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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part1-出会い
44/215

その8-04

「――表彰並みだ」

「そっちもね。中々、やるじゃない」

「それは、どうも」


 無表情に変わったアイラが淡々と口を開き、廉も淡々と少しだけ走り去って行った向こうの方を眺めている。


「虫唾が走るわ、あの男。欲求不満が溜まり過ぎね。ああ、気色悪いったらっ」


 忌々しげに手に持っている袋を自分のブレザーの内ポケットに入れるようにして、アイラは行き場のないその鬱憤に、腹立たしげにあっちを睨み返す。


「今日から彼氏だ」

「その方が取り引きしやすいのよ。次の分までまだ時間があるから。――よく判ったのね」

「なんとなく、ね」


「龍ちゃんは?」

「食堂だよ。大曽根と井柳院が席を取ってるはずだから。迎えに来た途中だったんだ。――丁度いい時だったみたいだな」

「そうね」


 それで廉がアイラに向き直った。


「それは認めるんだ」

「その為に取り引きを早まらせたのよ」

「じゃあ、迎えに来る途中だった?」

「そうね」


「なるほど。――こんなに頻繁だとは、思いもよらなかったな」

「かなり、使い込んでるのがいるんじゃない? 超進学校で、受験も間近だかもの、ストレスも溜まっているでしょうよ」

「そうかもしれないな」


 行こう、と廉が促して、二人は静かに歩き出した。


「それ――どうするの?」

「知り合いに渡すだけよ。そっちが警察と知り合いだから」

「中身の結果はどうするんだ?」

「知りたいなら、そう伝えておくわ」

「たぶん、大曽根が知りたいだろうから」


「取り引き分は後で返すわ」

「返ってくるんだ」

「一応はね。私の仕事に首を突っ込んでくる方が間違ってるけど、取り引き分は別よ。払わせるから、いいのよ」


「あの誘いは乗らない方がいい」

「乗る気もないけど、どうかしらね。状況次第だわ」

「今日から彼氏なのに、彼氏の言うことも聞かないんだ」

「彼氏らしく振る舞うのね」


 廉は歩きながら横を向いて、隣で澄ましているアイラを見やる。


「彼女らしく振る舞わないの?」

「私はいいのよ」

「どうして?全然、彼女に見えないだろ」

「十分に見えるじゃない。こんな可愛い彼女をもらえて、幸運に思うべきよね。尻に敷かれるタイプになってるから、それでいいのよ」


 廉は無言でまた前を向き直り、

「だったら、デートはないの?」

「ないわよ」

「どうして?」

「デートする気がないから」


「そう簡単にすっぱりと断られたのは初めてだな」

「女には、困ってなさそうな感じよね。遊び慣れしてるわ」

「してないけどね」

「してるわ。だから、そういう男とは付き合わないの。チョロチョロするし」


「君は俺のことを全く知らないのに、随分、俺の性格を決め付けてるんだな」

「そうかしら?」

「そうだよ」


 アイラはその瞳をいたずらっぽく輝かせて、スッと廉の腕を組むようにした。


「レンちゃん、お腹空いたぁ。金欠なの、今日ぉ」


 これには、さすがの廉も、しらーっとその冷めた目をアイラに向けずにはいられなかった。


「本当に表彰ものだな」

「トロフィーじゃなくて、お昼ご飯ね」


 よろしく、と妖しげに微笑えで、アイラは廉の腕にぶらさがったままだった。




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