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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part3-アメリカ編
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その7-03

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 龍之介がシャワーに入る為にバスルームに向かうと、廉が目線だけで、アイラの傷を見せるように合図した。


 アイラは、少々、膨れっ面を見せるが、すぐにでも龍之介はシャワーを終えて、バスルームから出てきてしまう可能性がある。

 それで、着ている洋服をまくりあげた。


 包帯を、全部、取り除く時間はないので、手を入れれる隙間だけ緩め、傷口に貼った傷用のシートを確認してみる。

 出血はしていなかったようだが、それでも、昨日の出血した分と、今日、動いた分で、傷口が動いているのだろう。


 廉も、思わしくないと、顔を曇らせ、

『アイラ、傷口をきちんと手当てしないとダメだ』

『――龍ちゃんが寝てからじゃない?』


 ふうと、廉が溜息をついて、手早く、包帯を締め直した。


『これ以上、無理はしない方がいい』

『無理はしないわ』


『でも、まだ、ベガスに残るんだろう?』

『明日、様子をみてみるわ』


『なんの様子?』

『あの男を追ってきたのは一人だけじゃなかったわ。かなりの数よ。それも、大声を張り上げて、ね』


『だから、目撃者がいないか調べるってわけ?』

『調べないわ』


『どういう意味だ?』

『別に、私は、あのギャングを追いかける必要なんてないもの。目的は、あくまでも、逃亡した脱税者のあの中年男だけよ』


『だが、アイラが追われている可能性はある。逃亡者の共犯者とみなされて』


 その可能性は大だ。


 おまけに、拳銃を所持していた男が発砲事件を起こし、殺人未遂とまでなってしまったのだから、あの場にいたアイラは、目撃者と重要参考人、となる立場にまでなってしまっている。


『たぶん、可能性で言ったら――あの中年男、ギャングからお金を借りたのか、盗んだのか、どちらかでしょうね』

『それが、昨日の事件?』


『たぶんね』


 それなら、ギャング絡みで、脱税とは全く関係のない事件にまで巻き込まれてしまった可能性が大だ。

 殺し屋まで混ざった、とても危険な事件に。


『危ないだろ?』

『だから、しっかり護衛しないさいよね』


 そんなことを言われたって、廉だって――ギャング絡みの事件で、アイラの身を護り切れるかなど、約束できない。


 はあぁ……と、ものすごい疲れ切ったような溜息だけがこぼれていた。


 なんだか、今回は、廉の溜息ばかりが上がってきてしまうのは、気のせいではないだろう。





 翌日になり、龍之介はラスベガスの観光の為、半日ツアーのバスに乗り込んで行く。


 アイラと廉は、目立たない格好をして、あのカジノのあるホテルに戻っていた。

 そして、やはり、アイラの予想した通り、逃亡した中年男が使用していた車は、跡形もないほどに、あの駐車場から消え去っていた。


 無理矢理、車を動かした痕もなければ、車のウィンドウガラスが壊されたような形跡もない。


 まあ、誰か一人の車を盗むことなら、ギャングでもお手の物だろう。


 事件現場には、きっと、警察が入り込んでいるので、アイラは事件現場には近寄らず、ラスベガスでもアジア系のお店が固まった区域で、その裏道側を通り抜けていた。


 アジア用のスーパーなどで、昨日の発砲事件のことを、ちらっと、持ち出してみたら、ニュースを知っている人間がいたり、いなかったり、その反応はそれほど期待したほどでもない。


『アイラ――』


 グイッ――と、突然、予想もしていない所で、アイラの腕が強く引っ張られ、無理矢理、横を向かされ反動で、アイラは傷の痛さに顔をしかめた。


『いっ――』


 バッと、咄嗟に振り返った先にいたのは――


『ケード!』

『お前、その怪我、どこでしたんだ?』


『こんな所でも会うなんてね。仕事してないわけ?』

『話を逸らすなよ、アイラ。その傷は、どこでやったんだ?』


 バリバリのスーツを着込んで、アイラを捉まえているケードは、怖い顔をして、また、グッと、アイラの腕を引っ張った。


『いっ――』


 痛さに顔をしかめたアイラは、キッと、強くケードを睨み返した。――その瞬間、パチンっ――と、ケードの腕が鋭く払いのけられ、アイラの前に、スッと、影が飛び込んできた。


