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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part1-出会い
23/215

その4-06

「何の用? 偶然――なんて、言わないわよね」

「さあ。でも、すごい変身だね」

「それは、どうも。あなたも、一介の高校生には見えないわよね」


「まあ、未成年だけど、飲み物を頼まないとダメだろうから、今日は見逃してもらうしかないかな」

「ここで何してるのよ」

「さあ。ネオンがきれいだったから、ちょっと興味があって」

「大ウソつき」


 ズバリと、表情も変えずにアイラがそれを叩きつけてきた。


 そのアイラを見ている廉は、少しだけ笑むようにした。


「偶然――ではあるけれど、見知った顔がいたんで、つい」


 アイラの冷たい眼差しだけが返されて、前のテーブルがあるのに、アイラは簡単にそこで足を組むようにして、それでおまけに腕までも組みだした。


「その短いスカートで足を組んだら、サギだろう?」

「見せる分はきっちり取るからいいのよ。知り合いだろうと、マケないわよ」

「それに、その体も――サギだね」

「じろじろ見ないでよ」


 キッ、とアイラが鋭く廉を睨め付けた。


「見せているだろう? それで、見てしまったのは俺の責任じゃない」

「だからって、じろじろ見ないでよ。変態」


 きっぱり、すっぱり、はっきりと断言されて、おまけに忌々しげに言い捨てられて、廉は、一瞬、言葉なし。


 ここまであからさまな嫌悪を見せられて、変態、だなどと断言されたこともなければ、本人だってそんな形容されるような人格ではないと思っているのだ。


「飲み物、なに頼むの? さっさとしてよ。時間制で売り上げになるんだから」

「――君、それでよく客商売なんてできるんだな」

「あなたには関係ないでしょう。さっさとドリンク頼んでよ」


 大威張りされて、おまけに、命令口調で、最初の時の印象と随分かけ離れたそのきつい性格に、廉は少し首を倒しながら、アイラを見返していた。


「二重人格?」

「あなたには関係ないでしょう。さっさとしてよ」

「まあ、君に協力することになるんだったら、仕方がないだろうね」

「なんでよ?」

「ここにいる間は、他の客を相手にしなくて済むだろうから。俺には別にサービスする様子もないしね」


 鋭い突っ込みをされて、アイラはまた嫌そうに廉を睨め付ける。だが、まさにそれが論点を突いていたようだった。


「知り合いだろうと、値引きしないわよ。余計なことに首を突っ込んでくるような男が間違ってるわ」

「まだ、突っ込んでないけど」

「だったら、なんでここにいるのよ」

「ただ、興味があったから」

「くだらない興味で女の後を尾けるなんて、いい性格じゃない。ホント、超胡散臭いわね。何者なのよ」


 さっきから、きっぱり、すっぱり言い切られて、おまけにそれを隠す態度もなくて、廉はじぃっとそのアイラを見返していた。


「君、日本人?」


 アイラの瞳が大きく上がった。


「なんで?」

「態度が日本人らしくないから。それに、その声も、そこらの女の子と違うから」

「私の声? ――なにが?」


「俺の周りにいる女の子は、トーンが高い感じだ。平均的に、日本の女の子のトーンは高くて、声が――キンキンして聞こえるかな」

「――あなたも、日本人じゃないの?」

「俺は純日本人だよ。ただ、日本を離れてた方が長いから。君は?」


 アイラは少しその場で考えるようにして、一度、口を閉ざしたが、多少はその態度を変えるらしかった。


「クォーターよ」

「どのクォーター?」

「色々ね。その家系をたどっていったら」


「Irishじゃないの?“Isla(アイラ)”だろう」

「よく知ってること」

「まあ、その名前も、なんとなく日本の名前じゃないんで」

「今の名前だったら、日本人の名前じゃなくてもたくさんあるじゃない」

「そうだけどね」


 廉はテーブルに置かれたお絞りを取り上げて、それで自分の手を拭きだした。その様子からいっても、全く動く気はないようだった。


 それで、アイラの肩眉がまた少し上がり、

「高校生にしては、随分、肝が据わってるのね」

「そうかな」

()胡散臭いわ」

「君は、さっきから俺のことを貶してばかりだね。お客なのに」


 アイラの口元が上がり、にぃっと妖しげな微笑が浮かんでいく。


「だったら、ボトルでもキープするの?」

「それいくら?」

「さあね。私に協力するんでしょう?くだらないことに首を突っ込むから、自滅するのよ」


 アイラはスッと横を向いて、その腕を軽く上げるようにした。


「すみません。ボトルです」


 全く言葉を違えず、本気でこの廉にボトルをオーダーさせるようだった。


「覚悟するのね」


 あまりに不敵な笑みを投げて廉を見やるアイラを見返しながら、廉の眉間がほんの少しだけ寄せられたが、そこで諦めたように廉は溜め息をついていた。



読んでいただきありがとうございました。

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