表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part3-アメリカ編
191/215

その8-01

ブックマーク・評価★・感想・レビューなどなど応援いただければ励みになります! どうぞよろしくお願いいたします。

 自分の家に向かって、軽快に、大きな4WDが走り込んでくる。


 午後の買い物を済ませてきたセスは、ユートの背から、買い物した荷物を取り出しながら、トンっと、身軽に地面に下りていた。


 砂利道をガタガタと走ってくるその車は、勢いも止めず、セスのユートの横に車を寄せてきた。


 そして、車を止めると、ドアからすぐに一人の男が姿を現した。


『これは、これは。大都会から、わざわざ、こんな田舎までやって来るなんて、本当に珍しい。こんな田舎で暮らすと、脳ミソが腐るんじゃなかったのか?』


 揶揄するような口調のセスに、車から下りてきた男――ケードは、セスを振り返り、かけていたサングラスを少し外すようにした。


『脳ミソが腐るだけじゃなくて、俺は、原始時代に戻った気分だ。お前のそのブーツについてるのは、牛のフンじゃないだろうな』

『ただの泥だよ』


『ああ、そうか。それを聞いて安心した』


 心底、安心したように胸を撫で下ろすケードに笑いながら、セスは腕を伸ばして、ケードを抱き締める。


『久しぶりじゃん。なんの気まぐれだよ』

『まあ、ちょっとな』


 ケードも久しぶりに会う弟の背中を抱いて、少し抱き締め返す。


 そのセスの前で、バタン――と、もう一度、車のドアが閉まる音がし、中から出てきた小柄な少年が、そこらを感心したように見渡し出していた。


「うわぁ……、すごい広いんだなぁ……。すごいぃぃ……!」


 見覚えのある顔に気がついて、セスがケードから腕を外してみた。

 そして、また車のドアが開き、そこから出てきた背の高い青年――も、見覚えのある顔だった。


 だが、最後に出てきた方は、また中に戻るようで、少し屈んで、中から何かを引っ張っている。


 それを不思議そうに眺めているセスの前で、その青年が、中からアイラを抱き上げて出てきたのだった。


『へえぇ……』


 セスが、スッと、横のケードにその鋭い視線を投げる。


『事情の説明は後だな。しばらく、お前んとこで世話になる』

『へえぇ。世話してやってもいいけど、いつまで?』


『さあな。まずは、アイラの口を割らせないことには、話にもならん』

『へえぇ』


 意味深な相槌を返して、セスは、もう一度、車の横に立っている青年と、その腕の中のアイラに目を向けた。


『なんで寝てるんだ?』

『起きるとうるさいから、無理矢理、寝むらせている』


『へえぇ。誘拐してきたんだ。それは、それは』


 セスは、スッと、動き出して、停まっている車の横に並ぶようにした。


『そのまま家に入っていけばいい。鍵はかかってない。手伝いにきてもらっている人がいるから、その人に、ゲストルームの南部屋を用意するようにと、言えばいい』


『それは、どうも』


 廉はアイラを抱き上げたまま、指示通り、家の中に向かって足を進めていく。


「龍ちゃん、中に入るけど、どうする?」


「え? そうなのか? だったら、俺も行く。――すごいな。サッと、見渡しただけでも、向こうが見えないんだぜ。ここら辺一体が、この人の土地なのかなぁ」


「さあ。でも、後で聞いてみればいい」

「そうだな」


 龍之介は、嬉しそうに、スキップ並みの駆け足で廉の後ろに駆け寄って行き、廉が中に入って行くのと同じように、龍之介も家の中に進んで行った。


『荷物は?』

『車の中。トランクに、スーツケース』


 ふうんと、セスは運転席側からトランクを開け、それで、テキパキと、中に入っているスーツケースを二つ取り出した。


『あれ、アイラの友達じゃん。クリスマスに来てた』

『そう』


『それで、わざわざ、こんな田舎までやって来るんだ』

『そう』


『へえぇ。それは、大層な訳ありのようで』

『さあな』


