その9-02
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ふうん、とまだ笑んでいるような顔をしている佐々木は、手前のカウチを廉に勧めるようにちょっと手を振ってみせる。
「立っているのもなんだから、どうぞ。汚い場所で悪いね」
「汚くて悪かったな」
カウチを勧められて、廉はアイラの隣に静かに腰を下ろしだした。
「君はなんて言うのかな?」
「あなたは?」
質問を質問で返されて、佐々木はなんだかおかしそうな笑みを浮かべる。
「俺は、佐々木と言います。一応、警視庁の刑事です」
「そうですか。では、こちらの人は?」
「彼は――」
「俺は柴岬靖樹。アイラの身内ね」
「ああ、知り合いのバイトと言う」
「そう。君はアイラの彼氏?こんなのと付き合うなんて、大変だろ?全く手に負えないもんな」
「ヤスキ、うるさいわよ」
アイラの身内と言う靖樹は冷たいアイラを簡単に無視して、カウチの方にやってきて、佐々木の隣にドカッと腰を下ろしていく。
「バイトさせてやってるのに、うるさいわ、偉そうだわ。俺も手を焼いてるんだよな」
「バイトしてやってるの間違いでしょうが。大したことないとか言いながら、随分、コキ使ってくれるじゃない。倍額だからね。それ以下にしてみなさいよ。カイリに言いつけるわよ」
靖樹がグッと怯んで、あからさまに嫌そうに顔をしかめていく。
「お前、雇ってやってるのに、感謝はないのか?」
「働いてやってるのに、感謝がないじゃない」
靖樹が更に嫌そうに顔をしかめた。そして、ふいっと廉に向いて、
「こんなの相手にしてたら、疲れるだろ?全く、どんな育て方したのか、こいつの兄貴が全部悪い」
「お兄さんいるの?」
「いるぜ。それもタチの悪いのが。妹が可愛いのは判るが、まあ、変に育て上げたせいで、こいつは生意気だし、偉そうだし、手に負えない」
「うるさいわね。自分のことを棚に上げて、よく言ってくれるじゃない?」
「なあ?判るだろ、俺の言ってることが」
「うるさいわね。自分だって、ミカに頭が上がらないくせに、なによ」
それで、靖樹が嫌そうにアイラを睨め付けて、長い溜め息をこぼしていた。
「まあ、この二人はいつもこんな感じだから、君も気にしないで」
そこに座っている佐々木刑事は、一人、にこやかに廉に話しかけてきた。
「それより――君がアイラちゃんの彼氏なの?今日から――ってことは、この事情に関わってきたのかな?」
「関わってませんが」
「そうかな? さっきのあの袋を見ても、全く訝しんでいるようには見えなかったんだけどな」
「ああ、これはいっつもそうなのよ。変に動じないし、顔の作りが変わらないの」
「また、これ扱いだ」
一応、廉をかばっているのだろうが、それでも、廉はきちんとそれを指摘する。
「君達、仲がいいんだね。本当に彼氏と彼女みたいだ」
「誰が?」
即効で否定するアイラに、それを無視している廉である。
その二人を見て、佐々木がくすっと笑った。
「見掛け倒しじゃなくてカップルに見えるなんて――いいなぁ。青春だな」
「おい、やめろよ。どうせまた、これは使える、とか考えてるんだろうが。これ以上、こいつを変なことに使うなよ。こいつの兄貴に何言われるか判ったものじゃない」
「そんなつもりはないんだが」
「だが、なんだよ? お前は、その袋でも持って、さっさと退散しろよ」
「せっかく遊びに来てあげてるのに、ひどい扱いだな」
「お前の遊び――は、いつも必ず裏に何かあるんでな」
「ひどいな」
「だから、さっさと帰れ」
「ひどいな」
佐々木は、傷ついたような顔をみせてその手を胸に当てて見せた。だが、靖樹は全くの無視状態だった。
読んでいただきありがとうございました。
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やっぱり やらねば(続) https://novel18.syosetu.com/n7288hj/ (18歳以上)
別作品で、異世界転生物語も書いています。どうぞよろしくお願いいたします。
奮闘記などと呼ばない https://novel18.syosetu.com/n6082hj/