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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part3-アメリカ編
208/215

その12-05

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* * *



 ケイドは事務所のパソコンの前で、微かにだけ眉間を寄せる。


 前の前のイーメールを見ながら、冴えた鋭い眼差しだけが画面を睨み付けている。


 あまりに気に食わない、という表情も隠さず、ケイドはイーメールを開けていた。


 まず初めに、眉間を寄せた理由は、二つ。


 イーメールの送り主。

 そして、ボディーにあるたった一行の言葉。


 もちろん、送り主は、あのアイラで、アリゾナに落としてきた従妹だ。

 セスの家にいるはずなのに、わざわざと、ケイドにイーメールまで寄越してくる理由が、あまりに胡散臭すぎる。


 そして、たった一行だけの文章。



“大きな借りを作ったことを忘れないことね、ケード”



 (しゃく)に障る文章だったが、その内容も、あからさまに胡散臭すぎる。


 それで、添付されているファイルはメディア用ファイルで、益々、胡散臭さが高まってしまった。


 メディア用のファイルを開くと、音声だけがすぐに流れて来た。

 その半分も聞き終えないうちに、パっと、ケードの瞳が大きく見開いていた。


『アイラめっ――』


 アイラに怒鳴りつけたい心境なのか、呆れてものが言えないという感想なのか、そのどちらも混ざったような苛立った呟きを漏らし、ケードが携帯電話を取り上げていた。


 だが、かけた相手は繋がらず、「只今、圏外でコールが届きません」なんて、親切な機械音だけが流れて来る。


 くそっ、と苛立たし気に吐き出したケードは、次に、弟のセスに連絡を取っていた。


 セスはフィールドに出ている時は、携帯電話の電波が届かない時が多いので、無線電話を携帯している。

 それで、一応、自分の携帯電話にかかってきたコールは無線電話の方に転送していることが常だ。


『おい、アイラはどこだ』


 相手が電話を取るや否や、ケードがそれをまくしたてていた。


『出かけている』

『どこに』


『さあね』


 役にも立たないセスの返事を聞いて、ケードが更に苛立ちを深くする。


 セスの方だって、昼食に家に戻ってきたら、アイラと廉の姿が見えなくて、キャサリンに尋ねてみたら、



『あら、出かけて行ったみたいですよ。革ジャンのことを聞いていましたからね』



 それで、すぐに思い当たる節があり、自分のガレージに行ってみると、もちろんのこと、そこにあるはずの、自分のお気に入りのバイクがないではないか。


 それで、あの二人は、セスに無断で、おまけに、勝手に、セスのバイクを盗んで、出かけてしまった事実が判明したのだ。


 龍之介に、二人の居場所を聞いても、龍之介の方も二人がいなかった事実に驚いていて、あまりに素直過ぎる反応を見て、龍之介は何も知らされてないことを、簡単に理解してしまったセスだった。


『おい、危ないことしてるんじゃないだろうな』

『そんなこと、俺が知るか』


 セスに文句を言われようとも、ケードの方だって、事情も知らずに、結果だけ送り付けられたような状態である。


『まあ、そこまでひどい状況ではないだろうが』


 ふうんと、セスの相槌は全く納得していない様子がありありである。


『あの二人が帰ってきたら、叱り飛ばしておいてくれ』


 ふうんと、まだセスはそんな相槌だけを返していた。


 疲れ切ったように、ケードは次に連絡する相手を呼び出していた。


『アル、証拠が出て来た。仮釈放をすぐに要求する』

『え? ――マジ?』


 一体、どうやって、と聞き返したいのだろうが、それは、ケードだって知りたいくらいだ。


『今から落ち合おう』


 それだけを言いつけたケードに、アルも文句はなかったらしい。

 自分のコートを掴み、ケードはさっさと事務所を後にしていた。


 それでも、歩きながら、アイラのヤツめっ、とぶーたれ文句を言うのは忘れずに。





 数時間をかけて、またアリゾナに戻って来たアイラと廉は、家で待ち伏せをしていたセスに掴まり、その後、しっかりと、お説教を食らっていた。


 それでも、アイラ相手だと、説明どころか、話にもならず、お説教をしている半分で、セスだってあまりの無駄と疲労と感じ、そこで切り上げてしまっていたのだった。


 それから、「無謀な行動する気なら部屋に縛り付けるぞ」 と脅されて、渋々、今日は大人しく家に残っていると、約束させられたアイラを信用しているのかいないのか。


 それでも、仕事は残っている。


 盛大な溜息をこぼし、セスは(本当に)仕方なく仕事に戻って行った。


 今夜は大晦日でご馳走というだけに、キャサリンは忙しくキッチンで動き回っている。


 それで、することもない二人の元に、ヴィクター・スボルスキーから電話がかかってきていた。

 もうすぐ夕食が始まる頃だった。


『逃亡者は、無事に引き渡してきた報告をね』

『あら、そう』


『さすがに、ギャングに命を狙われているから、警察に身柄の引き渡しを頼んだら、向こう側も快く引き受けてくれた』


 もちろん、ケードから結果だけの録音を聞かされたアルが、すぐに状況を理解して、ギャングを逮捕するには、あの中年男の証言が必要だと判断していた。


 それで、上層部に掛け合い、男の身柄保護で、州検察官からも同意を得ていたのだった。

 身柄の受け渡しは、予想以上に簡単なものとなったのだ。


『楽しく仕事させてもらったな、ゴージャス』

『こっちもよ、ハンサムさん』


 パチンっと、携帯の電話を切ったアイラの顔に、満足そうな笑みが浮かんでいた。


『終わったの?』

『そうね』


『そうか。じゃあ、きちんと支払ってもらおうかな』


 アイラは、ちょっと隣にいる廉を睨め付けるようにしたが、仕方なく、少し背伸びをして、ちゅっと、廉の頬にキスをした。


「Thanks」

『なんだか、いつも、これで誤魔化されているような気がするな』


『いいじゃないの。こんないい女にキスされるんだから、少しは喜んだ顔しなさいよ』


『だったら、きちんと支払ってもわらないことには。君の要望通り、今回も、俺はたくさん君に手を貸しただろう? お礼する気なら、しっかりしてもらわないと、アイラ、女が(すた)るんじゃないのかな?』

『取り過ぎじゃないの?』


『そうかな』

『そうよ』


『もらい過ぎよ』

『そうかな』


 淡々とそれを言って、じぃーと、アイラを見下ろしている廉の顔を見ながら、アイラはちょっと口を尖らせてみせるが、本当に仕方なさそうな溜め息をつく。


『仕方ないわね』


 それで、アイラが廉に向き直り、両腕を上げて廉の肩に寄りかかって行く。


 ゆっくりとアイラの顔が寄せられて、アイラの唇が届いた時、廉も両腕をアイラの背中に回し、そのまま、アイラの頭を引き寄せるようにして、キスを深めていた――



読んでいただきありがとうございました。

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Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)

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大人になってもはちゃめちゃ恋愛物語『やっぱりやらねば(続)』は大人の恋愛編です。
やっぱりやらねば(続)(18歳以上)

別作品で、“王道”外れた異世界転生物語も、どうぞよろしくお願いいたします。
奮闘記などと呼ばない(18歳以上)
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