その5-04
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「着替え――どこだったっけ?」
「新宿で下りた所」
「俺のシャツがあるけど?」
アイラはちらっと龍之介を見て、また廉に視線を戻した。
「貸して」
「借りるから、じゃないんだ」
「借りるわ」
微かにアイラの眉間が寄せられ、その口調も忌々しげである。
くすっと笑った廉は、椅子から立ち上がって、スッと歩き出した。
「そこにオレンジジュースがあるよ。龍ちゃんの差し入れのご飯は、あっちで食べよう。ここは狭いから」
それを言い残して、廉が自分の部屋の方に戻って行った。
その場に残されたアイラと龍之介は互いに口を開くこともなく、アイラがカウンターの上にあるジュースのグラスを取り上げて、居間のソファーに座るようなので、龍之介も一応それに従って、自分のグラスを取り上げ、ソファーに向かった。
「どうぞ」
廉が戻ってきて、差し出された白いシャツを受け取ったアイラは、そこに座ったままシャツのボタンを外さずに、ススッと頭からスッポリ被るようにした。
その中でゴソゴソと腕を動かしたかと思うと、上の二つのボタンを外して、中から来ていたスーツを脱ぎ上げるようにした。それが終わると、スーツを横において、またわずらわしそうに自分の髪をかきあげた。
その様子を黙って眺めている龍之介は、また目のやり場に困って、ちょっとあっちの知らぬ方向を向いてしまう。
廉は背が高いので、背の高いアイラがそのシャツも着てもまだ丈が余っているようで、それを着込んだはいいが、短いスカートとシャツの長さが重なって、さっきよりも――なんだか、余計に目のやり場の困る格好になってしまった。
シャワーを浴びたついでに、さっきまでの化粧を落としたようで、サッパリとこぎれいになった顔は、本当にさっきとは別人のもので、随分、爽やかな顔つきに見えてしまう。
「龍ちゃんの推薦のお店なんだ」
廉がカウンターからパンの袋を持ってきて、そこのテーブルの真ん中に置くようにした。
「それはどうも」
今回は遠慮もなくパンをもらうようで、アイラが先にその袋から勝手にパンを取り出した。髪の毛が邪魔で、邪魔くさそうに横の髪をアイラが耳にかけていく。
その様子を見ていた龍之介の反応が、一瞬、止まっていた。
「なに?」
冷たい目で聞き返されて、ハッと我に返った龍之介は、カァ……と顔を染めながら、下を向いてしまった。
「なんでも……ない……」
じぃっと、観察するつもりはなかったが、つい観察してしまった龍之介の前で髪を上げたその横顔――に見惚れてしまったのだろうか。顎の線が妙にきれいで――そんな、普段、考えもしないことが頭に浮かんで、龍之介はそこで失礼ながらマジマジとアイラを凝視してしまっていたのだった。
たかが、年下の女子高生にここまでドキマギさせられて、恥ずかしいこと極まりない。
読んでいただきありがとうございました。
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やっぱり やらねば(続) https://novel18.syosetu.com/n7288hj/ (18歳以上)
別作品で、異世界転生物語も書いています。どうぞよろしくお願いいたします。
奮闘記などと呼ばない https://novel18.syosetu.com/n6082hj/