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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part3-アメリカ編
215/215

その14-03

「やっぱりやらねば」、今日で完結しました。

アイラのお話は、勢いがあって、気軽で、さくさくと読めるような内容として書いてみました。

特別、深い感情移入や、物語の情景などに力を入れず、ただ、ストレスもなく気軽に読めるお話になれればいいな、と思っています。

 ここで、一つだけ三人が気付いていなかったことと言えば――


 事件現場で、アイラに冷たく軽蔑された後からの野次馬達は、ビデオの撮影を控えたようだったが、最初にいた野次馬の数人は、ビデオを撮り終えていたのだ。


 それがSNSに発信され、



“日本の小さな少年、暴漢を投げ飛ばす!”



 などという題材で、世界中にそのニュースが発信されていたという事実だった。


 それで、その日、龍之介は自分の知らない間に、“勇敢な日本の少年!”として、一気に有名になっていたとは思いもよらなかったことだろう。


 だが、そのSNS発信を見つけたアイラの一族の誰かが、その話を一族中に漏らしたものだから、すでに、その日のうちに、アイラに一族全員にも知ることとなる事実となる。


 そこで、アイラがカナダに遊びに来ていたことなど知らず、



『カナダにいるなら、アメリカにも来るんでしょう? なんで、うちに遊びにこないのよっ』



 などとお叱りを受け、



『おい、アイラ、お前は一体どこにいるんだ?』



とカイリから詰め寄られ、事情を知りたがるアイラの一族からの電話のせいで、アイラの電話は鳴りっぱなしだ。


 さすがにうんざりとしているアイラは、そこで電話のスイッチを切ってしまっていた。


「いいのか……?」

「いいのよ。もう、残りの旅行だって少なくなって来てるのに、邪魔されたら、それこそ、腹が立つわ」


 あまりにうるさく押し寄せて来るので、アイラだって、帰るまでは、電話に出ないつもりなのだ。


 最後の日時が迫って来て、バンクーバーでもおいしいものをたくさん食べた。

 シアトルでも、高級レストランに顔を出し、そこでもたくさん食べた。

 サンフランシスコに戻り、最後の夜を祝って、ホテルの豪華料理も満喫した。


「最後の夜を祝って、乾杯~!」

「「乾杯っ」」


 そして、今日が、本当の意味で、最後の夜となる。


「最後、だな……」

「そんな、しんみりしないのよ。仕事だろうと、会おうと思えば、会うことはできるじゃない」


「そう、かも、しれないけどさ……。ここ毎年の行事だっただろう? 楽しかったよなあ……」

「そうね」


「アイラさ、帰ったら仕事見つけるんだろう?」

「たぶん、そうなるわね」


「そっか……」

「龍ちゃんが獣医になれたら、会いに行くって、言ったじゃない」


「うん、そうだな……。俺も、がんばるぜ」

「そうよ。その意気よ」


「レンは卒業する時、どんな仕事、探すんだ?」

「たぶん、マネージメント系だと思うけど」


「そっか。それも、大変そうだなあ」


 龍之介とはまったく科目が違って、仕事内容も違っている職業だ。


「アイラはNZにい続けるつもり?」


 学生時代は、うるさい一族が揃っていない国がNZだったから、アイラも気軽に国外に留学して行った。

 だが、仕事まであの国で済ますなど、遊びが好きなアイラにしては珍しい。


「数年は、ね。まだお金が溜まってないから、色々、動くにも出資がないわ」

「ああ、なるほど」


 それなら、数年働いて、ある程度のお金が溜まれば、アイラなら次の場所に簡単に移動していきそうである。


「レンはイギリスに行かないの?」

「いや、これからずっとアメリカだと思う。イギリスにいた時よりも、アメリカにいた時の方が長いんだ」


 廉の兄は、ずっとイギリスの学校にいて、大学も卒業しているから、これからもイギリスに留まるつもりなのは、廉も知っている。


