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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part1-出会い
2/215

その1-02

* * *



 すぐ隣の後列にいる男子生徒の一人は、見慣れない女生徒が列に混ざって来た時点から、その女生徒に気がついていた。


 隣近所は、視界の端から突然混ざって来た気配程度の動きを察しただろうが、そんなことに構う風もなく、それぞれに真剣な様相で、今月の生徒会の報告を聞いている様子である。


 元々、男子生徒の数が女生徒の数を上回っているので、どのクラスも男子の列が女子の列よりも長いのが普通だ。それだけに、隣の列に混ざった女生徒は、向きを変えずとも、そのまま真っ直ぐに視界に入ってきたのだった。


 ちらっと、見下ろした袖口は青のラインが刺繍させれている。そうなると、同学年でもなく一年下の2年生ということになる。


 なにを思って3年のラインに混ざるのかは知らないが、全校生徒が集合するこの朝礼にまでも遅刻してきて、違う列に並ぶ女生徒が珍しくて、つい、その男子生徒もそこの女生徒の後ろ姿をなんとなく眺めてしまっていた。


 だが、微かにうつむいたその様子が普通には見えなくて、少しだけ見える横顔がなんだか青ざめているようにも見えないではない。


 スッと男子生徒の足が音もなく動いていた。

 女生徒のすぐ真後ろに来た時に、ふっ――とその体が崩れかける。


 男子生徒は全く態度も変えず、腕を伸ばしてその女生徒を抱き留めていた。腕に一気に伸し掛かってくる体重の重さからいっても、気を失っているのは確かだった。

 全く何でもないことのように、男子生徒はその女生徒の腰を支えながら、ゆっくり、静かに後ろに下がりだした。


 列から離れていくと、またも、何事もなかったかのように女生徒と一緒に向きを変え、女生徒が寄りかかっているような様子で一緒に歩いているような雰囲気を見せながら、スーっと音を立てずにドアを横に押して、男子生徒は体育館から出ていた。


 ドアを閉める際に、生徒会長からの報告と一緒に、今月の注意や気づいた点が述べられているのが聞こえてきたが、男子生徒がドアを閉めると同時に、閑散とした廊下に二人だけが残されていた。


「君、大丈夫?」


 完全に男子生徒に抱きかかえられているような女生徒にそれを聞いても返事が返ってくるはずもなく、男子生徒はちょっとその顔を覗き込むようにしたが、女生徒を支えながら、すぐに反対の腕で足を抱えるようにして女生徒を抱き上げた。


 うつむいていて、髪の毛が顔に被さっていたのが、抱き上げられた反動でその髪がサラッと後ろに流れていった。

 その露になった顔――顔色は、随分、青ざめているものだった。眉間を寄せて、気を失っているのに、随分、苦しそう――痛そうだったのか――に見える。



(美人だ)



 男子生徒は女生徒を抱き上げたまま動き出していた。



(それに――いい、体かもしれない)



 ふーむ、と一人、呑気にそんなことを考えながら、その足をゆっくりと保健室へと向けていた。



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