その9-03
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「アイラちゃん」
靖樹の事務所を出てきて、家に帰りがてらのアイラと廉の後ろから声がかかって、二人が振り返ると佐々木がそこに立っていた。
「簡単に諦めるとは思わなかったけど、しつこいのね、佐々木さん。そんなに私が忘れられない?」
からかうような嫌味を言うアイラに、佐々木はくすっと笑って、
「そうなんだ。アイラちゃんは特別だからね。だから――ちょっともう少しだけ話がしたくて。――そこの彼氏もよかったら一緒に」
アイラだけに用があるのではなく、どうやら廉にも用があるらしい。
通りを少し歩るき出しながら、帰宅ラッシュの人込みを避けるように、佐々木が横道に逸れていった。
1ブロックも歩かない所で、佐々木が足を止め、電話ボックスに寄りかかるようにした。
それから、ぽつり、ぽつり、とある話をアイラに聞かせ出した。
「カップルを狙うグループがいて―――。ちょっとここ頻繁に、公園内とかで襲ってる事件が相次いでいるんだ。困ったことに…、必ずカップルを標的にして、グループで襲い掛かる残忍な事件が続いているんだ。先週も――あるカップルが襲われてね」
「公園で?」
「そう」
「なんで公園なのよ。デートが公園? そんな所で、イチャつく方もどうかしてるわね」
冷たくそれを言い捨てるアイラに、佐々木はちょっとだけ苦笑を浮かべてみせる。
「そう――だけど、ね。まあ、デート帰りなのか、公園にちょっと立ち寄って行く――みたいなケースが多いんだけど――」
「まさか、子供が行くような一般的な公園なんかじゃないんでしょう。――なに? 公園がデートスポットなわけ? ラブホテルがある割に、そんなチンケな所でイチャつくなんてねぇ。ポルノじゃあるまいし、見せびらかして興奮する、って言うの?」
更に鋭く突っ込まれて、佐々木は渋い表情を浮かべてしまう。
「いや……、まあ――人それぞれだからね、それは。ただ――そう言ったカップルが狙われる事件が相次いでいるんだ。たぶん、手口から見ても、同一犯人の仕業だと思っているんだけどね。かなりの広範囲の場所を荒らしているようで、狙われたカップルの所持品とかも事件後に盗まれている」
「それで?」
「それで――今までのパターンから、警察側もある程度の場所をマークしているんだ。それで、婦人警官を立たせて、事件が起こりそうな公園に潜入させる予定にもなっている。その捜査が今夜にもあってね」
その話を聞き終わり、アイラが無表情に佐々木を見返す。
「―――それで? そんな極秘情報を話すくらいだから、まだ裏があるわよねぇ、佐々木さん? まさか、私に囮になれって言ってるんじゃないわよね。こっちの彼氏に昇格した男と」
「そう。アイラちゃんは勘がいいし、機転も早いから、誤魔化してもすぐに見破られるだろうし。それで、正直に話すことにしたんだ。アイラちゃんに囮になって欲しいんだ」
「俺の出番は予定されてなかったようですけど?」
黙って話を聞いていた廉がそこで口を挟んだ。
「うん、そうだね。アイラちゃんのことは知っているけど、君のことは今日まで知らなかったものだから。本来なら、うちの刑事の一人をアイラちゃんの彼氏に当てて、囮捜査をしなければならないだろうと思ってたんだ」
「なぜ、彼女なんですか?」
「それは、アイラちゃんが特別だから」
読んでいただきありがとうございました。
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やっぱり やらねば(続) https://novel18.syosetu.com/n7288hj/ (18歳以上)
別作品で、異世界転生物語も書いています。どうぞよろしくお願いいたします。
奮闘記などと呼ばない https://novel18.syosetu.com/n6082hj/