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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part3-アメリカ編
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その9-01

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 アイラはそれを予測しているので、特別、驚いた様子もなく、指についたアイシングをゆっくりと舐め終えて、手前のジュースにも手を伸ばす。


『ケード、田舎嫌いのあんたが、なんでこんな所まで来たのかしらね。随分、大袈裟だこと』

『さあな。なんで、旅行中のお前が、ベガスでうろつきまわって、撃たれる羽目になるんだろうな』


『さあね。まあ、アンラッキーだったわね』

『おまけに、俺に捕まって』


『そうね。偶然とは言え、あのまま、あの赤毛の足長と、消えてれば良かったのに』

『足長? 赤毛の足長?』


 セスが不思議そうに聞き返す。


『赤毛の足長の女よ』


 ああそう、と納得するセスに、アイラはまだケードにその目を向けて、わざとらしく首を倒してみせるようにした。


『せっかくのデートだったのに、台無しよねぇ』

『まあ、次のを引っ掛ければいいだけだし。女には、不自由してないもので』


『大体、話にならないんだから、こんなことしたって、無駄でしょう?』

『そうかな? 俺も本気を出して、アイラ、お前とやり合ってもいいんだけどな』


『へえぇ。誘導訊問? ――じゃあ、やってみせてよ。お手並み拝見と行こうかしら』


 あからさまに挑戦されて、ケードに不敵な笑みが浮かんでいく。


『あの僕ちゃんと旅行か?』

『そうね』


『それは優雅なことで。いつ来たんだ』

『ちょっと前かしら』


『ふうん。それで、ベガスに直行か? 嘘ついてもお前のパスポートくらい、すぐにチェックできるしな』

『そうね。ベガスに行ったのも、ちょっと前よ』


『どれくらいだ?』

『さあ。昨日だったかしらねぇ。それとも、二日前だったかしらねぇ』


『へえ、金曜からチャックインしてるっていう記録があるけど、違うやつなんだ。へえ』


 アイラは、ただ薄っすらと、口元を上げているだけである。


『俺と会ったのは、土曜の夜だったな』

『そうね』


『あの僕ちゃんは、見かけなかったようだが?』

『そう? 一緒にいたわよ』


『ついでに、こっちの友人も、いなかったような』

『そう? 一緒にいたわよ』


『へえ。でも、お前は、男を引っ掛けるのに夢中だったようだがな』

『そうねぇ』


『あんなオヤジをねぇ』

『そうね。趣向変え――ってトコかしら』


『へえ、それは知らなかった。あのオヤジと消えて、その後はお楽しみか? 若い女だったら、まあ、さぞ、あのオヤジも満喫したことだろうに』

『ピチピチだから』


『まあ、お前のその体だったら、あのオヤジも昇天したことだろうぜ。お前は、しつこそうだからな。あのオヤジが死ぬまで、しゃぶりついてたとか、な』


『下品ね。そういうトコ、恥ずかしげもなく断言できるって、さすがよねぇ』

『それは、どうも。何回やったんだ?』


『さあ。知らないことなんだから、勝手に想像してれば? でも、赤毛とやりそこなったの? そりゃあ、若い私のSexライフも気になるでしょうね。それとも、仕事し過ぎで、欲求不満? ちゃんと()つの?』


 ケードに負けずに、淡々と、薄笑いを浮かべながら攻撃をしかけくるアイラは、全く恥ずかしさの欠片も見せない。


 あからさまに不能扱いされて、セスとジョーダンの視線が、ちろりと、ケードの方に向けられていた。

ケードは腕を組んで、後ろの棚に寄りかかりながら、口元だけが薄く笑っていた。


 だが、その瞳がアイラを捕らえたまま、アイラを外さない。


『ケード、私のこと知らないんだから、口出すのやめなさいよ』


 あっさりと、気負いもなく言われた言葉だったが、その意味が、はっきりきっぱりと、ケードに向かって、口出すな、と警告していた。


 アイラの薄笑いした口元だけが上がり、その瞳が、恍惚としたように強く輝き出していく。


『ケード、脅そうにも揃ってる駒がないうちは、ただのハッタリしかならないのよ。それで、私とやり合おうなんてね。情報交換して欲しいなら、それだけのものを見せなさいよ。――それとも、私の弱味を見つけてから、もう一度やり直すのね』


『そうかな? あのホテルの裏口で発砲事件が起きたらしいが、その時の目撃者の証言じゃ、金髪の赤いドレスを着た女が現場にいたらしいし。警察も、その女を、まず、第一の容疑者として探し回っているようだが?』


『へえ、そう。発砲事件って、危ないわよねぇ。さすが、アメリカ』

『現場に落ちていた血痕を比べれば、すぐに、誰だか判明するだろうに』


『そうね。DNA鑑定も簡単だし、今の時代は』

『そうそう。だから、サンプルを送りつけたら、話は聞きたいだろうなぁ。ベガス警察とて』


 そう言いながら、スッと、ケードが何かの袋を掲げて見せるようにした。


 ジッパー式のビニール袋で、その中に、血がついた綿花が何個か入っていた。


 それを見ていたアイラが、おもしろそうに首を倒してみせる。


『ああ、証拠ね、証拠』

『そう。証拠な、証拠。それから――お前のために、一言、忠告しておいてやるが、発見された弾痕の検査結果から、どうやら、その銃弾は、以前にも使用された銃のものだ、というのが断定したらしい』


『へえ、事件ねぇ』

『そう、事件だな。それも、一人は海の下で魚の餌になって。一人はアパートで燃え尽きてたらしいし。なんだろうなぁ。俺には、素人の手口には思えないんだが、俺の気のせいか?』


 その口調から、玄人の仕業だと言い切っているのが明らかだった。


 だが、その残虐な仕打ちからしてみても、ギャングが関わってるのは間違いない――とも、示唆しているかのようだった。


『さあ。私は、犯罪に詳しい弁護士さんじゃないしぃ。怖いのねぇ』

『本当に。それで――お前の友達を巻き添えにするのか、アイラ? そいつは、随分、冷たいんだなぁ』


『そうかなぁ? 観光が終われば、そのまま帰るだけだしね』

『あのまま残ってたら、遅かれ早かれ、見つけられただろうしなぁ』


『うーん、そうよね。世間は広いって言うけど、結構、狭いし』

『そうだな。何を見つければいいのか判れば、探し出すことも難しいものじゃないしな。――俺も見つけたし』


『そうよね。でもまあ、ベガスのホテルを調べれば、すぐに分かることだし』

『そうだな。偽名を使用してなかったのが、落ち度だったよな。バレバレだ』


『そうね。でも、私の名前だけだし』


 薄っすらと笑っているケードの表情も崩れない。


『カードの詳細も――ないわよねぇ。残念ね。勘でベガスを張らせたんでしょうけど、それも、まあ、まぐれ当たり――かしら? 良かったわねぇ、見失う前に、見つけれたみたいで』


『そうか、まあ、仕方がない。ベガス警察に突き出したくはないが、あっちも、調べたいことは山ほどあるだろうから。連続殺人事件――扱いなんで、な』


『うわぁ、それは大変。どうしましょう』


 全く怖れていないその様子に、ケードは薄く笑って、

『取り引きするなら、今のうちだと思うが? 馬に乗って喜んでる少年を、残念がらすのも悪いだろう? 取調室で拘束されることを考えたら――なあ?』



読んでいただきありがとうございました。

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