その6-03
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「放課後、生徒会室に行くように。学校生活に慣れたかどうか、確認したいそうだ」
授業を終えてさっさと下校する予定のアイラが珍しく呼び止められて、一体何事だろうと、訝ってるアイラに担任がそれを端的に言った。
生徒会が黙ってアイラを見過ごしているはずはないだろうとは予想していたが、以外に早くに生徒会が動き出したようである。
どうせ、噂の出所はあの龍ちゃんであろう。色々な意味で素直な性格は喜ばれるものだが、あの胡散臭い藤波とか言う青年が告げ口したとは考えにくい。
さっさと帰ればいいものを、アイラの仕事が終わるまで全く動く様子もみせなくて、ちゃっかりあそこに座り込んで、アイラが席を外している時は他のホステスに相手をされて、そのホステスと一緒に無理矢理買わされたボトルを半分以上を開けて、ツラッとしているあの態度が怪し過ぎるのである。
冷静沈着なのか、あの動じない態度といい瞳といい、飄々と、いかにも善人を装っている様子が、アイラの“危険信号アンテナ”を更に刺激していた。
出会ったその時から、アンテナが最大限に反応している感じだった。それで、アイラはあの藤波とか言う青年を全く信用していない。
信用していないが、アイラに危害を加えそうにはないところは信用できるようで、それで、かなり遅くなってしまったあの夜、ヤスキの家に帰るのが面倒で、あの藤波とかいう青年のマンションに泊まってしまったのだ。
まあ、親切に部屋を提供してくれた部分は感謝している。一応、出会った時から、アイラの世話をしているようでもあるので、そこら辺は仕方なく、親切だ、と認めている。
なにを思ってあの本人がアイラのことに首を突っ込んでくるのかは知らないが、あの龍ちゃんが気軽にアイラに近寄ってくるので、その警戒のつもりだったのだろうか。
どちらにしても、さっさとフケて退散しようにも、担任を通して生徒会に呼ばれてしまった。ここで無視し続けたら、後々、うるさいことになるかもしれない。
「ああ、面倒ね、まったく。放っておいてよ」
仕方ない。ここは腹をくくって、生徒会に顔を出すしかないようである。
コンコン――と生徒会室前のドアをノックしたアイラは、すぐに中からドアが開けられて、その場に井柳院が立っているのが視界に入る。
鋭利な雰囲気がそのまま出ているような感じの井柳院は、淵なしの眼鏡をかけているが、その黒髪に黒い瞳が、眼鏡のせいで余計にインテリ的な印象を出しているかのようだった。
「これは、どうぞ」
その笑っていないうっすらとした口元が怪し過ぎると思うのはアイラだけではないはずだ。
室内に足を入れると、そこに揃っている面々を見て、アイラの眉間が少しだけ嫌そうに揺れた。
たかが生徒会室なのに、随分、待遇が良いようで、そこに並べてある家具一式とて、そこらの机を並べ合わせたようなものには全く見えない。ビクトリアン風の洒落た洋風の長椅子に、ちゃっかりと座って紅茶をすすっているのは、あの胡散臭い藤波廉本人である。
読んでいただきありがとうございました。
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やっぱり やらねば(続) https://novel18.syosetu.com/n7288hj/ (18歳以上)
別作品で、異世界転生物語も書いています。どうぞよろしくお願いいたします。
奮闘記などと呼ばない https://novel18.syosetu.com/n6082hj/