 ケードは少し顔をしかめて、払われた手首を振ってみせ、アイラの前に割って入ってきた廉を、軽く睨み付けるようにした。


『ほう、アイラだけの企みじゃないようだな』

『乱暴しないでもらいたいですね』


 ケードは目の前の廉を見やりながら、スッと、その視線を、廉の後ろにかばわれているアイラに投げるようにした。


『お前達が何を企んでるのかは知らないが、熱があるのは、ただの風邪じゃないんだろう?』


 それで、廉が少しだけアイラの方を振り返って、その手を上げて、アイラの額を確かめるようにした。


『少し――疲れも出始めてるかもしれないな』

『仕方ないわよ』


『そうだね。でも、今日は、これくらいにした方がいい』


 アイラの顔は、全くの賛成を見せない。


 だが、アイラの前で廉の視線だけが動いて、後ろにいるケードに向けられ、すぐにアイラの顔に戻ってくる。


 アイラは苦虫を潰したような表情をみせ、仕方なさそうに、ちょっと溜め息をついていた。


『ケード、よく、私を見つけられたのね』

『ベガスにも、知り合いはいるんでね』


『へえ。暇潰しに私を尾けるなんて、なんなのよ。暇人よねぇ』


 アイラの皮肉をものともせず、ケードはまだ冷めた顔をして、アイラを見ている。


『お前達、一体、何を企んでるんだ? アメリカに遊びに来てる割には、こんな裏通りばかりを旅行しているようだし。それに――、あのホテルの裏で乱射事件が起きたらしいが――なんでも、その時に、現場の近くにいた赤いドレスの女――という情報も入ってきてるが、なんだか心当たりがなくもないよな』


『へええ。乱射事件なの。危ないわねぇ』

『お前も――確か、赤いドレスを着ていたような』


『そうね。いいでしょ、あれ。かなり気に入ってるのよね』

『血痕から判断される血液型が、O型だとか――とかも聞いてるがな。アイラ、お前の血液型は、何だったかな?』


『なあに、私と相性占いでもするつもりなの? ケードなら、そこら辺で、誰でも引っ掛けられるじゃない』


『さあな。お前、いつまで、しらばっくれるつもりなんだ? 俺は、別に、カイリに連絡してやってもいいんだぞ。なんだか、大事なイモウトさまが怪我してる――ってな。ついでに、アメリカにも来ているみたいだ、とも』


『じゃあ、連絡すれば? カイリも吹っ飛んでくるには、仕事もあるしねぇ。――そう言えば、ケードは、なんでここにいるのかしらねぇ。週末で、カジノに遊びに来た割には――仕事してないわよね』


『別に、アイラに、俺の仕事の心配をされる必要はないんでね。時間に束縛はされてないんでね。そこが、ボスの得点だよな』


『ああ、そうよね。だから、未だに、ベガスで遊んでるんだもんね』


 互いにその場を引くことを見せず、アイラに負けずに、ケードもかなりのやり手のようで、普段なら、アイラに丸め込まれて、話はそこで終わりそうなものも、ケードとでは、いつまでたっても平行線のままだった。


『この人の仕事、なに?』


 突然、訳の判らない質問を出してきた廉に、ケードは片眉を上げて、なんだこいつ――と、言った表情をみせた。


『弁護士よ。たくさんい過ぎのうちの一人よ』

『なるほど。でも、家庭裁判の方じゃないだろ?』


『犯罪、よ』

『なるほど』


 そこで一人納得している廉は、仕方なさそうにケードに向き直って、

『いつから、アイラを見張ってるんですか?』

『さあな』


『尾けてる人は、どこです?』

『さあ』


『お互いに話したくないこともあるようですが、説明する気がないなら、俺達は、ここで失礼します。他の友人と待ち合わせもしてますし』


『ほう。このままうやむやにしていくのか? 俺は、別に、それでもいいけどな』


『カイリに告げ口されるのは、少々、問題がありましてね。ですが――こっちにも事情がありまして。アイラの身内に手を上げるのは避けたいんですけど、事情が事情であれば、仕方がない』



読んでいただきありがとうございました。

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