その5-02
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「まだ寝ててもいいんだよ」
「それはどうも」
スタスタと居間に歩いてきた本人は、わずらわしそうに自分の髪をかきあげ、その場で大きく口を開けて呆然としている龍之介にその視線を向けた。
「龍ちゃんとは、お勉強会なんだ。土曜は大抵ね。朝ご飯の差し入れもあるけど、君は食べる?」
「もらう――わ」
「そう。だったら、コーヒー?」
「コーヒーは飲まないの」
「だったらなに?」
「随分と親切じゃない」
「昨日からずっと親切だったはずだけど?まあ、ここまでコキ使われたから、サービスするならとことんしますけどね」
アイラはそれを聞いて少し口を曲げているようだった。
「シャワー使うなら使っていいよ」
「それはどうも。遠慮しないで使わせてもらうわ」
「遠慮するの?」
それで、アイラが廉を振り返った。そして、その瞳を薄く輝かせて、随分と艶かしい微笑を口元に浮かべていく。
「もちろんよ。変態以外は、ね」
それで、今度は廉の方が嫌そうに眉間を寄せてしまっていた。
「タオルも全部、脱衣所にあるから、勝手に使えばいい」
「それはどうも」
アイラはそのままスタスタと向こうのバスルームに向かって歩いて行く。
その去っていく後ろ姿までも、龍之介は目が釘付けのように、じぃっとその視線が追っていく。
向こうに消えていくその姿が、扉の閉まる音と共に本当に消え去って、龍之介は強張ったようにその眼差しを廉に戻していった。
「あれ――なんで――一緒にいるの? なんで、柴岬が――廉のマンションに? ――泊まったの? なんで――え? もしかして……付き合ってるの? 廉が柴岬と? なんで? ―――ええぇ?!」
困惑と当惑が明らかで、意味不明な質問を繰り返した龍之介だったが、自分が質問した内容を頭で繰り返しながら、その意味が示唆する方向を考えてしまって、いきなりボッと顔を真っ赤に染めてしまった。
「あっ……ごめん……。そんなヤボなこと聞くんじゃなかった――でも、あの――ちょっと……びっくりして……。――だって、廉が――」
「龍ちゃんが想像してるようなことは何もないよ。全然、やましくないんだ。残念なことに」
「残念? ――本当? やましくない――って、なんで? なんで、柴岬がここに――泊まったんだよな」
「まあ、そういうことになるけど、部屋は別々だよ。ゲストルームがあるから」
「ああ、そっか……」
一応は納得をしたものの、それでもなぜ?という疑問が判らなくて、その当惑しきった顔を龍之介は廉に向けていた。
「ああ、丁度、会って。それで、昨日は少し遅くなってしまったから、帰るんだったら俺のマンションの方が近くて、泊まっていくことになったんだ」
「え――でも……、なんで? ――付き合ってるのか? 一緒に……泊まるくらいだから……」
「龍ちゃんの想像しているようなことは何もないよ」
「でも――なんで? 普通……だったら、知らない男の家なんかに泊まっていかないと思うぜ」
「うーん、まあ、そこら辺は慣れてるんじゃないかな。その程度には、俺も危険じゃないと判断したんだろうし」
「慣れてる――? 男の家に泊まることが? あの――柴岬が?」
「ああ、そういうんじゃなくて――まあ、日本の習慣じゃなくてね」
「なに――それ?」
「男の家に泊まる――とかじゃなくて、知り合いの部屋に泊まるとか、あとは――共同生活、かな?」
「共同、生活? ――廉と柴岬が?なんで――?」
困惑を極めた、といった風な龍之介は、全く理解ができなくてそこでお手上げ状態だった。
読んでいただきありがとうございました。
大人になってもはちゃめちゃ恋愛(?)の続編もあります。そちらの方もよければ観覧してみてくださいね。
やっぱり やらねば(続) https://novel18.syosetu.com/n7288hj/ (18歳以上)
別作品で、異世界転生物語も書いています。どうぞよろしくお願いいたします。
奮闘記などと呼ばない https://novel18.syosetu.com/n6082hj/