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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part3-アメリカ編
198/215

その10-03

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* * *



『私と一緒にいる所を見られたら、セスの評判が下がるかしらねん』


 仲良さそうに腕を組んで、セスと歩いているアイラがそれを言った。


『アイラのおかげで、俺の評判が上がったかな』

『そう?』


 アリゾナなどと、かなりの僻地に追いやられてしまったアイラは、暇人なだけに、一生懸命、働いている龍之介とは違って、セスに、毎回、文句を言っていた。



『セスぅ、退屈なの。どっか連れてって。ねえ、どっか行こうよ。ここで一日中篭ってたら、退屈で死にそうぅ』



 広大な敷地の牧場を経営しているセスは、アイラと違って、いつでもどこでも忙しいのである。

 セスは馬の飼育もしているので、そのトレーニングにも精を出していて、夕方近くになるまで、セスはほとんど外に出っ放しなのである。


 普段から外に出ているセスはその年齢に反して、目尻に薄っすらとシワが上がっている。

 日に染まり色落ちした、本来なら栗毛の髪の毛は、そよ風になびいて、きらきらとオレンジ色がかって光を反射していた。


 ケードは父親のダークっぽい容姿を受け継いで、黒髪に琥珀の瞳を持っていた。


 セスはアイラの祖母方の血を受け継いでいるせいか、薄い赤毛にも見えないでは明るい栗毛に、薄茶色の瞳を持っていた。


 アイラがあまりにうるさいので、セスは仕方なく、アイラと龍之介と廉を、地元のパブに連れて来たのだった。


 ただビールを飲んで、時間を潰す程度の場所だが、仕事を終えて帰って来たセスは、映画に行く気分でもなかったので、パブで軽い食事も取る予定だった。


「やっぱり、カウボーイが多いんだなぁ……」


『テキサスじゃないけど、牧場就業者とかも多いから。それで、格好もカウボーイに近いだろうな。でも、あそこにいるのとかは、帽子程度で、本物のカウボーイの格好でもない。皮のブーツでもないし』


「へえぇ、そうなんだ……。でも、見てるだけで、カウボーイに会ってる気分になってくるな」


 パブの中で、空いているテーブルを見つけて、4人が椅子を引いて席についた。


 すぐに向こうから、そそと、ウェートレスがやってくる。

 短いショートカットをして、ピッタリとしたTシャツに、ピッタリのジーンズをはいて、お盆を片手にやってくる。


 そして、かなり前開きしたその前身ごろをセスの方に寄せて、テーブルで少し屈みこんだ。


『セス~、いらっしゃい。今夜は、食事もなの?』

『そう。俺は、ステーキサンドイッチとラガー』

『了解』


 それで、そのウェートレスが、スッと、アイラの方にも視線を送る。


『何あるの?』

『クラブサンドイッチ、チキンサンドイッチ、ステーキにフライズ(フライドポテトの略)、朝食メニューの目玉焼きもできるわよ。ダブルバーガー。まあ、色々ね』


 へえと、アイラはそれをペラペラと龍之介に通訳していって、

「龍ちゃん、何食べたい?」


「そうだなぁ……、アイラは何にするんだ」

「私は、ステーキとフライズよ」


「フライズって――フライドポテトのことだろ?」

「そうね」


「だったら、俺は――うーん……どうしようかな。どれがいいと思う?」

「だったら、セスと同じで、ステーキサンドイッチにしなさいよ」


「じゃあ、それな」

『ステーキとフライズに、ステーキサンドイッチ。飲み物はレモネードと、バドワイザー』


 サラサラと、伝票にアイラの注文を書き込んでいって、そのウェートレスが廉にも首を振ってみせた。


『俺も、ステーキサンドイッチ。飲み物は、バドワイザーで』

『了解~。それじゃあん』


 ウェートレスが、クルリと、向きを変えて、キッチンの方に戻っていった。


『どこにいても、お盛んじゃないの』

『なにが?』


『あのウェートレス、胸まで見せびらかして、セスに媚売ってるじゃない。おまけに、やる気満々だし』


 セスはちょっと笑ってみせ、

『ジョーは悪くはないけどね』


『やる気満々――って言うのが、気に食わないわね』

『アイラは、すぐにケチをつけたがるからな。ここはローカルのパブだから、町の人間じゃないのが来るのは、珍しいだけだ。アイラは目立つし』


『それ、褒めてんの? それとも、貶してるの』

『なんで貶すんだ? 褒めてるのに、決まってるだろ』


『セスは、相変わらず口だけは、上手いわよねぇ』

『俺の口だけが、スムーズじゃないんだぜ』


『そうかしら』


 アイラのからかうような瞳を見返しながら、セスはちょっと笑って、グイッと、その顔をテーブル越しでアイラに近づけた。


 そして、アイラの髪をチョンと引っ張っていく。


『アイラ、一体、何に首突っ込んでるんだ?』

『そんなのは、ケードに調べさせておけばいいのよ。どうせ、ケードがいない間、私のお守りをさせられてるんでしょうが』


『まっ、アイラの体に銃で撃たれた跡がある――っていうのは、俺も黙って見過ごしてられないし』

『セスは、お守りだけしてればいいのよ』


 アイラは、つんと、セスの鼻をちょっと突くようにした。


 セスは、まだ、アイラの髪の毛を掴んだまま、困ったように顔をしかめている。


「――アイラもセスさんも、仲いいんだな……」


 廉の通訳を聞きながら(廉が、部分、部分を省いているのではあったが)、ポソッと、龍之介が廉に耳打ちするようにした。


『何て言ったんだ?』

『セスと私が仲いい、ってね』


『ああ。まあ、アイラは、昔から、よく家に泊まっていったしな。他の女の従妹(いとこ)達よりは、妹――みたいなもんかな』


『セスは、いっつも、私に優しいもんねぇ』


「へえ、そうなんだ。だったら、セスさんも、カイリさんみたいに、アイラに過保護なんですか? マレーシアにいる時は、全然、喋る機会もなかったような。あんまり、一緒になりませんでしたよね。パーティーで会った程度で、後はあんまり見かけなかったし。どこか、出かけてたんですか?」


 龍之介のお得意の弾丸攻撃が始まって、親切なことに、廉が一つ一つを全部通訳するので、それを聞き終わったセスは、目をクルクルとさせて、龍之介を見返している。


『俺を、あいつらと一緒にするなよな。あいつらは、特別だぜ』


 だが、ケードとセスの家に、アイラが遊びに来ている間に寄ってきた男達を、ケードとセスが蹴散らしていたのを、アイラは知らない。


 どうも、一族揃って、女の従妹達を過保護にする傾向があるのである。


「じゃあ、他の女のイトコは? アイラだけ、いっつも会ってたんですか? 全員で――えーっと……美花さんもいれて、5人ですよね。他は、男ばっかりだから。でも、みんな離れてるから、会う機会も限られてるかな。この間、全員に会った時は、俺も驚いちゃったくらいだし――」


 次から次へと、話すことと質問することが止まらずで、セスは運ばれてきたビールを片手に、龍之介をおもしろそうに見やっている。



読んでいただきありがとうございました。

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大人になってもはちゃめちゃ恋愛物語『やっぱりやらねば(続)』は大人の恋愛編です。
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別作品で、“王道”外れた異世界転生物語も、どうぞよろしくお願いいたします。
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