 廉は、イギリスにいたのは数年で、その後、アメリカの高校を卒業して、今はアメリカの大学も卒業しようとしている。


 だから、廉にとっては、アメリカの方が住み慣れているのだ。


「レンのとこの家族も、「元気ですか~」だけの挨拶で、不思議よねえ」

「そうかな? まあ、アイラの一族みたいに、いつも、皆で会話をしたりはしないかな」


「龍ちゃんだって、ほとんど親に電話かけてるとこ、見たことないわよ」

「いやぁ……、俺も、たまーに電話っていうか、LIMEのメッセージは入れてるんだけどな」


 その夜は、高いワインのボトルも開けて、三人の最後の時間を楽しく終えていた。





「龍ちゃん~、元気でね」


 ぎゅぅっと、アイラに抱きしめられて、照れながら、龍之介もちょっとだけアイラを抱きしめ返す。


「アイラも、元気でやれよ」


 今日は、アイラが先にニュージーランドに飛び立っていく。


 午後からは、龍之介の日本へのフライトが飛ぶ。


「レンも元気でね~」

「アイラも。あまり無理をしないように」


「してないわよ」


 し過ぎる傾向にある張本人が、何を言うか。


 だが、ぎゅぅっとアイラが廉を抱きしめて来て、廉をアイラを軽く抱きしめ返す。


 背が高い二人だと、そうやって抱きしめ合っていても、様になる。


 そんなことをぼんやりと考えている龍之介の前で、アイラが二人に最後の笑顔を投げていく。


「じゃあねん」


 そして、背の高いアイラの後ろ姿がゲートの奥に消えて行った。


「ああ、最後だなぁ……」

「そうだね。今回も楽しかったから、残念だね」

「本当に、残念だぁ……」


 初めて出会った衝撃の高校3年。


 それから、毎年、クリスマスからお正月にかけての、3人での旅行。


 色々見て回って、遊んで、お金も使いまくった。


 なんだか、いつも離れ離れになっている友達だけど、こういう別れの方が、もっと寂しい気になってしまうのは、龍之介だけだろうか。


 もう、会えない……とは、思わないけど、会える確立や可能性は、ぐんと減ってしまうことは間違いなかった。


「俺は、廉とアイラに会えて、良かったなあ……。学生時代って、結構、他の友達とも遊んだりしたけど、廉とアイラと旅行したことは、すごい思い出に残ると思う。廉と友達になって、俺もすごい嬉しいよ」


「龍ちゃんは、本当に、素直でいい子だね」

「なんだよ……。茶化すなよな」


「茶化してないよ」


 廉もおかしそうに笑っている。


「でも、これで連絡が途切れるわけじゃないよ」

「うん、そうだけどな……」


「獣医になるの、頑張って。俺も日本に行けるの楽しみにしてるよ」

「おうよ! その時は、二人で盛大に祝ってくれよな」

「もちろん」


 その約束があれば、先が長かろうと、目標に向かって頑張っていけるだろう。


 もっと大人になった廉とアイラは、一体、どんな感じだろうか?


 きっと、二人共、それほど変わらないのではないだろうか。


 そんな未来に思いを馳せて、龍之介も、もう旅立つ時がやって来ていた――



ブックマーク・評価★・感想・レビューなどなど応援いただければ励みになります! どうぞよろしくお願いいたします。


ここまでお付き合いくださった読者の皆さん、ありがとうございました。

シリーズ続編は、ムーンライトノベルズの方にて継続中。アイラの一族のお話が出てきます。

https://novel18.syosetu.com/n7288hj/


また、そちらでお会いできることを、楽しみにしています •͙‧⁺o(⁎˃ᴗ˂⁎)o⁺‧•͙‧⁺

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大人になってもはちゃめちゃ恋愛物語『やっぱりやらねば(続)』は大人の恋愛編です。
やっぱりやらねば(続)(18歳以上)

別作品で、“王道”外れた異世界転生物語も、どうぞよろしくお願いいたします。
奮闘記などと呼ばない(18歳以上)
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