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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part3-アメリカ編
202/215

その11-02

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 だが、セスは前を歩くアイラの後ろ姿を、チラッと、もう一度見やっていた。


 赤ちゃんの時から幼児時代、それから学校に入って、思春期――と、その成長の過程を見知っているセスだったが、高校を卒業した辺りからのアイラを見知っていない。


 今では、すっかり体つきが変わり、どこをとっても、大人の女としか見えないあの体付きに変わっただけではなく、あの若さで、男を手玉に取る色気まで身につけて、そして、男達が自分の体を見ていることを全て承知でいるあの瞳も、随分、変わったものだった――大人になった――と言うべきなのだろうが。


 昔から、抱き締めても、セス達の腕にスッポリ収まってしまうあのウエストの細さは、ラッキーなことに、アイラの母親譲りなのだろう。


 あの叔母さんも、年を取っても、未だに迫力の美人である。

 典型的なIrish の容姿を受け継いで、闇を含んだ黒髪に、海色の瞳を持っている。


 若い時は、アイラの父親が、一発で一目ぼれしたほどの魅力があったそうだが――まあ、それも頷けるものだろう。


 アイラは母親の容姿をあまり受け継がなかったようだが、アイラが成長するにつれて、セス達の祖父や叔父や叔母が、



『アイラは、Nana にそっくりになってきたわねぇ』



と誰しもが繰り返すので、Nana の若かりし頃の容姿は、アイラのようだったのだろうか。


 一応、孫達も皆、Nana の若い時の写真を見たことがあるが、あまり、アイラとの相似点を感じない孫達は、どこがNana に似ているのか、よく判らないのであった。


 それとは別に、前を歩いていくアイラの後ろ姿を見ているセスの視線が、その腰だけではなく、腕や首、足にもずっと向けられていた。





「――あの、じゃあ、立ってください」


 本人はあまりやる気がなさそうだったが、それでも、律儀に、ジョーダンの前に立って、まずそれを言った龍之介だった。


 馬小屋の後ろに積まれている牧草を軽く当たりに撒き散らし、なんとなくクッションのできる場を作り終えると、ジョーダンはやる気満々で、龍之介の前に立っていた。


「あの――柔道の基本は――結構あるんですけど……」

『じゃあ、あの投げ飛ばすのは?』


「背負い投げは――まあ、それだけでも教えますけど……。まずは、基本の形が、足を肩幅ほどに開いて、それで、動く時は、三角形を作るような形で……」


 龍之介は丁寧に説明しながら、つま先を動かして、足の動く場所や間隔も親切に教えていた。


 ボスがやってきて、見知らぬゲストも連れてきて、それで、何か始まりそうな様子に、馬小屋近くにいたセスに雇われている他の就業者も、なんだなんだ――と、興味をそそられて、策越しに少し集まり出していた。


『あの僕、ジュードー習ったのか?』


 スッと、アイラの後ろからアイラの腰に腕を回してきたセスが、少しアイラを抱き締めながら、その肩に自分の顔を乗せるようにした。


『他にもたくさんよ』

『たくさん?』


『そう。龍ちゃんはね、サムライボーイだから、なんでもやってるのよねぇ』


 丁寧に龍之介が教えているいる様子を、アイラは、随分、おもしろそうに眺めている。


『そう言えば――あの僕、アニマルドクターだって、言ってたが』


 あの場の状況を思い出して、セスはまだ信じがたい、と言った表情をみせて、少しだけ顔をしかめていた。


『そうよ』

『マジで?』


『そうよ』

『本当に、獣医なのか?』


『そうよ。まだ勉強中だけど』

『じゃあ、学生――大学生って言うのも、本当だったんだな』


『そうよ』

『日本人は――若く見えるって言うがな……』


『なんでよ』

『いや――子供だと思ってたから』


 それを聞いて、アイラが軽く吹き出していた。


『まあ、龍ちゃんは幼く見えるかもしれないけど、子供なんて、ひど過ぎるじゃない。ちゃんと、大学行ってるのよ』


『いや――そうだとは言ってたがな……』


 ふーむと、セスはいまだに、信じられないものでもみるような様子だった。


『いくつなんだ?』

『私より一つ下よ。今年で21ね。だから、やっと、バプにも行けるようになったじゃない』


 旅行中でいつも年を聞かれ、確認させられるのは龍之介ばかりである。


 少々、可哀想にもなってくるが、あの光景を思い出して、アイラもつい、くつくつと、声を押し殺して笑ってしまう。


『あいつは?』

『あいつ?』


『もう一人の友達』

『龍ちゃんと同い年よ』


『あれで?』

『そう、あれで。あの男はね、龍ちゃんと違って、老けて見られるのよ、いっつもね』


 まあ、セスも、それは否定はしないが。


 丁寧に教え終わった龍之介の前で、お手本を見せますが――と、聞かれたジョーダンは、もちろんのこと、全く問題なしにOKを出す。


「では、行きます」


 たかがジョーダンに教えるだけなのに、龍之介は真面目な顔をして、きちんとその場に並び直していた。


 スッ――と、瞬時に、龍之介の体が素早く動いて、襟口を掴んだ龍之介が、重さも感じさせず、一気にジョーダンを投げ飛ばした。


 ドンッ――と、牧草がちゃんと散らばっている真ん中に、ジョーダンが投げ飛ばされる。


 龍之介がかかってくる――と、本人も構えていたのだったが、予想以上に素早く、おまけに、アッと言う間に投げ飛ばされて、ジョーダンは高い空を見上げたまま、まだ呆けている。


「あの――大丈夫ですか……?」


 龍之介が、おずおずと、ジョーダンの頭元から覗き込んできた。


 野次馬に集まってきていた就業者も、一瞬、何が起こったか理解できず、全員がポカンとしている。


「あの……すみません。大丈夫ですか?」


 龍之介が腕を出してきて、ジョーダンはそれを目線だけで追っていたが、自分の腕を伸ばしそれを掴んで、ゆっくりと起き上がるようにした。


『――やるなぁ……。すごいな、サムライボーイ。あんな早くに攻撃できるんだ。すごいぜ。さすがだなぁ……!』


 投げ飛ばされた反動も全く気にした様子はなく、ジョーダンは更に興味をかきたてられたようで、その瞳が、おもちゃを見つけた子供のように爛々と輝いていた。


『すごいぜ。俺は今日から君の事を、師匠(マスター)、と呼ぼう』

「俺は――それほど、すごくないんですけど……」


 あからさまに褒められて、大喜びされたような様子に、龍之介はちょっと照れたように、頬を赤らめていた。


『ヘイ、ジョーダン。お前だったら、1日中習っても、絶対に、あんな技は無理だよ』


 今の余興を見て、かなりエンジョイしているセスが、ジョーダンに向かってその言葉を投げる。



読んでいただきありがとうございました。

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大人になってもはちゃめちゃ恋愛物語『やっぱりやらねば(続)』は大人の恋愛編です。
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別作品で、“王道”外れた異世界転生物語も、どうぞよろしくお願いいたします。
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