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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part3-アメリカ編
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その10-01

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 ピヨピヨと、外で鳥の鳴き声がして、龍之介は、パチッと、目を開いていた。


 すぐに、ガバッと、寝ているベッドから起き上がって、枕元の窓の外を、ちょっと覗き見るようにした。


 アリゾナの朝は早い。

 もう、日の出が過ぎたようで、龍之介の視界に広がる広大な大地も、日差しを受けて、きらきらと反射しだしていた。


 ベッドの隣の小さなテーブルに置いた腕時計に目をやると、もう少しで、6時になるところである。


 龍之介はベッドカバーを勢いよく外して、パッと、ベッドから飛び出していた。

 簡単にパジャマを脱いで、手早く、今日のシャツとジーンズに着替えていく。


 それが終わると、部屋についているバスルーム――なんだか、3人揃ってバスルームつきの部屋をあてがわれたようで――に飛び込んで、大張り切りで、顔を洗い流し、歯も磨いてみる。


 さっさと身支度ができたので、龍之介は腕時計を腕にはめて、早速、部屋のドアを開けていた。

 音を立てないように、そぅっと、ドアを開けてみると、廊下はまだ閑散としている。


 アイラは、もちろんのこと、まだベッドで寝ているだろう。


 廉は起きているのかもしれないし、まだ寝ているのかもしれないので、龍之介は二人を起こすこともせず、そぅっと、ドアを抜けて廊下を歩き出していた。


 ロッジ風の作りの大きな家だったが、廊下の壁には絵が飾られていたり、写真が飾られていたり、なにかの布の掛け物があったりと、随分、アットホーム的だ。


 変わった形のロウソクが並べられていたり、男だけのむさ苦しい感じは全くなく、随分、チャーミング――龍之介も、かなり、英語的な表現ができるようになり――な家だった。


 居間に出ても誰もいなく、龍之介は、一人、ほくそ笑んで、足並み軽く、外に出て行くことにした。


 ドアを開けて外に出ると、朝からすがすがしい空気が、胸を一杯に満たして行く。

 少し冷たく、肌にピリピリとこすれた感じを呼び起こすが、そのおかで、更に目がすっきりと覚めていた。


 スー――と、深呼吸をして伸びをすると、龍之介の元気が沸いてくる。


 天気もいいし、朝ご飯前の散歩と称して、龍之介は歩いて散歩に出かけることにした。

 昨日、馬に乗せてもらった道を歩いていけば、また馬小屋の近くを通るかもしれない。


 ちょっとだけ覗く程度なら、邪魔してはいないだろう――と、密かに期待を膨らませて、龍之介は軽やかに歩き出していた。


 昨日、案内されたのは、馬の散歩道がほとんどのようだったが、それでも1時間ほど歩き廻っても、まだ柵に出くわさないほどの、とても大きな牧場のようだった。



「アイラの従兄の人は、すごい、でっかい牧場持ってるんだな。すごいぜ」



 まだ若そうなのに、こんな広大な牧場のオーナーだというのが、龍之介にしてはものすごいことだった。


 それで、あのセスという人よりも年上の労働者を雇っているのである。


 アメリカは、年下でもオーナーになって、年上の人を雇えるんだなぁ――などと、また一つ物知りになった龍之介は、とても素直に感心していたのだった。


 歩いていく先に、小屋の中から馬の嘶きや動いている音がして、龍之介は、タッと、足早に駆け寄っていた。


 入り口が開いているようなので、そぅっとだけ、顔を突き出して中をちょっとだけ覗き込んでみる。

 馬達はまだそれぞれの枠の中にいるようで、龍之介はもう嬉しくて、つい、その身を乗り出してしまった。


 それとほぼ同時に、一番端の枠内から出てきた青年――セスとばったり目が合って、龍之介は硬直してしまう。


『あれ? 早いな。眠れなかったのか?』


 気軽に微笑んだセスだったが、龍之介は、ペラペラと言われた英語が理解できないのである。


 それでちょっと困ったようにそこで立ち尽くしている龍之介を見て、セスがまた気軽に微笑んだ。


『お早う。早いな』


 今度は、一語、一語をはっきりと離して喋ってくれて、それで、龍之介は慌てて挨拶を返す。


『あっ……お早うございます』


 ペコッと、お辞儀までして、その様子を見ているセスは、なんだか嬉しそうに笑んでいる。


『早いんだな』

『あっ……はい。俺は――朝の時間が、好きです』


 朝早いのが好きだ、と言いたいのだろう。


 セスは持っていたバケツを壁につるすようにして、ゆっくりと、龍之介の所に歩いてきた。


『馬は好きかな?』

『大好きですっ』


 その強調する素直な様子から見ても、龍之介は、本気で馬が好きだと言っているらしい。


『じゃあ、馬の毛並みを揃えたいかな?』

「グルーミング?」


 日本語の発音そのままで繰り返した龍之介に、セスの口元が笑いを堪えたように、微かに上がっている。


 だが、龍之介はその単語の意味が判らず、ポカンと、セスを見上げたままだ。


『ブラシをかけたり』


 セスが手を動かしながら、ブラシをかける様子をみせる。


『ああ――はい、大好きですっ』


 パッ――と、その瞳だけでなく、顔全体の表情までも嬉しそうに輝いて、龍之介が笑う。


 アイラの友達にしては、随分と表情が素直で、礼儀正しい子供だった。


『じゃあ、おいで』


 セスに誘われて、龍之介はスキップする状態で、満面の笑みを浮かべながら、セスの後についていく。


『馬の後ろから近寄らないように。驚いて、蹴り飛ばされるから』


 ゆっくりと、一語、一語をはっきりとくぎって、おまけに身振り、手振りで、龍之介に説明してくれるセスに、龍之介は真剣に頷いていた。


『こうやって撫でてごらん。馬達は、こうやって撫でられるのが、とても好きなんだ』

『はい』


 セスに言われるままに、龍之介もその手を伸ばし、そして、そぅっと、馬の首に手を置くようにした。


 スーッと、驚かさないように撫でていくと、馬が首を振ってくる。

 それが嬉しくて、龍之介の顔が破顔していた。


『ブラシを持って、こうやって毛を揃えてブラシをかけていくんだ。――はい』


 ブラシも手渡されて、龍之介はもう天にも昇る心地だった。

 セスのように見よう見真似で、ゆっくりと馬の首や鬣をブラシしていく。


『上手だな』


 褒められて、龍之介はにこっと笑みを返す。


『俺は、動物が大好きなんです』


 へえと、セスが龍之介の反対側に並んで行き、龍之介がブラシをかけている間、セスは馬の首を押さえてくれているようだった。


『君は、アイラの友達だろ?』

『フレンドです。そうです』


 以前に会った時もそうだったのだが、あのアイラと、この小柄な龍之介と、そして、なんだか掴み所のない廉の3人――というのが、どうも接点が見つからず、どうやって友達になったのだろうかと、セス、いや他の身内も、かなり不思議だったのだ。


『君は、何をしているんだい?』

『何をしている?』


 龍之介の瞳がくりくりとして、意味を理解していないその顔が、そのまま素直に出ている。


『学校に行ってるのか?』


 “スクール”と聞かれ、龍之介はそれで納得したように、大きく頷いた。



読んでいただきありがとうございました。

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Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)

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