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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part1-出会い
56/215

その10-4

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「――っふざけんなよ。いい気になりやがって――」


 どうやら、投げ飛ばされても向かっていく元気はまだあるようである。


 スッ、と廉が動いて、素早くその転がっている男の顔を片腕で囲い上げた。


「――うあっ――!」


 いきなり首を引っ張られてガンジ固めにされた男は、無理矢理、首を引き抜こうと大慌てであがき出す。

 グッ、と廉の脇下の辺りでしっかりと羽交い絞めされている男の顔が、苦痛で歪みだしていた。


「組んで襲えば怖いものなしだとイキがっている奴らに限って、一人で戦うことになると、その自信過剰もすっかりなくなってしまうものだが」


 グッ、とさらにきつく絞められて、男が白目を向いて廉の腕の中でへたれてしまった。

 情けもなく、廉がその男をポイッと投げ捨てる。


「龍ちゃんなら手伝いはいらないと思うけど、うるさいのは一応片付けておいた方がいいだろうから」


 龍之介の迫力に押されて廉とアイラには背を向けていた男達の一人を、廉がまた腕を伸ばして羽交い絞めにする。


「ちょっと、そこで押さえててよ」


 少しだけ後ろを向いた廉の前で、アイラがその瞳に不敵な輝きを浮かべてゆっくりと廉の前に歩いてきた。


「随分、したい放題やってくれたじゃない。私に手を出すなんて、100年早いのよ。うちのオニイサマが何て言ってるか知ってる?」


 不気味なほどの薄い微笑を口元にみせていくアイラは、その冴え冴えとした冷たい目で男を見下ろし、

「容赦せずに蹴り飛ばせ、よ」


 それを言い終えるや否や、アイラの足が躊躇いもなく真っ直ぐに目的の一点を思いっきり蹴り上げた。


「@#%★※!▲*?!※□□□□―――」


 悲鳴にならない呻き声が吐き出され、廉の腕の中の男は白目をあげるどころか、口から泡まで吹き出して、グタン――と失神してしまった。


 同情をみせる気は毛頭ないが、それでも、その痛さの極限は、想像しなくても予想ができる。


「ああ、これは回復不可能だな」

「当たり前じゃない。こんなクソ共なんかに回復させてやるほうが間違ってるわ」


 ああスッキリ――とでも言いたげなアイラは、パンパンと埃を払い、わずらわしそうにその髪の毛をかきあげた。


「龍ちゃんも終わったみたいじゃない。やるわね、龍ちゃん」


 サッと辺りを見渡したアイラの前では、龍之介にこてんぱにやられた男達が苦痛の唸りを上げて転がっていた。


 はあはあっ――と肩で呼吸をしている龍之介は、全員が動けない様子を見取って、その転がってる男たちを跨ぐようにして、アイラと廉の所に駆け寄ってきた。


「大丈夫か?」

「そうね。龍ちゃんって、見かけによらず強いのね。感心しちゃった。すごいわね」

「俺は――まあ、腹が立って―――」

「まあ、その気持ちは十分に判るわよ。この程度じゃ、本当は許されないんだけど」


 それで、龍之介はちょっと後ろを見やって、その顔を複雑そうにしかめていく。


「――俺は――こういうこと、やっちゃいけないんだけど……」

「なんで?」

「俺は有段者だから……暴れるのは――故意にやったことにさせられるから……」


「ああ、そんなこと気にしなくても大丈夫よ。女を襲って、バカ放題しまくりのこんなクズ共、同情するほうがおかしいわ」

「でも……」

「気にすることないわよ」


 そう言ったアイラは、サッと制服から自分の携帯を取り上げて、手早くその番号を押していく。


「ちょっと、襲われたわ。――叫ばないでよ。全部、片付けたから、早く現場に来て欲しいんだけど。他のおまわりさんとか来てうるさくなる前に、片付けてよね」


 それだけを言いつけ、そして、端的にここの場所を説明して、アイラは簡単に電話を切ってしまった。


「――誰に、電話したんだ?」

「知り合いよ。ここにいてヤバイなら、トンズラしていいわよ。後は私が処理しとくから」

「柴岬が? なんで? 一人でなんて、危ないよ」


「龍ちゃんが全部片付けてくれたじゃない」

「でも、すぐに気がつくだろうぜ」

「だったら、まとめて縛り付けるしかないけど、縄もないものね。あいつらのバットで見張ってるしかないかしら」


 ヒクリ――と微かに龍之介の顔が引きつりをみせたが、アイラはそんなことおかまいなしに一人の男が握っていた金属バットを取り上げた。


 片方の手で持って、ポンポン、と反対の手に打ち付けているその様子――というか雰囲気が、かなりアブナイ感じが受けるのは龍之介の気のせいなのだろうか。


「柴岬、それ、どうするんだ?」

「決まってるじゃない」


 またも、全くの躊躇もなく、アイラはその金属バットを真っ直ぐ振り落とすようにして、すぐ足元に転がっている男に向かって一撃をかました。


「――うぐぁっ――!」


 腕と腹を抱えていたはずの男は、大声を張り上げて、今度は体を丸めるようにしてその場で激しく揺れていた。


「……柴岬……――それは――やめた方が――」

「ああ、龍ちゃん、今は止めないほうがいいよ。立派なオニイサマが、ああ育て上げたらしいから。――今は、関わらない方が賢明だ」


「立派な――オニイサマ? ――柴岬の?それで――あれ……――あんなに――ああ…、痛いのに……」

「身から出た錆だよ。これで、しばらく当分はこんなくだらないことをしようなど思わないだろう」

「そういう――問題じゃ……」


 ないだろう? ――とかなり顔を引きつらせている龍之介は、バットを片手にそこに立っているアイラを見やりながら、かなり強張った顔をしたままだった。



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