『おまけに、ケードまでついてくるし』

『なんで、俺がついてくると、問題なんだ?』


『なんで? 仕事の鬼が仕事もしないで、こんな田舎までやって来るんだから、それはそれは、大事(おおごと)だろうぜ』


『別に、田舎って連呼して強調しなくても、いいんだぜ。言われなくても、田舎にいることくらい判ってる』


『ケードが言うほど、田舎じゃないぜ』

『牛やら馬が固まってる所は、俺には田舎だ』


 変な理由でそれを断言するケードは、車の中にある荷物も取り出して、セスの後をついて家の中に入っていった。



* * *



 アイラがゲストルームに通されて休んでいる間、龍之介と廉は、荷物だけ部屋に運ばれて、セスの家の大きな居間に通されていた。


 ロッジ風の作りのその家は、正面から見た限りでも、かなり大きな家だった。

 廊下を抜けると、たくさんのドアが並んでいるところを見ても、かなりの部屋数があるのだろう。


 突然、やってきた龍之介達の前で、特別、困った様子もなく、その一人一人、全員にゲストルームがあてがわれたのだ。


 龍之介達を迎えてくれた、少し年のいった女性は、キャサリンさんと言うらしい。


 セスの兄であるケードも来ていると判り、キャサリンは、にこにこと、嬉しそうに、早速、夕食の準備に取りかかるそうだった。


 久しぶりのゲストが来たので、キャサリンは、大張り切りでご馳走を作ってくれるそうだ。


 ジュースをもらって一息ついていた龍之介達の前で、ケードの弟のセスが、龍之介に牧場の散歩に出ていいとのお許しが出たので、大喜びの龍之介に、更に喜ぶニュースをセスが出してきた。


『馬で移動するけど、馬に乗れるのかい?』

「馬ですか? ――乗ったことはありません。歩いていこうと考えてて……」


 その通訳を聞いて、セスがなんだか笑いをこらえたような顔をしている。


『歩きだと、1日かけても終わらないぜ』

「え? そんなに大きいんですか? ――それは、すごいなぁ。そんな大きな牧場に来たのは初めてだ」

『だったら、手伝いの一人に案内させよう』


「え? ――それは、いいですよ。仕事中だったら、大変だろうし。俺は、そこら辺でも散歩しますから」

『別に。休憩する理由ができて、丁度いいだろうさ』


 それで、セスが壁にかかっている電話の所に行って、受話器を取り上げ、ペラペラと、何かの指示を出していた。


 その電話が終わり、セスが龍之介の方を向いて、

『初心者用の馬を用意させた。デリアは気の優しい馬だから、問題はないだろう』

「え? そうですか? ありがとうございます」


 嬉しそうに、素直に、ペコッと、お辞儀をする龍之介は、そのままの笑顔を廉に向けた。


「俺、馬に乗れるんだって」

「それは、良かった」


「ああ、最高かも。アイラも具合悪くなかったら、馬に乗れるのにな」

「そうだね」


「やっぱさ、レストランで安全だと思ってたけど、どこでも食中毒ってあるんだな。アメリカに来て、初の食中毒かも」

「そうか」


 変なことに感心している龍之介に、廉は笑いを噛み締めるような顔をして、それ以上は深く追求しないのだった。



読んでいただきありがとうございました。

一番下に、『小説家になろう勝手にランキング』のランキングタグをいれてみました。クリックしていただけたら、嬉しいです。


Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランキングタグ、クリックしていただけたら嬉しいです (♥︎︎ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾
小説家になろう 勝手にランキング

大人になってもはちゃめちゃ恋愛物語『やっぱりやらねば(続)』は大人の恋愛編です。
やっぱりやらねば(続)(18歳以上)

別作品で、“王道”外れた異世界転生物語も、どうぞよろしくお願いいたします。
奮闘記などと呼ばない(18歳以上)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