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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part3-アメリカ編
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その8-02

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 それから、すぐに家の所に、カウボーイの格好をした中年の男性が姿を出して、セスの説明を受けて、龍之介の案内をしてくれることになった。


 小柄な龍之介に、手取り足取り教えてくれながら、馬の乗り方や構え方を説明して(残念なことながら、英語なのだが)、龍之介も、真剣にその動作を真似しながら、なんとか無事に馬に乗ることができたのだった。


 その人懐っこそうなカウボーイに連れられて、龍之介は、生まれて初めて乗馬に挑戦したのである。


 龍之介がいなくなった居間で、廉はセスとケードの二人に囲まれて、訊問されるだろうな――との予測どおり、ただでは廉を帰す様子はないのだった。


『さっき、あの僕は、何て言ったんだ?』

『アイラが食中毒で』


『食中毒? アイラが? 冗談なのか?』

『冗談じゃないですよ。それで、ここ2~3日、体調を崩していて』


 まさか、食中毒がでてくるとは考えにも入れていなかったせいか、真実味に欠けるのか、信用に欠けるのか、いまいち、その話を信用できないケードだった。


『食中毒? 何を食べてだ?』

『シーフードに当たったようで』


『どこでだ?』

『レストランです』


 その淡々とした返答に、ケードが目を細めていく。


『もう片ッぽの連れは、随分、素直そうだったがな』

『そうですね』


『それで、こっちの方は?』

『なんでしょう』


 全く廉を丸め込めないでいるケードは、無駄な時間を費やすつもりもなく、うんざり――と言った様子で溜め息をつき、セスを振り返った。


『医者はいないのか?』

『呼びたいの?』


『口うるさくない奴』

『へえぇ。まあ、知り合いだから、そこら辺は、頼めば大丈夫だろうけど』


『それから、アイラをここにつれて来い』


 その言いつけに、セスが冷たく首を倒してみせた。


 ケードは、さっさと開けていた自分のビールに口につけて飲み干しながら、

『俺の鼻が、どうも、むずがってるんだな。そういう時は、必ず俺の勘も間違ってない。だから、アイラから目を離さない方がいいだろう。――そうだろ?』


『さあ』


 ケードに振られても、廉の態度は、淡々と、その返答も変わらないものだった。


 その廉を無視して、ケードはビールの缶を振りながら、ほれほれと、弟を追い出すようにする。


 シーンと、冷たい顔を向けて、セスはケードを見返していたが、仕方なく椅子から立ち上がっていた。



* * *



 ピリピリ――と、何かを剥すような音がする。


 ついでに、自分の肌も引っ張られるような感じがして、アイラは、咄嗟に、叫んでいた。


『いたっ――!』


 パッ――と、目を開けたアイラの前で、知らない男がアイラの腰に触れているようで、アイラは、パチンっ――と、その男の手を払いのけた。


『いてっ――!』


 思いっきり払われて――蹴散らされたような感じにも見受けはしないではないが――男が痛そうにその手をさする。


『アイラ、動くな』


 ガバッと、起き上がったアイラの前で――その視界に入ってきた見慣れた姿を見て、アイラは天井を仰いでいたのだった。


『――なんで、アリゾナまでやって来なくちゃいけないのよ。ここに来るまで、一体、何時間かかると思ってるの? 信じられない、なんなのよっ』


『文句は後回しにして、さっさと手当てを済ませるんだな』


 壁に並んでいる棚に、少し寄りかかるようにして立っているケードが、端的に言いつける。


 アイラは半分起き上がった状態で、サッと、部屋を見渡して、すでにその状況を、全部、把握していた。


 セスの家に連れて来られたアイラは、なぜか知らないが、居間の長椅子に寝ていたようで、その横で、丸椅子に腰を下ろしている若い男が。まだアイラを黙って眺めている。


 アイラは自分の腰に当てられていた包帯を見下ろして、また、その顔を上げる。


『さっさと手当てを済ませろ』

『大した傷じゃないわ』


『それは、手当てをし終わったら、聞いてやる』


『ということなので、ちょっと大人しくしていてね。俺の専門は。牛とか馬とかが多いんだけど、こんな美人を治療するのは、すごく久しぶりだ』


『私は珍獣だとでも、言いたいわけ』


 冷たい口調のアイラに、男は気にした様子もなく、にこっと。笑顔をみせる。

 その片方の頬に。えくぼが出ていた。


『出て行ってよ』

『ああ?』


『女の着替えを見たいわけ? 手当てが終わったら。戻ってくればいいでしょう。ひとの裸、見ないでよ』


 冷たく言いつけられて、ケードが腕を組みながら、その目をアイラ同様に冷たく輝かせていく。


『お姫様は、相変わらず、注文が多いようだな』

『だったら何だって言うのよ。こんな彼方まで連れ込んでくるとは、やってくれるじゃない、ケード』


『そうか? 旅行――なんだろ? 良かったじゃないか』

『ふざけないでよ。――まあ、ケードの文句は後回しにしても、さっさと出て行ってよ。ジロジロ見ないでよ』


 あまりに冷たい、命令口調のアイラに、ケードの顔つきも変わってきて、険悪な雰囲気になりそうなその場で、セスが溜め息をついていた。


 それで、仕方なく、ケードの腕を引いて、その場を去っていくようにする。


『触るなよ』

『ケンカは後ですれよ。手当てが終わったら、入ってきてもいいらしいから。ここは俺の家なのに―――』


 ぶつぶつと文句を言って、セスがケードの腕を引いて、すぐ近くのドアから外に出て行った。


 その二人の背を見送っていた男が、またアイラに向いて、にこっと、笑う。


『じゃあ、始めようか』

『あなた、誰?』


『俺はセスの友人。ジョーダン・マクィーン。よろしく』

『それで、牛と馬の医者?』


『獣医だよ。でも、傷の手当ては、どれも同じだと思うし』

『ああ、そう』


『そうそう。だから、そのシャツを、ちょっとまくってもらおうかな』


 アイラは諦めたように、着ているTシャツをめくりながら、きちんと起き上がっていった。


『寝ててもいいんだよ』

『いいのよ』



読んでいただきありがとうございました。

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大人になってもはちゃめちゃ恋愛物語『やっぱりやらねば(続)』は大人の恋愛編です。
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