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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part3-アメリカ編
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その7-04

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 淡々とそれを言う廉に、ケードが皮肉げに口を曲げていく。


『俺をただの弁護士だと思って、甘く見ない方がいいぞ。俺も、アイラの友人さんとやらに、手を上げたくはないんでね。まあ、強硬手段が必要なら、俺もそれをするまでだが』

『そうですか。それなら、仕方ありませんね――』


 シュッ――と、廉が素早くその腕を振り上げ、ケードが反射的に身構えた。


『ごめん、アイラ』

『――あっ――!』


 ケードに殴りつけてくるだろうと判断していたケードの前で、廉が、後ろのアイラの首根を殴りつけ、アイラがそのまま崩れ落ちた。


 サッと、廉が腕を伸ばして落ちていくアイラを抱き留める。


『お前っ――!』

『アイラも疲れが出てるので、今日は、休ませないといけないもので』


 それを言いながら、スッと、アイラを抱き上げた廉を見やりながら、ケードは、一瞬だけ、唖然としたような表情をみせていた。


『アイラの身内の人でしょうが、アイラに手を貸すんですか? それとも、このまま、カイリに送りつけるんですか?』


 ケードは口を曲げたまま、少し考えるようにして、

『――アイラを抱えたまま、俺を殴り飛ばせるのか?』

『他の方法もありますから』


『お前ら、一体、何をしてる? あの血痕は、アイラのだろうが』


『そうですね。だから、アイラは絶対に賛成しないでしょうが、俺は、ここは引くべきだと考えています。状況は――少々、予想を外れてしまったので。ここに――長くいるのも、あまり好ましい状況ではないんじゃないかと』


 ケードは難しい顔をみせ、腕を組んでいた。


『――待ち合わせの友人とやらは、どこなんだ?』

『ツアーバスに乗せています』


『それは?』

『2時過ぎにバス停に戻ってくるので、迎えに行かないといけないもので』


 ケードは、スッと、自分の腕時計に目をやり、

『1時半か。だったら、アイラは俺が預かる。お前は、その友人とやらを迎えに行けばいい』


『残念ながら、それはできません。俺は、あなたを信用していないので』


 躊躇いもなく、それを淡々と言ってのける廉に、ケードは嫌そうな笑みを口に浮かべていた。


『だったら、アイラを抱えたまま、その友人とやらを迎えに行くのか?』

『俺の両手は塞がっているので、時間に拘束されない、ボスの人が迎えに行ってくれたら、丁度いいんですけどね』


 いけしゃあしゃあと、ケードにそんな雑用をさせるようである。


『俺は、その友人とやらを知らないんでね』


『知っていますよ。去年も会ったでしょう? もう一人の日本人です。バス停は、メインのキオスク前にあります。――では、よろしくお願いしますね』


 それだけを言いつけて、廉はアイラを抱えたまま、スッと、動き出していた。


『俺は、お前達の泊まってる場所を知らないが?』

『もう一人の友人が知っています。そこで、待っていますので。――では、失礼します』


 ケードに口を挟む機会も与えず、廉がさっさと一人でその場から去って行ってしまうので、そこに残されたケードは、かなり口を歪めながら、ふう、と嫌そうに溜め息をこぼしていた。



* * *



『よう、リュウチャン』


 半日観光のバスから降りてくると、龍之介に気軽に声を駆けて来た人がいた。


 顔を上げてその人を確認してみると、黒い背広を着こみ、膝丈ほどの長いロングコートを簡単に羽織っている男性がその場にいた。


 じーっと、その顔を見返しながら、見かけたことがあるような顔つきに、龍之介も考えてもしまう。


『俺はケード』

「あっ、ケードさん?! ――あっ……、お久しぶりです」


 ロスに住んでいるという、アイラの従兄ではないか。


 “柴岬一族家系図”のメモを読み返しながら、龍之介も確認していた名前だ。


 条件反射で、龍之介がペコっとケードに向かってお辞儀をした。


 さすが、日本人。どこでも、礼儀正しくて、ケードも少し笑ってしまう。


『久しぶりだな。元気だったか?』


 龍之介の為に、ケードはかなりゆっくりとした英語で話してくれているようだった。


『あっ……えーと……。はい……、俺は、元気です』


 中学の時にならった、



「I’m fine. Thank you」



 この常套句(じょうとうく)は、やはり、どこでも使えるものだ。



「こんな所で会うのは偶然ですね」

「お久しぶりです。元気でしたか?」

「なぜ、こんな所で? ケードさんも、ラスベガスで――観光? いえ、カジノですか?」 



 なんて、質問したいことは、すぐに、たくさん、頭に浮かんでくる。

 そのどれも全て、龍之介は英語で会話する術がない。センテンスも分らない。


 それで、うーんと、真剣になって悩んでしまった龍之介を見下ろしながら、一体、何に悩み始めたのか、さっぱり分からないケードだ。


『リュウチャン、観光はどうだった?』


 「Tour」の単語は理解ができた。


「あっ……、面白かったです」


 いえいえ……。それで、すぐに、大きく手を振って、否定する龍之介だ。


「Great……です」


 説明が簡単にできない自分が悲しいなぁ……。


『アイラとレンに会った』


 一語、一語を区切って、ゆっくりと喋ってくれたケードのおかげで、今の意味は簡単に分かった龍之介だ。


「会ったんですか?」

『そう』


『えーと……どうして、ケードさんは、ここに……?』


 英語で話しても、ちゃんと、礼儀正しく“さん”付けされて、ケードが可笑しそうに笑う。


『リュウチャンを迎えに来た。ホテルに帰るんだろう?』

『あっ……、そうです。はい、ホテルに……』


 ここで、なぜ、ケードがこの場にいて、アイラと廉と会ったのに、なぜ、あの二人が龍之介の迎えに来ていないのか、未だに、きちんと、そこら辺の事情を理解していない龍之介だ。


 そして、その人を疑わない素直な目を向けて、顔を向けて、ケードを見上げている。


『ホテルはどこだ?』

『ホテル……? あっ、えーと……』


 それで、龍之介は迷子になってもいいようにと、ホテルのパンフレットをバッグにしまいこんである。

 ついでに、いつでも、住所を出せれるようにと、ホテルの名前と住所を、携帯電話のメモにも打ち込んでおいたのだ。


 迷子対策に。


 英語が話せなくても、ホテルの住所を見せれば、警察官に拾われたって、簡単に助けてくれたことだろう。


 ゴソゴソとジーンズを(あさ)り、龍之介が携帯に残しておいたメモをケードに見せるようにした。


 ケードが顔を近づけて、携帯電話のメモを読んでみる。

 それで、自分の携帯電話で場所を確認しているようだった。



読んでいただきありがとうございました。

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Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)

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大人になってもはちゃめちゃ恋愛物語『やっぱりやらねば(続)』は大人の恋愛編です。
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