その8-02
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「そいつ――誰だよ」
校舎裏の建物の後ろで、入り組んだ建物側に身を隠しているような一人の男子生徒が低い声で言い放った。
その視線が周囲を警戒して、あちこちと動いている。
「私の……彼氏。――足りなくて……」
アイラはちょっとだけ横を向くような感じで立っていたが、ギュッと廉のブレザーの袖を握り締めるようにする。
「一人で来るはずだ。なんだよっ。そういう手筈じゃないのか」
「わかってるっ。――でも、一緒に使って……。だって、勉強大変だって……」
思いっきり顔をしかめてアイラを睨み返したような男子生徒は未だに周囲を警戒したように伺っている。
「……やっぱり、やめよう……」
廉が顔を曇らせて、アイラと同じようにアイラの袖口を掴んで、ちょっと引っ張るようにした。
「やっぱり……やめよう。誰かに――見られたら……」
「でも……必要だって――」
「必要だけどっ――でも、やっぱり…」
それで、廉までもその怯えたような瞳をさ迷わせて周囲を伺ってみせた。
「もう切れて……我慢、できないって――。だから…」
「でも――……やっぱり、やめよう……」
今にもアイラを引っ張って、その場を去って行きそうな廉を慎重に見返しながら、その男子生徒が少しだけに前に出てくるようにした。
「あんたもやってるのか?」
廉は少しだけその男子生徒を見返したが、眉間を寄せたまま何も言わない。
それで、目の前の生徒の口元が少し歪んでいく。
「欲しいんだろ?」
廉は何も言わなかったが、その切羽詰った様子を見ていれば、一目瞭然である。
「だから――買いたいの。持ってる……って言ったじゃない」
「言ったけどなぁ――」
「ねえ、早くして。誰かに見られたら――」
「この時間帯なら、誰もここには来ないぜ。だから、この場所にしたんだからな」
「でも――。お願い…早く、ちょうだい…。切れて――」
「我慢できないか?」
アイラは唇をちょっと噛んで、何も言わない。
それで、更にその生徒の口元が歪んでいく。
「取り引きは一人だけだ、って話だっただろ?」
「そうだけど――でも……」
「別に売らないとは言ってないぜ」
「本当っ!」
「ああ、でも、値段は倍だけど」
「そんなっ――。3万って言ったじゃない。だから、それ以外は持ってきてないもの…」
「だったら、今日は諦めるんだな。お金が揃ったら、また取り引きしてやるよ」
「でも――」
泣きそうな顔をしてアイラは廉を見返してしまう。おまけに、どうしよう……と焦っているのは間違いない。
「俺は――1万もないけど……。でも――明日、持って来るから――」
「お願い……」
「どうしようかなぁ」
焦って懇願してくる二人を見返しながら、生徒はその口を歪めて随分楽しいそうである。
読んでいただきありがとうございました。
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やっぱり やらねば(続) https://novel18.syosetu.com/n7288hj/ (18歳以上)
別作品で、異世界転生物語も書いています。どうぞよろしくお願いいたします。
奮闘記などと呼ばない https://novel18.syosetu.com/n6082hj/