その5-05
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「君は、化粧を落として毒気が抜かれたけど、それでもサギだからね」
「毒気? ふざけたこと言わないでよ。それに、ジロジロ見ないで」
「見てないよ」
「見てるじゃない」
「ジロジロ、じゃないから」
全くの無表情で、その冷たい眼差しだけが廉に返された。
「あなた、その態度が怪しいわね。超胡散臭いわ。わざとじゃないの?」
「これは、地なもので」
「それに、その丁寧な言葉遣いもわざとよね。ホント、胡散臭すぎるわ」
「これも、地なもので」
アイラの視線がいきなりスッと龍之介に向けられた。
それで、ポカンとしてそのアイラを見返す龍之介に、
「この男、一体、何者なの?」
「何者? ――廉が?なんで?」
「胡散臭いじゃない」
「胡散臭い? 廉が? なんで? 全然、普通じゃん」
「これが?」
あからさまに疑わしげにアイラが廉に向かって指差すので、龍之介も廉を見返してしまった。
「これ扱い」
廉は自分のパンを食べながら、それをこぼす。
「なんで? 廉は普通じゃん」
「これのどこが普通なのよ。高校生のくせに、ボトルの半分は開けるは、あれだけ飲んでて、朝から妙に爽やか空気を振りまいてるし、二日酔いどころか、全然、こたえてないじゃない」
こんなにアイラが喋るのが珍しくて、龍之介は大真面目にその全部が言い終わるまで聞いてしまっていた。
「自分だってかなり飲んでるくせに、全然、こたえてないように見えるのは俺の気のせいかな」
「私はいいのよ」
それだけを言いつけて、アイラがまた龍之介に向き直る。
だが、二人のその会話を聞いていた龍之介は、その表情のままに、不可思議に首を倒していた。
「なんで、二日酔い? 廉が――お酒飲んだの? おまけに、柴岬も? なんで? 二人揃って、飲みに行ったのか?」
「行くわけないでしょう。これと」
「また、これ扱い」
「胡散臭い男は、これ扱いでいいのよ」
「それは、君にも言えることだろう?」
「私はいいのよ」
また、訳の判らない返答である。
だが、それで正気に戻った龍之介は大真面目な顔をして、じぃっとアイラを見ている。
「なに?」
「柴岬さ、やめた方がいいよ」
大真面目にそれを言われて、アイラはきょとんとする。
「柴岬、ああいうの、やめた方がいいよ。薬――だろ? 買ってたの見たんだ。ああいうのは、やめた方がいい。自分の体を大切にするべきだ。あんなのに手つけて一生台無しにしたり、自分の体、大切にしなかったり、そんなことするべきじゃない。薬なんかに手つけて、自分の体ダメにするなんて、やめろよ。あんなの、やめた方がいい」
あまりに真剣に、そして大真面目に龍之介がそれを口にした。
読んでいただきありがとうございました。
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やっぱり やらねば(続) https://novel18.syosetu.com/n7288hj/ (18歳以上)
別作品で、異世界転生物語も書いています。どうぞよろしくお願いいたします。
奮闘記などと呼ばない https://novel18.syosetu.com/n6082hj/