一番だろうし、それで学園が大騒ぎになったとしても、仕方がないことだ。騒ぎをもみ消すのは学園側の問題で、俺のじゃない。俺は生徒会を仕切ってる手前、どのくらいの問題が学園内で広がっているか把握する必要があるだけだから」
学園の手前、事件や問題を先に調べ上げてもみ消しにするのだと考えていたアイラだったが、生徒会であっても、そこら辺の道徳観念は普通であるようだし、まあ、プライドのありそうな大曽根や井柳院が問題を知りながら黙ってその問題自体を放っておくほうがおかしいというもの。
アイラはブレザーの内ポケットから自分の財布を取り出し、中から1枚の名詞を取り出した。
「私は手を引くから、警察に連絡したいなら使えばいいわ」
大曽根はその名詞を取り上げて、中に書かれている名前を呼んでいく。
「引き際が早いようだけど、それは、昨日と関係がある?柴岬藍羅ちゃんには、もう少し、取り引きを引き伸ばしてもらおうと考えてたんだけどな」
「私もそれは考えたけど、今が引き際ね。後はそっちが勝手にすればいいわ」
「となると、藤波君は1週間もしないで降格?」
「そうね」
「随分、早い降格で。頼りないなぁ」
大曽根は自分の内ポケットにもらった名刺をスッと中に入れていった。
「昨日、何があった?」
大園の横で井柳院がただ淡々とアイラを眺めている。
「ちょっとね。そのど真ん中に龍ちゃんが現れて、コテンパにしてくれたし」
「へえ……。それは――見物だったかも」
「龍ちゃんがあんなに強いなんて知らなかったわ。まあ、全部、投げ飛ばしちゃうしね」
「菊川家はその先祖をたどると、大名お抱えつきの古武道の師範の一族だ。剣技を教え、戦術の鍛錬を教え――ていうやつらしいが」
へえぇ、とアイラが興味深そうにその瞳を輝かせて聞いていた。
「それより、まずはそのアルバムに目を通せよ。菊川が戻ってくるだろうから」
世間話もいいが、さっさと問題に入れ、と井柳院の口調が端的に言っている。
アイラは嫌そうにその井柳院を睨め付けるが、仕方なくテーブルの上のアルバムを取り上げた。
「最初はあまり役に立たないから、10ページほど飛ばした方がいいね。そこから、クラスの個人写真になる」
「ああ、そう」
大した気乗りしない返事をして、アイラは大曾根に言われた通り10ページほどを飛ばして、3年A組と記された場所から、そのアルバムを開けて見始めた。
「昨日の事件は、騒ぎになっていないようだけど」
アイラがアルバムの写真を確認している前で、大曽根がそれを尋ねた。
「そうね。警察が押さえてるみたいだし」
「それで、引き際?」
「そうね」
「藤波も?」
「そうね」
「二人揃って――狙われたのか?」
「そうね。どうやら、顔が割れてるようだから」
読んでいただきありがとうございました。
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