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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part1-出会い
47/215

その9-02

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 ふうん、とまだ笑んでいるような顔をしている佐々木は、手前のカウチを廉に勧めるようにちょっと手を振ってみせる。


「立っているのもなんだから、どうぞ。汚い場所で悪いね」

「汚くて悪かったな」


 カウチを勧められて、廉はアイラの隣に静かに腰を下ろしだした。


「君はなんて言うのかな?」

「あなたは?」


 質問を質問で返されて、佐々木はなんだかおかしそうな笑みを浮かべる。


「俺は、佐々木と言います。一応、警視庁の刑事です」

「そうですか。では、こちらの人は?」

「彼は――」


「俺は柴岬靖樹(やすき)。アイラの身内ね」

「ああ、知り合いのバイトと言う」

「そう。君はアイラの彼氏?こんなのと付き合うなんて、大変だろ?全く手に負えないもんな」

「ヤスキ、うるさいわよ」


 アイラの身内と言う靖樹は冷たいアイラを簡単に無視して、カウチの方にやってきて、佐々木の隣にドカッと腰を下ろしていく。


「バイトさせてやってるのに、うるさいわ、偉そうだわ。俺も手を焼いてるんだよな」

「バイトしてやってるの間違いでしょうが。大したことないとか言いながら、随分、コキ使ってくれるじゃない。倍額だからね。それ以下にしてみなさいよ。カイリに言いつけるわよ」


 靖樹がグッと怯んで、あからさまに嫌そうに顔をしかめていく。


「お前、雇ってやってるのに、感謝はないのか?」

「働いてやってるのに、感謝がないじゃない」


 靖樹が更に嫌そうに顔をしかめた。そして、ふいっと廉に向いて、


「こんなの相手にしてたら、疲れるだろ?全く、どんな育て方したのか、こいつの兄貴が全部悪い」

「お兄さんいるの?」

「いるぜ。それもタチの悪いのが。妹が可愛いのは判るが、まあ、変に育て上げたせいで、こいつは生意気だし、偉そうだし、手に負えない」


「うるさいわね。自分のことを棚に上げて、よく言ってくれるじゃない?」

「なあ?判るだろ、俺の言ってることが」

「うるさいわね。自分だって、ミカに頭が上がらないくせに、なによ」


 それで、靖樹が嫌そうにアイラを睨め付けて、長い溜め息をこぼしていた。


「まあ、この二人はいつもこんな感じだから、君も気にしないで」


 そこに座っている佐々木刑事は、一人、にこやかに廉に話しかけてきた。


「それより――君がアイラちゃんの彼氏なの?今日から――ってことは、この事情に関わってきたのかな?」

「関わってませんが」

「そうかな? さっきのあの袋を見ても、全く訝しんでいるようには見えなかったんだけどな」

「ああ、これはいっつもそうなのよ。変に動じないし、顔の作りが変わらないの」

「また、()()扱いだ」


 一応、廉をかばっているのだろうが、それでも、廉はきちんとそれを指摘する。


「君達、仲がいいんだね。本当に彼氏と彼女みたいだ」

「誰が?」


 即効で否定するアイラに、それを無視している廉である。


 その二人を見て、佐々木がくすっと笑った。


「見掛け倒しじゃなくてカップルに見えるなんて――いいなぁ。青春だな」

「おい、やめろよ。どうせまた、これは使える、とか考えてるんだろうが。これ以上、こいつを変なことに使うなよ。こいつの兄貴に何言われるか判ったものじゃない」


「そんなつもりはないんだが」

「だが、なんだよ? お前は、その袋でも持って、さっさと退散しろよ」

「せっかく遊びに来てあげてるのに、ひどい扱いだな」

「お前の遊び――は、いつも必ず裏に何かあるんでな」


「ひどいな」

「だから、さっさと帰れ」

「ひどいな」


 佐々木は、傷ついたような顔をみせてその手を胸に当てて見せた。だが、靖樹は全くの無視状態だった。




読んでいただきありがとうございました。


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大人になってもはちゃめちゃ恋愛物語『やっぱりやらねば(続)』は大人の恋愛編です。
やっぱりやらねば(続)(18歳以上)

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